「市川團十郎 (8代目)」の版間の差分

| 定紋 = 三升　[[ImageFile:Mimasu inverted.jpgpng|50px]]

'''八代目 市川 團十郎'''（はちだいめ いちかわ だんじゅうろう、[[文政]]6年[[10月5日 (旧暦)|10月5日]]（[[1823年]][[11月7日]]） - [[嘉永]]7年[[8月6日 (旧暦)|8月6日]]（[[1854年]][[9月27日]]））は[[天保]]年間から[[幕末]]にかけて活躍した[[歌舞伎]]役者。[[屋号]]は[[成田屋]]。[[家紋|定紋]]は[[:File:Mimasu inverted.png|三升]]、替紋は[[:File:Gyoyō Botan inverted.png|杏葉牡丹]]。[[俳名]]に白猿がある。

八代目團十郎はその美貌によって広い人気を集めたが、32歳のとき突如として自殺するという衝撃的な最期を遂げた。

面長の美貌で、歴代の團十郎とはまったく[[ニン|仁]]のこと異なる[[二枚目]]役者だった。[[天保の改革]]によって一時深刻な不況をこうむった江戸の芝居町に人出が戻ったのは、八代目團十郎に負うところが大きかった。上品ななかに独特の色気があり、おっとりとした愛嬌が身にそなわって、嫌味がなかったという。当時の批評には「男振りはすぐれて美男子といふにあらねど、いはゆる粋で高等で人柄で、色気はこぼれる程あれどもいやみでなく、すまして居れども愛嬌があり」（『俳優百面相』）とある。さわやかで高音の利いた調子の[[科白]]回しがうまく、こうした特色は彼が初演した『[[与話情浮名横櫛]]』（切られ与三）の与三郎によくあらわれている。

*鷹揚で温厚な性格は誰からも愛された。團十郎家に融通した多額の金がいつまでたっても返済されないことに業を煮やした債権者たちが、あるとき皆で相談して大挙して八代目の自宅に押し掛け寄せ、玄関先を埋め尽くして通せんぼをした。貸した借金をいくらかでも取り達立てないうちは八代目を自宅から一歩も外へは出させまいという算段である。これを見た八代目は、逃げ口上のつもりで債権者たちに「よくおいでなさいました。申し訳ございませんが、楽屋入りでございますので、どうかご免を蒙ります。どちら様もごゆるりとなさいませ。」と断りの口上をのべ言ったところ、並み居合わせた借金取りる債権者の誰もが痛み入ることしきりで、逆に八代目のために道を明けて「どうぞ、ご自由においでなさいませ。」と慇懃に送り出してしまったという。

*弘化5年（1848）。奈良県天理市の[[楢神社]]に井筒を奉納した。団十郎は楢神社の信奉者であだった。

*歌舞伎評論家の[[戸板康二]]は本件をもとに『團十郎切腹事件』がある、（新版は[[創元推理文庫]]、「中村雅楽探偵全集1」[[日下三蔵]]編、2007年）を書いた。これが第42回[[直木賞]]を受賞作品（1959（1960年）して戸板の出世作となったている。