「貸倒引当金」の版間の差分

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{{出典の明記|date=2012年11月24日 (土) 14:50 (UTC)}}
'''貸倒引当金'''(かしだおれひきあてきん、{{lang-en-gb-short|Allowance For Bad Debt, Loan Loss Reserve}}、{{lang-en-us-short|Allowance for Doubtful Accounts}}<ref>貸倒引当金繰入は、"Bad Debts Expense"という。</ref>)は、金銭債権の貸倒見積高を計上することにより生じる[[引当金]]である。[[貸方]]に計上される勘定であるが、[[貸借対照表]]上は[[評価勘定]]として[[資産]]から控除される形で表示される。
 
なお、貸倒引当金とこれ適正な資産評価および損益計算のために計上される抽象的な概念であり、[[リスク]]を定量的に表現したものにすぎない。そのため、貸倒引当金に相当する資金(現金)が現実に確保されるわけではない。
 
== 概要 ==
[[貸付金]]や[[売掛金]]などの金銭債権は、計上額すべてを回収できるとは限らず、相手の返済不能等による[[信用リスク]]が発生する。貸倒れが生じた場合、当該債権を取崩す(貸方に記入)とともに同額の費用が計上(借方に記入)される。このとき、財務会計上、この費用をどの会計期間に計上するかが問題となるが、基本的には当該債権が生じた会計期間の費用とすべきである。たとえば、第1期に貸し付けを行い、第2期に貸倒れたとするなら、当該貸付金の貸倒れによる費用は第1期に計上すべきである。しかし、第1期においては実際に貸倒れが起こったわけではないので、費用の計上は見積もりによるしかない。よって、各期の決算において翌期以降の貸倒れを見積もり、あらかじめ費用を計上(借方に記入)する。このとき同時に計上(貸方に記入)される勘定が貸倒引当金である。
 
* [[貸付金]]や[[売掛金]]などの金銭債権は、計上額すべてを回収できるとは限らず、相手の返済不能等による[[信用リスク]]が発生する。これについて、[[企業会計原則]]の一般原則六では、予想される将来の危険に備えた会計処理、すなわち'''として貸倒引当金'''の計上を認めており、[[金融商品に関する会計基準]](以下、金融商品会計)や税法上も計上内容ごとに見積方法が定められている。
* '''貸倒引当金'''の計上範囲は、原則として全ての金銭債権が対象となり、立替金などについても計上が認められる。
* '''貸倒引当金'''の会計処理としては、当期の見積額に応じて借方に貸倒引当金繰入(費用)を、貸方に同額の'''貸倒引当金'''(債権科目から控除)を計上する。前期からの繰越額の扱いについては、'''①洗替法'''(前期分を一度戻入処理し、当期分を計上する方法)と'''②差額補充法'''(前期分と当期分との差額のみ計上する方法、実績法ともいう)のいずれかの方法がある。
*# '''洗替法''' - 前期分を一度戻入処理し、当期分を計上する方法。
*# '''差額補充法''' - 前期分と当期分との差額のみ計上する方法。実績法ともいう。
* 実際に貸倒れが生じた場合、当該金銭債権は当期資産の部から控除されるため、これに対応する'''貸倒引当金'''も取り崩しされる。このとき、'''貸倒引当金'''を超える貸倒れが発生した場合には、その超過分を当期の貸倒損失(費用)として計上する。
 
== 区分 ==
* '''貸倒引当金'''の計上範囲は、原則として全ての金銭債権が対象となり、立替金などについても計上が認められる。
金融商品会計上は、金銭債権の見積方法により次の3つに区分する。
# '''一般債権''' - 問題等の発生していない債権。現時点では貸倒の問題等は生じていないものの、過去の債権貸倒実績率等合理的な方法で計上することが認められている。
# '''貸倒懸念債権''' - 重大な問題が発生もしくは発生する可能性が高い債権。個別に回収可能性を勘案し、貸倒見積高を計上する。
# '''破産更生債権''' - 実際に破綻した債務者の債権。回収見込高を差し引いた全額を貸倒見積高として個別に計上することとされている。
 
一方、税務上の区分は
* '''貸倒引当金'''の会計処理としては、当期の見積額に応じて借方に貸倒引当金繰入(費用)を、貸方に同額の'''貸倒引当金'''(債権科目から控除)を計上する。前期からの繰越額の扱いについては、'''①洗替法'''(前期分を一度戻入処理し、当期分を計上する方法)と'''②差額補充法'''(前期分と当期分との差額のみ計上する方法、実績法ともいう)のいずれかの方法がある。
==# 個別評価金銭債権と'''一括評価金銭債権 =='''
# '''個別評価金銭債権'''
である。
 
=== 税務上の貸倒引当金区分と企業会計上の貸倒金に関する区分の差異について ===
* 実際に貸倒れが生じた場合、当該金銭債権は当期資産の部から控除されるため、これに対応する'''貸倒引当金'''も取り崩しされる。このとき、'''貸倒引当金'''を超える貸倒れが発生した場合には、その超過分を当期の貸倒損失(費用)として計上する。
両者の対応としては、一般債権が一括評価金銭債権に、貸倒懸念債権と破産更生債権が個別評価金銭債権におおよそ対応するが、貸倒引当金の見積算定方法について金融商品会計(企業会計上)と税務上で若干定義が異なるため両者間には計上額の差異が発生し、[[税効果会計]]にも影響する。主な相違点としては、
* 金融商品会計上の破産更生債権等と税務上の個別評価金銭債権の範囲(税務上は債権の評価減は原則として認めていないため、金融商品会計と比べて適用範囲が狭い)
* 一括評価金銭債権に関する貸倒実績率算定方法
などがあり、金融商品会計上の貸倒引当金が税務上の算定額を上回れば、差分は算入限度超過額として、当期への損金算入が認められない。
 
 この金融商品会計と税務上との差分は、[[税効果会計]]上[[将来減算一時差異]]として当期に[[繰延税金資産]]に計上(借方)され、翌期以降の損金算入が認められる時点で取り崩しされることになる。
== 個別評価金銭債権と一括評価金銭債権 ==
 
* 金融商品会計上は、金銭債権の見積方法により'''①一般債権'''(問題等の発生していない債権)、'''②貸倒懸念債権'''(重大な問題が発生もしくは発生する可能性が高い債権)、'''③破産更生債権'''(実際に破綻した債務者の債権)の3つに区分する。'''①'''は、現時点では貸倒の問題等は生じていないものの、過去の債権貸倒実績率等合理的な方法で計上することが認められている。'''②'''は、個別に回収可能性を勘案し、貸倒見積高を計上する。'''③'''は、回収見込高を差し引いた全額を貸倒見積高として個別に計上することとされている。
 
* 一方、税務上の区分は'''①'''が'''一括評価金銭債権'''、'''②'''、'''③'''が'''個別評価金銭債権'''に対応するが、金融商品会計と税務上の定義について若干の相違があるため、例えば'''①一般債権'''(金融商品会計)と'''一括評価金銭債権'''は必ずしも一致しない(詳細については後述)。
 
== 税務上の貸倒引当金と企業会計上の貸倒金に関する差異について ==
 
 '''貸倒引当金'''の見積算定方法について、金融商品会計(企業会計上)と税務上で若干定義が異なるため、両者間には計上額の差異が発生し、[[税効果会計]]にも影響する。主な相違点としては、金融商品会計上の破産更生債権等と税務上の個別評価金銭債権の範囲(税務上は債権の評価減は原則として認めていないため、金融商品会計と比べて適用範囲が狭い)や一括評価金銭債権に関する貸倒実績率算定方法などがあり、金融商品会計上の'''貸倒引当金'''が税務上の算定額を上回れば、差分は算入限度超過額として、当期への損金算入が認められない。
 
 この金融商品会計と税務上との差分は、[[税効果会計]]上[[将来減算一時差異]]として当期に[[繰延税金資産]]に計上(借方)され、翌期以降の損金算入が認められる時点で取り崩しされることになる。
 
== 不良債権問題との関連 ==
 俗にいう[[不良債権]]処理とは、'''貸倒引当金'''設定を指す場合が多い。実際に貸倒れが生じる前にあらかじめ費用を計上しておく(費用を先送りしない)こと、資産の過大計上を避けるという意味で、健全な会計処理と評される。ただし、過度な会計処理による'''貸倒引当金'''の計上は、企業の財政状態や経営成績の真実な報告をゆがめることにもつながるため、注意を要する。
 
 俗にいう[[不良債権]]処理とは、'''貸倒引当金'''設定を指す場合が多い。実際に貸倒れが生じる前にあらかじめ費用を計上しておく(費用を先送りしない)こと、資産の過大計上を避けるという意味で、健全な会計処理と評される。ただし、過度な会計処理による'''貸倒引当金'''の計上は、企業の財政状態や経営成績の真実な報告をゆがめることにもつながるため、注意を要する。
 
== 関連項目 ==
 
* [[金融商品会計に関する会計基準]]
* [[税効果会計]]
* [[繰延税金資産]]
 
== 脚注==
{{reflist}}{{脚注ヘルプ}}
[[category{{DEFAULTSORT:会計|かしたおれひきあてきん]]}}
 
[[Category:勘定科目]]
[[category:会計|かしたおれひきあてきん]]
[[ko:대손충당금]]