「グラム染色」の版間の差分

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'''グラム染色'''(グラムせんしょく、[[英語|英]]:Gram staining)とは、主として[[細菌]]類を[[色素]]によって[[染色 (生物学)|染色]]する方法の一つで、細菌を分類する基準の一つ。[[デンマーク]]の学者[[ハンス・グラム]]によって発明された。
 
== 概要 ==
グラム染色によって細菌類は大きく2種類に大別される。染色によって紫色に染まるものを'''[[グラム陽性]]'''、紫色に染まらず赤く見えるものを'''[[グラム陰性]]'''という。この染色性の違いは[[細胞壁]]の構造の違いによる。グラム陽性は[[ペプチドグリカン|ペプチドグリカン層]]が厚く[[脂質]]が少ない細胞壁を持ち、グラム陰性はペプチドグリカン層が薄く脂質が多い細胞壁を持つ。そしてこの細胞壁の構造の違いは、この両者が生物学的に大きく違うことを反映しており、グラム染色は細菌を分類する上で重要な手法になっている。
 
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[[光学顕微鏡]]を使って細菌の形態を観察することは、細菌を同定するための第一歩である。しかし、[[スライドグラス]]に塗抹した細菌をそのまま観察しても細菌以外のものとの見分けが付きにくいため、通常は染色を施すことが多い。グラム染色は二種類の色素を使って染め分ける点では、一種類の色素によるもの(単染色)より複雑な染色法であるが、その操作自体は比較的容易であり、しかも細菌の大きさ、形状、配列に加えて、グラム染色性(=細胞壁構造の違い)の情報まで得られる。このため、細菌の鑑別の際にはまず最初に必ず行われる基本的な同定法である。
 
== 基本的な方法 ==
# きれいな[[スライドガラス|スライドグラス]]に、新しく分離培養した菌を含む菌液を、[[白金耳]]などで薄く曇る程度に塗抹し、乾燥後、[[ガスバーナー]]の火炎中を2-3回通過させて固定する。古い培養液では、グラム陽性菌であっても死んでしまっていて染まらない場合があるため、必ず新しく分離培養したものを用いる。
# [[クリスタルバイオレット]]または[[ゲンチアナバイオレット]]などの塩基性の紫色色素液で1分程度染色する。この段階では、菌はグラム陽性と陰性に関わらず紫色に染まる。
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<!--「染色動態」という言葉を「染色態度」に代えました。参照文献は Medical Technology別冊 カラー版 染色法のすべて(1993, 第1版、医歯薬出版株式会社発行)です。-->
 
== 染色原理 ==
[[画像:Bacterial_cell_wall.png|thumb|300px|right|真正細菌の細胞壁]]
グラム染色性の違いは、細菌の細胞壁の構造による。
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なお、元から細胞壁を持たない[[マイコプラズマ]]や[[ファイトプラズマ]]はグラム陰性である。また、抗酸菌はグラム不定性を示すが、これは抗酸菌の細胞壁に[[ミコール酸]]と呼ばれる[[ろうそく|ロウ]]性の脂質が多く含まれているため、水溶性色素の浸透が悪いためである。また、[[芽胞]]を作る菌では、芽胞の部分は染色されず透明に見える。
 
== グラム染色性による分類 ==
代表的な細菌について、グラム染色の結果を示すと以下のようになる。
*[[グラム陽性菌|グラム陽性]]
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なお、グラム染色法自体は真正細菌以外の細胞にも行うことが可能であり、その場合、[[細胞壁]]の有無によって染色性が決まる。動物細胞はグラム陰性に、[[植物]]細胞や[[真菌]]細胞はグラム陽性に染まる。一般的な[[古細菌]]は、[[S層]]と呼ばれる細胞壁を持つがグラム陰性である。その他、一部の[[シュードムレイン]]を持つ古細菌([[メタノピュルス・カンドレリ|メタノピュルス綱]]、[[メタノバクテリウム綱]]など)や、大型の[[ウイルス]](ミミウイルス)もグラム陽性に染まる。しかしながら、これらは真正細菌の細胞壁合成を阻害する[[ペニシリン]]などの[[抗生物質]]に対し非感受性である。
 
[[category{{デフォルトソート:微生物学|くらむせんしよく]]}}
[[Category:微生物学]]
[[Category:細菌学|*くらむせんしよく]]
[[categoryCategory:生物学の研究技術|くらむせんしよく]]
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[[Category:染色]]
 
{{気道感染}}