「回帰的空間」の版間の差分

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'''注意'''  ノルム空間へと応用される場合、この節での定義はノルム空間に対する回帰性の定義と一致する。実際、バナッハ空間 ''X'' の双対 {{nowrap|''X'' ′}} 上のノルム位相は、強位相 {{nowrap|''β''(''X'' ′, ''X'')}} と一致し、したがって、位相ベクトル空間としてのノルム空間 {{nowrap|''X'' ′}} は ''X'' の強双対となる。また、''X'' 上のノルム位相は {{nowrap|''β''(''X'', ''X'' ′)}} と等しい。したがって、''X'' が位相ベクトル空間として回帰的であることと、それがノルム空間として回帰的である(すなわち、単射 ''J'' が全単射である場合)ことは同値である。
 
==例==
すべての有限次元ノルム空間は回帰的である。なぜならば、単純に、そのような空間とその双対および第二共役はすべて同じ線形次元を持ち、したがって定義と{{仮リンク|階数・退化次数公式|en|rank-nullity theorem}}により、線形単射 ''J'' は全単射となるからである。
 
無限大で 0 へと収束するようなスカラーの数列からなるバナッハ空間 ''c''<sub>0</sub> で、そのノルムを[[上限ノルム]]とするような空間は、回帰的ではない。後述の、一般的な性質にしたがうと、ℓ<sup>1</sup> および ℓ<sup>&infin;</sup> は回帰的ではないことが分かる。なぜならば ℓ<sup>1</sup> は ''c''<sub>0</sub> の双対と同型で、ℓ<sup>&infin;</sup> は ℓ<sup>1</sup> の双対と同型だからである。
 
すべての[[ヒルベルト空間]]は回帰的であり、また {{nowrap|1 < ''p'' < &infin;}} であるような{{仮リンク|Lp空間|label=''L''<sup>''p''</sup>空間|en|Lp space}}も回帰的である。より一般的に、すべての{{仮リンク|一様凸空間|label=一様凸|en|uniformly convex space}}バナッハ空間は、{{仮リンク|ミルマン-ペッティスの定理|en|Milman–Pettis theorem}}にしたがい、回帰的となる。空間 ''L''<sup>1</sup>(''&mu;'') および ''L''<sup>&infin;</sup>(''&mu;'') は、例えば ''&mu;'' が有限集合の測度であるような、有限次元の場合の除いて、回帰的ではない。同様に、[0,&nbsp;1] 上の連続関数からなるバナッハ空間 ''C''([0,&nbsp;1]) は回帰的ではない。
 
ヒルベルト空間 ''H'' 上の{{仮リンク|シャッテン級作用素|label=シャッテン級|en|Schatten class operator}}に属する作用素からなる空間 ''S''<sub>''p''</sub>(''H'') は一様凸であり、したがって {{nowrap|1 < ''p'' < &infin;}} であるときには回帰的となる。''H'' の次元が無限である場合、''S''<sub>1</sub>(''H'') ({{仮リンク|トレース級|en|trace class}})は ℓ<sup>1</sup> と同型な部分空間を含むため、回帰的ではない。また ''S''<sub>&infin;</sub>(''H'')&nbsp;= ''L''(''H'') (有界作用素)は、ℓ<sup>&infin;</sup> と同型の部分空間を含むため、回帰的ではない。
 
すべての有限次元ハウスドルフ[[位相ベクトル空間]]は回帰的である。なぜならば、線形代数により ''J'' は全単射であり、有限次元ベクトル空間上にはただ一つのハウスドルフベクトル空間位相が存在するからである。
 
{{仮リンク|モンテル空間|en|Montel space}}は回帰的な局所凸位相ベクトル空間である。
 
すべての半回帰的なノルム空間は回帰的である<ref>Schaefer 5.6</ref>。技巧的ではあるが、半回帰的であって回帰的でないような空間の例を次に挙げる:''Y'' を無限次元の回帰的なバナッハ空間とし、''X'' を位相ベクトル空間 {{nowrap|(''Y'', ''&sigma;''(''Y'', ''Y''&thinsp;&prime;))}}、すなわち、弱位相を備えたベクトル空間 ''Y'' とする。このとき、''X'' の連続双対は集合 {{nowrap|''Y''&thinsp;&prime;}} であり、''X'' の有界部分集合はノルム有界であるため、バナッハ空間 {{nowrap|''Y''&thinsp;&prime;}} は ''X'' の強双対である。''Y'' は回帰的であるため、{{nowrap|''X''&thinsp;&prime; {{=}} ''Y''&thinsp;&prime;}} の連続双対は、標準埋め込み ''J'' に関する ''X'' の像 ''J''(''X'') と等しいことになるが、''X'' 上の位相は強位相{{nowrap|''&beta;''(''X'', ''X''&thinsp;&prime;)}} ではなく、これは ''Y'' のノルム位相と等しい。
 
==性質==
もしバナッハ空間 ''Y'' が、回帰的なバナッハ空間 ''X'' と同型であるなら、''Y'' も回帰的である。
 
回帰的な空間のすべての[[閉集合|閉]][[線型部分空間|部分空間]]は、回帰的である。回帰的空間の双対は、回帰的である。回帰的な空間のすべての[[商線型空間|商]]は、回帰的である。
 
回帰的なバナッハ空間の幾何的な性質は次のようなものである:''C'' を、回帰的空間 ''X'' の空でない閉[[凸集合|凸]]部分集合とするなら、''X'' に含まれるすべての ''x'' に対して、''C'' に含まれるある ''c'' が存在し、||''x''&nbsp;&minus;&nbsp;''c''|| が ''x'' と ''C'' の点との距離を最小のものとする(ここで、''x'' と ''C'' の間の最小距離は ''x'' によって一意に定まるが、''c'' はそうならないことに注意されたい。''X'' が一様凸であるなら、最も近い点 ''c'' は一意である)。
 
''X'' をバナッハ空間とする。以下は同値である。
# 空間 ''X'' は回帰的である。
# ''X'' の双対は回帰的である。
# ''X'' の閉単位球は、{{仮リンク|弱位相|en|weak topology}}において[[コンパクト空間|コンパクト]]である(これは角谷の定理として知られる<ref>Conway, Theorem V.4.2, p.135.</ref>)。
# ''X'' に含まれるすべての有界列は、弱収束部分列を持つ<ref>なぜならば、弱コンパクト性と弱点列コンパクト性は{{仮リンク|エベーレイン-スムリアンの定理|en|Eberlein–Šmulian theorem}}により一致するからである</ref>。
# ''X'' 上のすべての連続線形汎関数は、''X'' 内の閉単位球上で最大値を取る({{仮リンク|ジェームズの定理|en|James' theorem}})。
 
回帰的なバナッハ空間が[[可分空間|可分]]であることと、その双対が可分であることは同値である。このことは、すべてのノルム空間 ''Y'' に対して、その双対 {{nowrap|''Y''&thinsp;&prime;}} の可分性は ''Y'' の可分性を意味する、という事実によりしたがう。
 
==関連項目==