「方法論的個人主義」の版間の差分

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概念の歴史と経済学における議論を補足しました。
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'''方法論的個人主義''' (Methodological individualism) とは、社会構造やその変化を、個人の[[意思決定]]の集積として説明し理解する考え方をいう原子論的個人主義ともいわれる。[[方法論的集団主義]]あるいは[[方法論的全体主義]]に対立する<ref>森岡清美・塩原勉・本間康平編『新社会学辞典』有斐閣、1993、p.1341</ref>。

方法論的個人主義のもっとも極端な立場では「社会全体」は存在せず、ただ「その部品の合計」だけが存在すると考える(atomism)。これは[[還元主義]](reductionism)、つまり、より小さな存在に言及することによる、全ての大きな実在の説明の還元としても記述されてきた。
 
==歴史==
方法論的個人主義が自覚的に浮かび上がったのは、ドイツ/オーストリアにおける経済学の方法論争を通してだった。経済学におけるオーストリー学派の創始者となった[[:en:Carl Menger|カール・メンガー]]は、ドイツ歴史学派の方法を批判して、個人の行動を基礎に経済学を組み立てる方法の有効性を主張した。社会科学の方法として方法論的個人主義を明確に位置づけたのは、[[シュンペーター]]である。それにより政治思想としての[[個人主義]]と社会科学の方法論としての個人主義とを明確に区別された<ref>J. シュムペーター『理論経済学の本質と主要内容』〈上・下〉岩波文庫、1983(原著は1908)、第1部。</ref>。社会学へは、[[マックス・ウェーバー]]によって方法論的個人主義が導入されたとされるが、その方法論的個人主義はかなり特異なものであることには注意を要する。<ref>フランス語版[[:fr:Individualisme méthodologique|方法論的個人主義]]参照。また、犬飼裕一「方法論的個人主義の行方 1 : マックス・ウェーバーが敷いた路線の行き着くところ」『北海学園大学学園論集』第136号、2008をも見よ。</ref>。シュンペーターの考えは、[[ルートヴィヒ・フォン・ミーゼス]]、[[フリードリヒ・ハイエク]]、[[カール・ポパー]]などによって引き継がれたが、彼等は[[集産主義]](Collectivism)への強い反対者であったから、政治的個人主義との区分はかならずしも明確ではない。
 
==経済学における方法論的個人主義==
新古典派経済学は、基本的に方法論的個人主義に立っている。ミクロ経済学の典型であるArrow-Debreuの理論では、個人は自己の効用関数をもち、予算制約下に自己の効用を最大化すると仮定されている(消費者行動の理論)<ref>Kenneth J. Arrow and Gerard Debreu, 1954, Existence of an Equilibrium for a Competitive Economy, ''Econometrica'', '''22'''(3): 265-290. [[ジェラール・ドブリュー]]『価値の理論―経済均衡の公理的分析』丸山徹訳、東洋経済新報社, 1977年。</ref>。このような考えに対しては、(1)個人の効用関数は、社会(周囲の人たち)による影響と形成を受けている(方法論的全体主義)、(2)人間の選好や効用は不合理なものである、(3)最適化しようとしているが、合理性の限界に阻まれている、という3種類の批判がある。(1)はヴェブレン<ref>Leibenstein,H. 1950 Bandwagon, Snob, and Veblen effects in th theory of consumers' demand, ''Quarterly Journal of Economics'','''64''':183-207.</ref>、(3)は[[ハーバート・サイモン]]の限定合理性<ref>H.A.サイモン『学者人生のモデル』岩波書店、1998.</ref>などか起源ないし原型である。
 
合理的な個人を仮定する[[合理的選択理論]]も、この考え方に基づく理論である。ただ、[[フリードリヒ・ハイエク]]や [[カール・ポパー]]のような学者は集合主義への反対者ではあるが、だからと言ってこの考え方は、[[個人主義|政治的個人主義]]につながるものではない。
 
==文献==
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*[[公共選択論]]
*[[政治経済学]]
 
脚注
<references />
 
 
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