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バリウムの[[過塩素酸]]塩は[[ジエチレントリアミン]]によって[[錯体]]を形成するが、安定に存在できるのは固体常態のみであり溶液中では容易に解離する<ref>[[#CW1987|コットン、ウィルキンソン (1987)]] 279頁。</ref>。また、[[クラウンエーテル]]とも錯体を形成する<ref>[[#CW1987|コットン、ウィルキンソン (1987)]] 281頁。</ref>。バリウムは液体[[アンモニア]]に溶解して青色の溶液となり、ここからアンモニアを除去することでバリウムのアンミン錯体を得ることができる<ref name=CW277>[[#CW1987|コットン、ウィルキンソン (1987)]] 277頁。</ref>。
バリウムは[[アルミニウム]]、[[亜鉛]]、鉛および[[スズ]]を含むいくつかの金属と結合し、[[合金]]および[[金属間化合物]]を形成する<ref>{{cite
=== 同位体 ===
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== 存在 ==
バリウムの宇宙全体の平均濃度の推定値は重量濃度で10 ppb、[[太陽]]における推定濃度も10 ppbである<ref>{{citation |url=http://www.webelements.com/barium/geology.html|title=Barium: geological information|work=Mark Winter, The University of Sheffield and WebElements Ltd, UK |publisher=WebElements |accessdate=2012-01-15}}</ref>。[[地殻]]においては比較的豊富に存在しており、その存在量は4.25×10<sup>2</sup> mg/kgである。また、海水中には1.3×10<sup>-2</sup> mg/L含まれる<ref>{{Cite web|title=The Element Barium|url=http://education.jlab.org/itselemental/ele056.html|publisher=Jefferson Lab.|accessdate=2012-01-15}}</ref>。地殻中において[[重晶石]](硫酸塩)や毒重石(炭酸塩)のような鉱物として存在している<ref name=
== 生産 ==
[[File:BariteWorldProductionUSGS.PNG|thumb|世界の重晶石生産量の動向]]
[[File:World Baryte Production 2010.svg|thumb|right|250px|2010年の重晶石の生産国]]
バリウムは空気中で容易に酸化されるため単体の金属バリウムを得ることは困難であり、自然から金属バリウムが産出することはない。金属バリウムは主に[[重晶石]]から抽出することで得られるが、重晶石は非常に溶解し難いため、重晶石を直接的に金属バリウムや他のバリウム化合物を得るための前駆体とすることはできない。そこで、重晶石中の[[硫酸バリウム]]を[[硫化バリウム]]に還元するために[[炭素]]とともに加熱する前処理が行われる<ref>{{cite web| title = Toxicological Profile for Barium and Barium Compounds. Agency for Toxic Substances and Disease Registry| publisher = [[Centers for Disease Control and Prevention|CDC]]| date = 2007.| url = http://www.atsdr.cdc.gov/toxprofiles/tp24.pdf|accessdate=2012-01-17}}</ref>。▼
バリウム(重晶石)の年間生産量のピークは1981年の830万トンであり、そのうち7-8 %だけが金属バリウムやその化合物の生産に利用された<ref name=Ullman5>[[#Ullman2007|Ullman 2007]], p. 5.</ref>。これは、バリウムの最大の用途が{{仮リンク|掘穿泥水|en|Drilling fluid}}における[[加重剤]]としての用途であり、この目的には重晶石をそのまま粉砕して硫酸バリウムとして利用するためである<ref>{{Cite web|url=http://mric.jogmec.go.jp/public/report/2011-07/Ba.pdf|title=31.バリウム|publisher=石油天然ガス・金属鉱物資源機構|accessdate=2013-01-09}}</ref>。[[シェールガス]]の採掘増加に伴う掘穿泥水の需要増によって、2016年にはピーク時の生産量を越える930万トンにまで需要が拡大するものと予想されている<ref>{{Cite web|url=http://www.sojitz.com/jp/news/2012/20120713.html|title=双日、メキシコにおける世界最大級のバライト鉱山へ出資~石油・ガス採掘時の掘削泥水原料として需要拡大~|publisher=双日|accessdate=2013-01-09}}</ref>。2011年におけるバリウム生産量はその50 %以上を中国が占めており、それに14 %のインド、8.4 %のモロッコ、8.3 %のアメリカが続いている<ref>{{Cite web|url=http://minerals.usgs.gov/minerals/pubs/commodity/barite/mcs-2012-barit.pdf|title=BARITE|publisher=[[アメリカ地質調査所]]|year=2012|accessdate=2013-01-08}}</ref>。
▲バリウムは空気中で容易に酸化されるため単体の金属バリウムを得ることは困難であり
:BaSO<sub>4</sub> + 2C → BaS + 2CO<sub>2</sub>
こうして得られた水溶性の[[硫化バリウム]]は、その
この金属間化合物は[[反応中間体]]であり、BaAl<sub>4</sub>と酸化バリウムが反応することで金属バリウムを与える。酸化バリウムとアルミニウムとの反応において酸化バリウムの全量が還元しきるわけではないことに注意<ref name=Ullman3/>。
:8 BaO + BaAl<sub>4</sub> → Ba↑ + 7 BaAl<sub>2</sub>O<sub>4</sub>
さらに残った酸化バリウムは、先の反応で形成された酸化アルミニウムと反応する<ref name=Ullman3/>。
▲:4BaO + 2Al → BaO·Al<sub>2</sub>O<sub>3</sub> + 3Ba
:BaO + Al<sub>2</sub>O<sub>3</sub> → BaAl<sub>2</sub>O<sub>4</sub>
全体的な反応は以下のようになる<ref name=Ullman3/>。
:4 BaO + 2 Al → 3 Ba↑ + BaAl<sub>2</sub>O<sub>4</sub>
こうして得られたバリウム蒸気は[[アルゴン]]雰囲気下で回収、冷却され型に詰められる。この方法は商業的に使われており、高純度で金属バリウムを得ることができる<ref name=Ullman3/>。一般的に市販される金属バリウムの純度は99 %であり、主な不純物は[[ストロンチウム]]および[[カルシウム]](最大で0.8 %および0.25 %)、他の不純物は0.1 %よりも低い<ref name=Ullman3>[[#Ullman2007|Ullman 2007]], p. 4.</ref>。
類似した反応として、酸化バリウムを[[ケイ素]]と1200{{℃}}で反応させることによって金属バリウムとメタケイ酸バリウムを得る方法がある<ref name=Ullman3/>。電解法では、生成した金属バリウムがすぐに原料の溶融塩に溶解しハロゲン化物の汚染を受けやすいため利用されない<ref name=Ullman3/>。
== 用途 ==
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[[Image:2006 Fireworks 1.JPG|thumb|バリウムによって緑色を示す花火]]
=== 単体としての用途 ===
バリウム単体としての用途として最も重要なものに、テレビの[[ブラウン管]]のような[[真空管]]内に痕跡量残存した最後の酸素やその他のガスを取り除く{{仮リンク|ゲッター|en|Getter}}としての用途が挙げられる<ref
=== 硫酸バリウムとしての用途 ===
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* {{Cite book|和書|author=G. シャルロー|others=曽根興二、田中元治 訳|title=定性分析化学II ―溶液中の化学反応|year=1974|edithion=改訂版|publisher=[[共立出版]]|ref=charlot1974}}
* {{Cite book|和書|author=千谷利三|year=1959|title=新版 無機化学(上巻)|publisher=産業図書|ref=千谷1959}}
*{{cite book|author=Kresse, Robert; Baudis, Ulrich; Jäger, Paul; Riechers, H. Hermann; Wagner, Heinz; Winkler, Jocher; Wolf, Hans Uwe|chapter=Barium and Barium Compounds|editor=Ullman, Franz|title=Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry|year=2007|publisher=Wiley-VCH|doi=10.1002/14356007.a03_325.pub2|ref=Ullman2007}}
== 関連項目 ==
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