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Qrsk075 (会話 | 投稿記録)
en:Cursive 20:35, 10 June 2012‎ より
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[[ファイル:Letter.posted.in.1894.arp.jpg|thumb|250px|ラテン文字の筆記体で書かれた手紙。1894年の日付がある]]
'''筆記体'''(ひっきたい)とは[[書体]]のひとつである。
 
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== ラテン文字 ==
[[ファイル:Cursive.svg|right|thumb|250px|筆記体によるラテン文字の大文字と小文字の例]]
[[ラテン文字]]における筆記体 (Cursive style) は各単語内のすべての文字を連結させ、一本の複雑な筆線で記述する筆記の形式である。[[イギリス]]では専ら「joined-up writing」という用語が用いられており、また[[オーストラリア]]ではしばしば「running writing」という用語が使われている。筆記体は、手書き文字と活字の折衷である[[ブロック体]]や[[活字]]体とは異なるものであると見なされている。
 
=== 歴史 ===
[[ファイル:Us declaration independence.jpg|right|thumb|250px|[[アメリカ独立宣言]]。本文は筆記体による]]
[[ファイル:Spencerian example.jpg|right|thumb|250px|19世紀半ばからタイプライターが普及する1925年ごろまでアメリカで使われた筆記体・[[スペンセリアン]](Spencerian)。ビジネス文書の事実上の標準的な書体だった]]
[[17世紀]]前半の[[マサチューセッツ州]][[プリマス植民地]]の知事ウィリアム・ブラッドフォードの手書き文字ではほとんどの文字は分離されていたが、少数の文字は筆記体のように連結されていた。その1世紀半後にあたる[[18世紀]]後半には、この状況は逆転していた。[[トーマス・ジェファーソン]]による[[アメリカ独立宣言]]の草稿ではすべてではないにせよ、ほとんどの文字は連結されていた。後日職人により清書された独立宣言は、完全な筆記体で記述されていた。その87年後の[[19世紀]]半ばには、[[エイブラハム・リンカーン]]が今日とほとんどと変わらない筆記体で[[ゲティスバーグ演説]]の草稿を書き上げていた。
 
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[[1960年代]]以降、筆記体の教育は必要以上に難解であると考えられるようになった。単純に文字を傾斜させた[[イタリック体]]はより平易なものであり、伝統的な筆記体を不要にするものであるとの議論が巻き起こった。また、[[書体]]の種類が有用性を持つようになったことで手書きの文字が[[著作権]]を形成するようになった。これにより、20世紀後半にはD'NealianやZaner-Bloserなどの多様な新しい筆記体が現れた。選びうる限りの標準化されていない手書き文字が、異なる[[英語圏]]の国家の異なる学校制度の下で用いられるようになった。
 
[[コンピューター]]の出現により、通信を形式化する方法としての筆記体は省みられなくなった。かつて「フェア・ハンド」を必要としていたいかなる職種も、現在では[[ワードプロセッサ]]と[[プリンター]]を用いている。筆記体教育は学校においてますます重要視されなくなり、長い手書き文が必要なテストのような状況のためにのみ残されている。これらの手書き文では筆記体の方が早く書けると考えられてはいるものの、この利用もまた省みられなくなりつつある。2006年のアメリカにおける[[SAT (大学進学適性試験)]]では、小論文を筆記体で書いたのは受験者のうちの15%に過ぎなかった<ref name=washpost>"The Handwriting Is on the Wall", Washington Post, 11 October 2006. [http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2006/10/10/AR2006101001475_2.html]</ref>。アメリカのある研究では、1分間に文字を10個から12個しか書けない小学1年生に、9週間にわたって45分間の文字の筆記の授業を行ったところ、書く速度が2倍になったうえに、思っていることについてのより複雑な表現が可能になり、文章の構成能力も上昇したという<ref name=washpost/>。これは筆記体の授業を支持する人々にしばしば引用される研究だが、この研究で教えられた英語の筆記とは筆記体の事ではない
 
一方で[[数式]]を手書きする場合は、今でも筆記体を用いることが多い。特に[[L|l]]、[[x]]、[[o]]などは手書きのブロック体ではそれぞれ[[1]]、[[×]]、[[0]]と区別し難いので、一般に筆記体で書く。
 
=== 筆記法 ===
[[ファイル:Cursive.svg|right|thumb|250px|筆記体によるラテン文字の大文字と小文字の例]]
筆記体による[[小文字]]の大部分は印刷やタイプライターによる小文字、特にイタリック体の小文字に非常によく似ている。ただし、筆記体やブロック体では「'''a'''」の上の部分のフックや円を2つ縦に並べた「'''g'''」は基本として使用しない。正確な文字の形は筆記体の形式により異なっている。いくつかの筆記体では、「'''f'''」は交差する横棒の代わりに2つの円で書かれる。いくつかの筆記体、特にフランス式では「'''p'''」は「'''n'''」のように下の部分を離したままで書かれ場合によっては上の部分まで離し「'''p'''」が単純な線に見えるような形で書かれる。「'''r'''」はしばしば中世の「[[:en:R rotunda|半分の'''r''']]」に由来する字体で書かれる。また、「'''z'''」には尻尾が付けられる。これも中世の筆記法に由来する。他の小文字は概ね同じ字体のままで伝わっているが、18世紀のローマ字体の小文字「'''w'''」は今日使われている「'''n'''」に「'''v'''」を繋げたような形をしている。また当然ながら、「[[長いs|長い'''s''']]」は使われない。(但しドイツ式の筆記体では用いられる場合もある。)
 
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以上のように、1990年代初頭以降、中学校の外国語で筆記体が取り上げられることは急速に減って行ったため、同年代以降に中等教育を受けた人は、筆記体の読み書きをすることが少なくなっている。
 
なお、日本国外では筆記体離れがいっそう顕著であり、筆記体を読めないし書けないという若者が大部分である。これには、タイプライターや[[パソコン]]の普及も影響していると思われる。現代では手書きで文字を書くことは減ったため、筆記体に習熟する機会は減り、メールも機械上で「打つ」機会が多いため、筆記体が持つ速記の有用性も薄れている。
 
2008年のアメリカの調査では、小学校の教師のうち、筆記体の教え方について習ったことのある者はわずか12%だったという<ref>{{cite journal|last=Graham|first=Steve|coauthors=Harris, Karen R., Mason, Linda, Fink-Chorzempa, Barbara, Moran, Susan, Saddler, Bruce|title=How do primary grade teachers teach handwriting? A national survey|journal=Reading and Writing|year=2008|month=February|volume=21|issue=1–2|pages=49–69|doi=10.1007/s11145-007-9064-z|url=http://www.springerlink.com/content/x2w77424667r1206/|accessdate=July 31, 2011|publisher=Springer Netherlands|location=New York|issn=0922-4777}}</ref>。2011年には[[インディアナ州]]と[[ハワイ州]]で、学校での筆記体の授業は必ずしも行わないでよい、代わりにキーボードでの入力を教えるよう求める、という通達がなされた。2009年に全米共通学力基準(Common Core State Standards)が提案され、2011年7月時点では44の州で採択されているが、この基準においては筆記体の課程が含まれなかったため、採択した州すべてで筆記体の授業をすべきかどうかの議論が続いている<ref name ="TIME Newsfeed">{{cite web |url= http://newsfeed.time.com/2011/07/06/typing-beats-scribbling-indiana-schools-can-stop-teaching-cursive/?iid=nfmostpopular |title=Typing Beats Scribbling: Indiana Schools Can Stop Teaching Cursive |first=Kayla  |last=Webley |work=TIME Newsfeed |date=6 July 2011|accessdate=30 August 2011}}</ref><ref>[http://www.huffingtonpost.com/2011/08/01/hawaii-no-longer-requires_n_915402.html "Hawaii No Longer Requires Teaching Cursive In Schools"]. Huffpost Education. 1 August 2011.</ref>。
 
== ギャラリー ==
<gallery>
ファイル:Russian Cursive Cyrillic.svg|ロシアにおける、[[キリル文字]]の筆記体
ファイル:Hocgracili.jpg|[[古代ローマ]]におけるラテン文字の筆記体
ファイル:Greek manuscript cursive 6th century.png|545年に書かれたギリシャ文字の写本
ファイル:Greek Handwriting-aaa3.png|19世紀に西欧の筆記体に倣って作られた[[ギリシャ文字]]の筆記体
ファイル:Deutsche Kurrentschrift.svg|ギザギザしたドイツ筆記体(Kurrent)
ファイル:Sütterlin.svg|1915年から1970年代までドイツで教えられた筆記体の一種、[[ジュッターリン]](Sütterlin)
</gallery>
 
==脚注==