「熊野街道」の版間の差分

'''熊野街道'''(（くまのかいどう)）は、[[京都|京]]・[[大阪|大坂]]から[[熊野三山]]（熊野本宮大社、熊野速玉大社、熊野那智大社）への参詣に利用された街道の総称。説教浄瑠璃の小栗判官にちなみ'''小栗街道'''ともいう。その一部は[[熊野古道]]と称され、「[[紀伊山地の霊場と参詣道]]」として[[ユネスコ]]の[[世界遺産]](（文化遺産)）に登録された。

街道は、[[摂津国|摂津]]大坂の[[渡辺津]]（窪津ともいう。[[大阪市]][[中央区 (大阪市)|中央区]][[天満橋]]付近）を起点に、[[堺市|堺]]、[[和歌山]]などを通り、紀州[[田辺市|田辺]]を経て、[[中辺路]]または[[大辺路]]によって熊野三山へと向かう道筋だった。京からは渡辺津までは[[淀川]]を舟で下った。

[[平安時代]]中期ごろから上皇、貴族の熊野信仰の高まりとともに熊野参詣が盛んとなり、法王、上皇の参詣（熊野御幸）が相次ぐようになった。その嚆矢は907年の宇多上皇とされ、鎌倉時代まで盛んに参詣が行われた。1081年には藤原為房（『為房卿記』）、1201年には後鳥羽上皇（藤原定家著『後鳥羽院熊野御幸記』）、1254年には藤原経俊（『経俊卿記』）が参詣したことが文献に記されているが、白河上皇、後鳥羽上皇などのように何度も参詣する者もあった。[[室町時代]]以降は、上皇や貴族に代わって武士や庶民の参詣が盛んになった。その様子は、[[アリ|蟻]]の行列する様に例えて「蟻の熊野詣」と言われるほどの賑わいだったという。江戸時代には伊勢詣と並び庶民が数多く詣でたという。熊野参詣にちなんだ小栗判官を題材とした説教本が出版されたり浄瑠璃として演じられたりしたのもこの頃であった。