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2013/1/14 爆弾低気圧加筆
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{{出典の明記|date=2011-12}}
[[File:Cyclone Catarina from the ISS on March 26 2004.JPG|thumb|right|220px|南大西洋の[[サイクロン・カタリーナ|熱帯低気圧]](2004([[2004]][[3月26日]])]]
[[File:Low pressure system over Iceland.jpg|thumb|right|220px|アイスランド南西沖の[[寒冷低気圧]](2003([[2003]][[9月4日]])]]
'''低気圧'''(ていきあつ、[[英語]]:low pressure)とは、周囲より[[気圧]]の低い部分をいう。周囲より気圧が低いと定義されるので、中心気圧が1気圧 (1013 (1013[[ヘクトパスカル|hPa) ]])より高い低気圧も珍しくない。冬季に[[シベリア高気圧]]の圏内に発生する低気圧の中には 1030 hPa 1030hPa以上のものもしばしば見られる。
 
一般に、低気圧は[[雲]]を伴い、[[雨]]や[[風]]をもたらす。
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日本に影響する低気圧は、[[中国]]・[[東シナ海]]で発生し、日本列島を西南西から東北東方向に横切り、[[三陸沖]]から[[アリューシャン列島]]あたりで最盛期に達し、その後進路が不定になって停滞したりアラスカ方面に進む事が多い。冬季には本州の南岸沿いを進む[[南岸低気圧]]が関東など太平洋側に雪を降らせることがある。
 
熱帯低気圧が北上して前線が生じた上で温帯低気圧に変わることがある。ただし、逆に温帯低気圧から熱帯低気圧に変わることはほとんど無い。温帯低気圧と衰退期の熱帯低気圧とでは構造は確かに類似しているが、発生地域が異なる上、気候にも影響があるため、熱帯低気圧が温帯低気圧に変わることはあっても、温帯低気圧から熱帯低気圧に変わることは無いのである。天気図上は、(冠のない)低気圧が熱帯低気圧に変化(発達)することがあるが、温帯低気圧からの変化ではない。このような熱帯地域で発生する低気圧低圧部のように温帯低気圧でも熱帯低気圧でもない低気圧も存在し、90W等の番号が付与されることがある
 
=== 熱帯低気圧 ===
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[[熱帯]]の海洋上で発生する低気圧を、[[熱帯低気圧]]という。成因も構造も温帯低気圧とは異なる。
 
熱帯低気圧は、(1) 海水面温度が高く (26–27 ℃)(26–27℃)(2) 転向力のある程度大きい北緯(南緯)5–25°の範囲で発生する。
 
熱帯の大気は通常条件付き不安定な状態にあり、海水面温度が高い海域では蒸発が盛んに行われるため、上昇気流が起きやすい。一方、低緯度では中緯度高気圧([[亜熱帯高気圧]])から吹き出す[[貿易風]]が恒常的な東風となっているが、その東風の中にしばしば波動が生じる。これを偏東風波動と呼び、この部分は渦度を生じて周囲から渦状に空気が流れ込み、強い上昇気流が起きて気圧が低くなり、積雲や積乱雲が発達する。上昇気流により雲ができて水蒸気が持っていた熱が大気中に放出され、上空の空気の温度が高くなると、このサイクルがますます加速され、低気圧が発達する(第2種条件付不安定・CISK)
 
北西太平洋域(北半球の東経100度~180度-180°)において熱帯低気圧の域内最大風速が17.2 m2m/s(34kt) を超えると[[台風]]となる。北大西洋及び北東太平洋(北半球の西経180度以東)では[[ハリケーン]]、南北インド洋や南太平洋では[[サイクロン]]と呼称されるが、台風と同じ熱帯低気圧である。台風がさらに発達するためには、海水温が 28 ℃28℃以上の海域を通過することが重要だとされる。熱帯低気圧は温帯低気圧に比べて規模が小さく、1000hPaの等圧線半径も600kmを越える事は少ないが、特に中心付近で気圧傾度が大きくなっているため猛烈な暴風を伴う。
 
熱帯低気圧による最低気圧の世界記録は、[[1979年]][[10月12日]]、[[昭和54年台風第20号|台風第20号]]において沖ノ鳥島南南東海上でアメリカ軍の気象観測機により実測された870hPaである。
 
熱帯低気圧(台風など)が中緯度まで北上(北半球の場合)すると、寒気の影響を受け構造に変化が生じ、熱帯低気圧の東側に温暖前線、西側に寒冷前線が生じた上で温帯低気圧に変わる場合が多い。盛夏期にはそのまま衰弱し、熱帯低気圧のまま消滅することもある。
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冬季に発生した場合、日本海側では大雪になることがある。ごく稀に関東平野など太平洋側にもに雪をもたらすことがある。
 
日本周辺で夏季に発生する場合、アリューシャン列島からミッドウェイ近傍で発生した蛇行から切り離され、一週間程度で小笠原近海まで南西方向に進むケースが見られる。 これに対応して[[熱帯低気圧]]の発達が観測されることから、[[台風]]の発達との関連を指摘する研究がある<ref>{{PDFlink|[http://www.mri-jma.go.jp/Publish/Technical/DATA/VOL_14/14_011.pdf 気象研究所技術報告  第14号  1985 第2章]}}</ref>
 
=== 熱的低気圧 ===
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== 爆弾低気圧 ==
'''爆弾低気圧'''("bomb" cyclone<ref>[http://www.usatoday.com/weather/tg/wnoreast/wbombs.htm Bomb cyclones ravage northwestern Atlantic] Jack Williams, USATODAY, 、[[2005年]][[5月20日]]。</ref><ref>[http://amsglossary.allenpress.com/glossary/search?id=bomb1 bomb] Glossary of Meteorology, アメリカ気象学会, 、[[2012年]][[4月22日]]閲覧。</ref>)とは、急速に発達し、熱帯低気圧(台風)並みの暴風雨をもたらす温帯低気圧を指す俗語。[[1980年]]に[[マサチューセッツ工科大学|MIT]]の気象学者フレデリック・サンダース(Frederick(Frederick Sanders)Sanders)らが提唱<ref>{{citeCite journal|authors=Sanders, F. and Gyakum, J. R.|year=1980|title=Synoptic-Dynamic Climatology of the "Bomb"|journal=Monthly Weather Review|volume=108|issue=10|pages=1589-1606|doi=10.1175/1520-0493(1980)1080493(1980)108<1589:SDCOT>2.0.CO;2}}</ref>して以降、様々な気象学者がその定義や解析を試みているが、「12時間以上<ref>主に12時間や24時間が用いられる。</ref>にわたって中心気圧が1時間あたり1 hPa1hPa以上低下した温帯低気圧」を指すことが多い。高緯度であるほど発生頻度が高い傾向にあるため、高緯度ほど[[コリオリの力]]の増大により[[地衡風]]の風速が増すことを利用して、時間あたりの低下気圧に(sin φ(sinφ/sin 60sin60°)を掛けて緯度補正を行う定義も用いられることがある。日本の[[気象庁]]は、予報用語としては用いず'''急速に発達する(した)低気圧'''などと言い換えることと定めている。[[日本放送協会|NHK]]では、前記のほか「猛烈に発達する(した)低気圧」などと表現する事もある。なお、熱帯低気圧は発達のメカニズムこそ温帯低気圧とは異なるが、このような急発達は普通のことであるため特に爆弾低気圧と呼ぶことはない。
 
冷たく乾燥した大陸性[[気団]]と暖かく湿った海洋性気団が衝突する大陸辺縁部の、特に東岸で、冬季に多くみられる現象。[[日本海]]や[[三陸沖]]、[[千島列島]]・[[アリューシャン列島]]南方、[[アメリカ合衆国|アメリカ]]・[[カナダ]]の東海岸などで観測される。冬季の対流圏上層で傾圧([[気圧傾度]])が非常に大きい地域の風下(東方)、また顕著な[[暖流]]の流域にあることから、これらが発達に関与していると考えられている<ref>[http://kobam-hp.web.infoseek.co.jp/meteor/bomb.html 爆弾低気圧(ボンブ)] 気象用語集</ref>。
 
日本付近では10月から1月頃の[[冬の嵐]]の時期、2月から3月の[[春一番]]の時期が最も多く、5月の[[メイストーム]]の時期にもみられる。[[日本海低気圧]]が日本海から[[北日本]]を通過する際に急速に発達し、三陸沖でさらに猛烈に発達する例が多い<ref>[http://www.dpac.dpri.kyoto-u.ac.jp/mukou/meeting/Report/08/yoshiike.pdf 日本近海の爆弾低気圧活動と大規模循環場との相互作用] 吉池聡樹、川村隆一、第6回「異常気象と長期変動」研究集会講演要旨、富山大学気象学・気候力学分野(川村研究室)より</ref>。アメリカ・カナダでも同様に、冬季に[[ノーイースター]]と呼ばれる嵐はしばしば爆弾低気圧である。
 
日本では、[[2012年4月の低気圧|2012年4月3日に台風並みに巨大な爆弾低気圧]]が発生し]]、各地に被害や混乱をもたらした。特に風が強く、西日本から北陸にかけての広い範囲で瞬間風速30メートル以上が記録された。<!-- 出典は気象庁。記事は朝日 http://www.asahi.com/national/update/0403/TKY201204030530.html -->[[2013年]][[1月13日]]に沖縄の西で発生した低気圧は[[1月14日|14日]]にかけて猛発達しながら日本の南海上を通過し([[南岸低気圧]])、広い範囲に強風や大雨、大雪をもたらした。中心気圧は13日正午時点で1008hPaであったが14日正午に984hPa、15日正午には東海上で942hPaと急成長し、爆弾低気圧となった。<!-- 朝日新聞 http://www.asahi.com/national/update/0114/TKY201301140115.html -->
 
== 名称 ==
[[2002年]]、[[ベルリン自由大学]]気象研究所が、高気圧や低気圧の[[命名権]]の販売を開始した。[[徳島県]][[徳島市]]在住の団体職員兼[[気象予報士]]の男性が、[[日本人]]として初めて購入した。購入者は自分自身の名を低気圧に命名し、[[2005年]]秋、[[日本人]]名をつけた史上初の低気圧「タカシ (TAKASHI)(TAKASHI)」が誕生した。
 
== 参考文献 ==
* 小倉義光 『一般気象学』第2版、東京大学出版会、[[1999年]] ISBN 978-4-13-062706-1
 
== 脚注 ==
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== 参考文献 ==
* 小倉義光 『一般気象学』第2版、東京大学出版会、1999年 ISBN 978-4-13-062706-1
 
== 関連項目 ==
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== 外部リンク ==
{{Commonscat|Low pressure systems}}
* 小倉義光、隈部良司、西村修司 「お天気の見方・楽しみ方(11) : (11):「台風並みに発達した」低気圧-2007年1月6日の場合」 『天気』 54巻7号, pp.663-669, 、[[2007年]][[7月31日, ]]、{{NAID|110006386572}}. - 爆弾低気圧に関する解説
 
{{気象現象}}