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幸福についての考察や、幸福であるためにはどのような生き方をすべきであるか、その方法論を提示した文章・書物は、「幸福論」(''Eudaemonics'')と呼ばれている。幸福を倫理の最高目的と考え、行為の基準を幸福におく説を[[幸福主義]]という。古典的には[[アリストテレス]]が典型であり、近代哲学では[[功利主義]]がその典型である。
 
本記事ではまず、[[哲学者]]や[[思想家]]や[[宗教家]]などによって幸福についてどのような考え方が提示されてきたのか見てゆくことにし。→[[#哲学思想、宗教における考え]]

その次に、近年の統計的、[[な調査や精神医学]]的な調査・研究で明らかになった知見なども紹介することにする。→[[#統計的、精神医学的調査・研究]]
 
==哲学、思想、宗教における考え==
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*体験価値 善や美を享受する。
*[[態度価値]] 人間らしい尊厳ある態度をとる。
創造価値、体験価値の実現は一般的に言われる幸福な状態である。最後の態度価値は一般的には幸福と言い、困悲惨な環境・のなかでも実現できる価値であり、「いわゆる幸福」環境だけが人間にとっての価値ではないこく、たを意味えどのような環境に遭遇しても、それに対する自分自身の態度のとり方にこそ価値があると捉えることで幸福を得られることを、ヴィクトール・フランクルは著書で語った。彼は、アウシュヴィッツとう究極の状況下で人々が見せ様々な態度を目撃し、また、そのような状況下でも充実した生き方を見せた人に遭遇した実体験などもふまえてそれを語った
 
===新宮秀夫による説明===
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==統計的、精神医学的調査・研究==
<ref>出典:『こころと体の対話 精神免疫学の世界』神庭重信 ISBN 4-16-660041-9 p.86~「なにが幸福感を決めるのか」 (著者は慶應義塾大学医学部および米国・メイヨクリニック出身、現 山梨医科大学教授)</ref>
1980年代から幸福感に関する心理学的・精神医学的な研究が盛んになってきた<ref>『こころと体の対話 精神免疫学の世界』p.86</ref>。
 
1980年代から幸福感に関する心理学的・精神医学的な研究が盛んになってきた。<ref>『こころと体の対話 精神免疫学の世界』p.86</ref>。
 
世界各地の110万人のデータを検討したマイヤースらの1996年の研究によると、2割の人が「とても幸福である」と答え、約7割の人が「かなり幸福」あるいは「それ以上」と答えていた。
 
ある程度以上裕福な先進諸国においては、個人の経済的裕福さと幸福感との間には関連性が見られなくなる<ref>1990年、イングルハートによる分析。(『こころと体の対話 精神免疫学の世界』p.86)</ref>。
統計学的に見て、幸福感に大きな影響を与えているのは、婚姻状況<ref>1980~1990年にシカゴ大学によって行われた調査(『こころと体の対話 精神免疫学の世界』p.87)</ref>(未婚/既婚/離婚の違い)および[[信仰]]心であった(注. ここでいう「信仰心」とは主として[[キリスト教]]の信仰のことである)。世界14ヶ国16万人余りを対象とした国際研究では、幸福であると答えた人の率は、信仰心があつく礼拝や儀式にもよく参加する人のほうが高かった<ref>[[ギャロップ]]社による調査。(『こころと体の対話 精神免疫学の世界』p.86)</ref>。
 
様々な統計的データによって明らかになったことは、幸福感の基線を決めるのは、環境の客観的な条件ではなく、個々人の'''内的特徴'''(「[[信仰]]心」や「ものの考え方」など)である、ということである<ref>(『こころと体の対話 精神免疫学の世界』p.91)</ref>。
 
また、幸福感を持っている人に共通する内的な特徴は4つあその4つもいわれる。は ①自分自身のことが好きであること、主体的に生きているという感覚を持てていること、③[[楽観主義|楽観的であること]]外向的であること、であると指摘されている<ref>(『こころと体の対話 精神免疫学の世界』p.90)</ref>。
 
また、人は価値のある活動に積極的に参加し、自身のゴールをめざして前進するときに、より多くの幸福を感じることができる<ref>(『こころと体の対話 精神免疫学の世界』p.88)</ref>。
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===感謝介入法と親切介入法===
;感謝介入法
人を3つのグループに分け、それぞれのグループの各人に次のようなことを記録することを課題として与えて記録させる。
* 第1グループには最近1週間のうちに感謝したこと
* 第2グループには面倒に思えたこと
* 第3グループには起こった出来事
この実験を開始して9週間後に調べてみると、'''満足度が最も高かったのは'''、第一グループ、すなわち最近1週間のうちに'''感謝したことを記録しつづけたグループ'''であった。このグループの人々は他のグループに比べて[[健康]]状態も良好であった(でありつづけた)る、という結果が出た<ref name="shiawasewokagakusuru">『幸せを科学する』新曜社 2009</ref>。 
このような手法を'''感謝介入法'''という。
 
;親切介入法
人を2つのグループに分け、それぞれのグループに次のようにさせた。
*片方のグループの人には、誰かに[[親切]]を行なって、かつ、それを記録するように指示する。
*もう片方のグループの人には、特に親切は行わせない。
これを'''親切介入法'''と呼ぶ。
この介入の1ヶ月前と1ヵ月後の幸福感を調査したところ、'''誰かに親切を行い、それを記録したグループのほうが幸福感が高かった'''<ref>『幸せを科学する』新曜社< name="shiawasewokagakusuru" /ref>。
 
「感謝しましょう」「ひとに親切にしましょう」といったことは、古来多くの宗教や道徳などで説かれていることであるが、こうしたことには実は深い道理があり、実際感謝された側の人や親切されたを幸せするだけでなくそれ感謝している当人や親切を行っている当人にも直接的に幸福をもたらしていることが、実証的な科学の方法でも証明されるようになってきているのである。<ref>『幸せを科学する』新曜社< name="shiawasewokagakusuru" /ref>
 
==幸福と法律==