「トドマツ」の版間の差分

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トドマツ枝枯病について加筆。
マツノネクチタケについて加筆。トドマツの森林蓄積の多さについて道庁の公開資料より紹介。
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<!--- 環境、および他の生物との関係など --->
=== 他の植物との関係 ===
本種は耐陰性が高い。明るすぎるところは好まないといい、陽光度50 -80%の場所が最適だという<ref name="林業百科事典">日本林業技術協会 (編). 1993. 新版 林業百科事典. [[丸善]]. 東京.</ref>。
 
北海道においてはエゾマツ、[[ミズナラ]]、[[シナノキ]]、ベニイタヤなどと混生するが、しばしば純林を形成する時もある<ref name="木の大百科"/>。
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[[子嚢菌門|子嚢菌]]の一種、''Gremmeniella abientina'' は'''トドマツ枝枯病''' と呼ばれる病気<ref name="林業技術ハンドブック"/>を引き起こす。春先の針葉の落葉に続き、枝が枯れる、それが数年続くと個体の枯死まで招くこの病気は本種の特に重大な病気の一つである。病名には「トドマツ」と付くが、本種や本種が属するモミ属 (''Abies'')に限らず病気を引き起こす多犯性の菌であり、欧米ではむしろ[[マツ属]] (''Pinus''), [[トウヒ属]] (''Picea'')の樹木の病気として知られている。病気の英名は[[:en:Scleroderris canker]]とされ、これは病原菌の[[シノニム]] ''Scleroderris lagerbergii'' に由来し学名変更後も広く用いられている。
 
病原菌の接種は樹皮剥ぎや深い切り傷への接種よりも、[[ドライアイス]]による凍傷に接種した方が発病率が高く症状の進展も急であったるという報告がある<ref name="横田1983">横田俊一. 1983. 北海道におけるスクレロデリス枝枯病, 特に病原菌とその病原性. 林業試験場研究報告. 第321号 89-116.</ref>。接種部位は冬芽よりも不定枝の時に高い発病率を示した<ref name="横田1983"/>。トドマツ罹病木からの病原菌の再分離は落枝からのみ検出され、落葉した針葉からは検出されなかったという<ref name="横田1983"/>。これに対し、同じくこの病気に感受性のある[[ストローブマツ]] (''Pinus strobus'') 罹病木では針葉からも再分離されたといい樹種によって異なっているようである<ref name="横田1983"/>。
 
生きている(立木)を腐朽を起こすさせてしまう菌がいくつか知られている。根株の心材腐朽を起こすものとして[[マツノネクチタケ]] (''Heterobasidion annosum'') などが知られている。この菌はトドマツに限らずマツ属 (''Pinus'')、トウヒ属 (''Picea'')、モミ属 (''Abies'') など様々な生きているの各種針葉樹を侵し、欧米ではかなり特に問題になっ視されている菌であるが、本種に対しおいはかも感染が問題にり強って腐朽能力を示すという報告があ<ref>徳田佐和子.2004. トドマツ人工林で発生したの根にマツノネクチタケを接種して4年後よる根株心伐倒し調査したところ、病. 北海道林業試験場</ref>朽は接種箇所より80cm程度上まで進行していたという<ref name="小野ら1959">小野馨, 横田俊一. 1959. マツノネクチタケのトドマツに対する接種試験.
日本林學會誌 41(12), 495-497</ref>。材の部分の色は腐朽前に暗灰色からに変色することから始まり、腐朽が進むと黄褐色から赤褐色に変わる<ref name="小野ら1959"/>。オレンジ色と表現されることもある<ref name="徳田2005"/>。最終的には白色へと変色していくという<ref name="小野ら1959"/>。
日本林學會誌 41(12), 495-497</ref>。他にも[[ナラタケ]] (''Armillaria mellea'') なども腐朽を引き起こす。
 
本数割合にして7割が腐朽していた十勝地方の68年生トドマツ林の調査例では、マツノネクチタケ被害木は林内に散在し、地形的な特徴(ex. 谷の近く)などは見られないという<ref name="徳田2005">徳田佐和子. 2005. トドマツ根株腐朽病の発生機構の解明と被害回避法の検討 平成9〜12年度実施 林野庁普及情報システム化事業「針葉樹根株腐朽病の発病機構の解明と被害回避法の開発」に関する調査とりまとめ. 森林防疫 54(10) 219-226</ref>。土壌についてはこの激害地は適潤性褐色森林土 (BD型) であり根が発達する深さには石は少なかったという<ref name="徳田2005"/>。 マツノネクチタケにはいくつかの系統があり、寄生する樹木の種類や生態でさらに細分化できる。この激害地の菌を分析したところトウヒ・モミ型 (Spruce - Fir group, SF型) だったという<ref name="徳田2005"/>。
 
日本林學會誌 41(12), 495-497</ref>。他にも[[ナラタケ]] (''Armillaria mellea'') なども腐朽を引き起こす。
 
トドマツは後述のように'''水食い'''と呼ばれる木材内部の水分過多状態となっていることが多く、これが冬の寒さで凍結し裂けてしまう凍裂を起こしやすい<ref name="林業百科事典"/>。これが腐朽菌侵入の門戸の一つとなる。
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== 人間との関係 ==
トドマツの木材は我々にとって有用な林業用樹種である材は[[パルプ]]や[[チップ]]の原料としての比較的低級な使い方だけではなく、[[木]]されて使われるこしての利用も多い。
 
平成22年度の北海道林業統計によれば北海道におけるトドマツの材の蓄積は約202百万㎥、全樹種の蓄積の27%程度にあたると見積もられており<ref>北海道水産林務部. 2012. 平成22年度 北海道林業統計.</ref>、北海道において最も蓄積の多い樹種である。
 
材はほぼ白色から淡黄白。本種の心材<ref group="注釈">材の中心部分にあり、死んだ細胞から構成されている</ref>と辺材<ref group="注釈">材の辺縁部にあり、生きた細胞から構成される</ref>の色には違いがほとんどなく、両者を見た目で区別することは難しい<ref name="木材工学事典">日本材料学会 木質材料専門委員会 (編). 1982. 木材工学事典. 工業出版. 東京.</ref>。このような心材を'''無色心材'''、'''淡色心材'''、もしくは'''熟材'''と呼び、モミ属やトウヒ属の木材では普通に見られる<ref name="木材工学事典"/>。