「河口域英語」の版間の差分

削除された内容 追加された内容
Insanity (会話 | 投稿記録)
fix link
編集の要約なし
1行目:
'''河口域英語'''(かこういきえいご、'''Estuary English''')は、[[1980年]]前後から[[イギリス]]・[[ロンドン]]とその周辺=[[テムズ川]]の(広義の)[[河口]]周辺で使われるようになった[[英語]]で、[[イギリス英語]]の一種。[[ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン]]の[[音声学]]教授[[John C. Wells]]は、河口域英語とは標準英語の南東イングランド方言であると定義している<ref name="jcwellswebqa">{{cite web|year=2000|author=John C. Wells|title=Questions and Answers about Estuary English|url=http://www.phon.ucl.ac.uk/home/estuary/ee-faqs-jcw.htm"|accessdate=2012-04-16}}</ref>この地域にはだいたい[[ロンドン]]、[[ケント]]、北[[サリー (イングランド)|サリー]]、南[[エセックス]]が含まれる。
 
[[イギリス]]では、上流[[階級]]の英語として[[容認発音]](Received Pronunciation, '''RP''')が[[19世紀]]から広く使われている。一方、ロンドンの[[労働者階級]]の間では[[コックニー]](Cockney)と呼ばれる言語が使われてきた。しかし、RP話者とコックニー話者のどちらにも違和感を覚える[[新中間層]]により、そのどちらとも違う新しい英語が作り出されてきた。それぞれ次のような特徴がある。
13行目:
河口域英語の発音には、以下のようなコックニーと共通の特徴がある。
 
* 母音を伸ばす ''r'' ( "ha'''r'''d") は発音しない。('''non-rhotic'''))。
* 長母音 {{IPA|ɑː}}の使用: ''bath'', ''grass'', ''laugh'' など。
* [[二重母音]]・[[長母音]]の発音が異なっている。具体的には{{ipaIPA|eɪ}}が{{IPA|aɪ}}に、{{ipaIPA|aɪ}}が{{IPA|ɒɪ}}に、{{ipaIPA|aʊ}}が{{IPA|æː}}になる。
** d'''ay''' {{IPA|d'''aɪ'''}}
** l'''i'''ke {{IPA|l'''ɒɪ'''k}}
** t'''ow'''n {{IPA|t'''æː'''n}}
* 音節末の[[無声歯茎破裂音|{{IPA|t}}]]や、[[母音]]に挟まれたり後ろに[[歯茎側面接近音|{{IPA|l}}]]が続く[[強勢]]のない{{IPA|t}}をはっきり発音せず、[[声門閉鎖音]]{{IPA|ʔ}}(息を止めたような音)になる('''T glotterization''')
** wa'''t'''er {{IPA|wɔː'''ʔ'''ə}}(ウォーッア)
** eigh'''t''' {{IPA|eɪ'''ʔ'''}}(エイッ)
* 単語末の狭母音や半母音と次の単語の母音との間にrが挿入される。('''intrusive r'''))。
** America is ... → America-'''r'''is ...
* 強勢のない{{IPA|l}}が円唇後舌母音・半母音化 ([o], [ʊ], [ɯ]) する。('''L-vocalization'''))。
** litt'''le''' {{IPA|lɪʔ'''ʊ'''}}
** ab'''le''' {{IPA|aɪb'''ʊ'''}}
* [dj]が[dʒ]に、[tj]が[tʃ]になる。('''Yod-coalescence''') )。
** 例えば、Tuesday choose day に、dune June に聞こえる。
* 「暗いl」(母音の続かないl)の前の {{IPA|ʌʊ}} {{IPA|ɒʊ}} に変化する。('''wholly-holy split'''、[[異音#条件異音]]も参照))。
** gaot {{IPA|gʌʊt}} / g'''oa'''l {{IPA|g'''ɒʊ'''l}}
* この変化は派生語にまで波及する。
** rolling {{IPA|ɹ'''ɒʊ'''lɪŋ}} < roll {{IPA|ɹ'''ɒʊ'''l}}
** holy {{IPA|hʌʊli}} / wholly {{IPA|h'''ɒʊ'''li}} < whole {{IPA|h'''ɒʊ'''l}}
 
コックニーには他にも th → {{IPA|f}}("fink" < "think")や、hの脱落("ee as an at" < "He has a hat")、音素/r/に[[歯茎接近音]]{{IPA|ɹ}}ではなく[[唇歯接近音]]{{IPA|ʋ}}({{IPA|w}}に近い)を当てるなどの特徴が見られるが、河口域英語には普通見られない。また、二重母音 /eɪ/, /aɪ/ については河口域英語でもRPと同じく day {{IPA|deɪ}}, like {{IPA|laɪk}} のように発音する人もいる。
 
語法の面では以下のような特徴がある。
* [[付加疑問文]]の使用("It is absurd. '''Isn't it?'''", "I said that, '''didn't I?'''")
* 河口域英語はコックニーと違い、単純否定の意味で二重否定( ... never ... not ...)をしない。ただし、単純な否定の意味で never を用いることがある。
 
== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
{{reflistReflist}}
 
== 外部リンク ==
* [http://www.phon.ucl.ac.uk/home/estuary/home.htm Estuary English] - John C. Wells教授による研究や解説。