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Cockroom (会話 | 投稿記録)
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。しかも食べる人の好みに応じて塩や酢などで味付けされることを前提としているため、調理の段階で味付けらしい味付けはされないことも多く、不慣れな旅行者は味のない料理に困惑することになる<ref name=ed>『イギリスはおいしい』[[林望]]著 ([[文春文庫]])ISBN 978-4167570026</ref>。実際、現在においてもイギリスのレストランの多くにおいては、高級店であっても、塩や酢などの調味料がテーブルに並び「客が好みで味付けすべし」という状態であり、他国では考えられない状態である<ref name=es>『イギリス病のすすめ』[[田中芳樹]]・[[土屋守]]著([[講談社]]文庫)ISBN 978-4062731195</ref>。結果としてイギリス料理で美味しく食べられるものは、せいぜい[[ローストビーフ]]や[[ステーキ]]程度という評判が定着してしまった。
 
このような状況になったのは、かつてのイギリス[[貴族]]が、[[日曜日]]には[[ウシ|牛]]を一頭屠ってローストビーフやステーキを食べるという習慣があった事も原因である。一頭分の[[牛肉]]は1日で食べきれるものではないため、平日の食事では日曜日に残った肉をそのまま、あるいは再び調理しなおして食べる事になる。また残り物の肉を食べる場合も、食べる人が好みで味付けする場合が多かった。結果として日曜日に食べるローストビーフ以外は、冷たい肉か、あるいは火を通しすぎた肉を食べ、また個人が好みで味付けするのが当然という食習慣が成立してしまった。なお、このような日曜日に大食をするのが贅沢という習慣は、[[フランス]]や[[イタリア]]などでも見られたが、やがて美食が贅沢という方向に移っていき、世界的に評判の高いフランス料理やイタリア料理の成立を見た。一方でイギリスでは美食が贅沢という習慣が生まれないうちに、それがイギリス料理の伝統として成立してしまったのである。
 
また、料理に過剰の加熱が行われるようになった一因には産業革命以降の労働者の居住環境があげられる。当時、都市居住の労働者階級の家庭では、新鮮な食材を入手することが困難であった。これに食物を加熱殺菌することが奨励された当時の[[衛生学]]の啓蒙が相まって必要以上に食材を加熱する調理法が伝統化したという側面もある。衛生学上の問題が解決して以降も、イギリス人気質もあり、過剰な加熱がイギリス料理の伝統として定着してしまったのである。