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== 同位体 ==
{{main|鉛の同位体}}
全元素中で最も[[質量数]]の大きい[[安定同位体]]を持つ元素として[[ビスマス]]が挙げられることも多いものの、長らくビスマス唯一の安定同位体だと信じられてきた[[ビスマス209|<sup>209</sup>Bi]]は、実際には安定同位体ではなかったことが確認された。このため、通常、鉛が全元素中で最も質量数の大きい安定同位体を持つ元素として挙げられ、鉛の同位体の1つである<sup>208</sup>Pbが、最も質量数の多い安定同位体と言われている。また、[[ウラン]]や[[トリウム]]などの鉛よりも原子番号の大きな[[放射性元素]]が壊変すると、一般的には最終的には鉛の同位体のうち、<sup>206</sup>Pbか<sup>207</sup>Pbか<sup>208</sup>Pbを生じるとされている。しかし、実は鉛にも安定同位体は1つも存在しないのではないかとも言われ始めている。事実、長らく安定同位体と信じられてきた<sup>204</sup>Pbも、実は安定同位体ではなかった
 
なお、元になった親核種により最終的に生成する鉛の同位体が異なるため([[崩壊系列]]を参照)、鉛の同位体組成は産地ごとに違った特徴を持つ。つまり、ウランやトリウムが集まりやすい場所で産出した鉛は、これらが崩壊した結果生成する同位体を多く含む。これを利用して、出土品や汚染物質の起源を推定することができる。
 
== 性質 ==
比較的錆びやすく、すぐに黒ずむが、酸化とともに表面に[[酸化皮膜]]が形成されるため、[[腐食]]が内部に進みにくい。また、多くの[[無機塩]]が水に不溶であるため水中でも腐蝕されにくい。
 
[[ハロゲン]]および[[カルコゲン]]などと加熱により直接反応して化合物を生成する。希[[塩酸]]および希[[硫酸]]とは表面に難溶性塩を生じて反応しにくいが、[[硝酸]]とは容易に反応する。[[酢酸]]イオンとの親和力が比較的強く、空気([[酸素]])の存在下において酢酸水溶液にも溶解して[[酢酸鉛]]を生成する<ref name=daijiten>『化学大辞典』 共立出版、1993年</ref>。
: 2 Pb + 4 CH<sub>3</sub>COOH + O<sub>2</sub> → 2 Pb(CH<sub>3</sub>COO)<sub>2</sub> + 2 H<sub>2</sub>O
 
また鉛は軟らかい金属であり、紙などに擦り付けると文字が書けるため、[[古代ローマ]]人は[[羊皮紙]]に鉛で線および文字を書き、これが[[鉛筆]] (lead pencil) の名称の起源となった<ref name=nishikawa>西川精一 『新版金属工学入門』 アグネ技術センター、2001年</ref>。
 
低融点で柔らかく加工しやすいこと、高比重であること、比較的[[製錬]]が容易であることなどから、古代から広く利用されてきた。しかし、生物に対して毒性と蓄積性があるために、近年は利用が避けられる傾向が強い。
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[[File:DSC00125 - Tubi di piombo romani - Foto di G. Dall'Orto.jpg|thumb|ローマ帝国の水道管には鉛が使用されていた]]
[[File:Bleigelakku.jpg|thumb|鉛蓄電池([[ジーエス・ユアサコーポレーション]]製)]]
 
鉛の現在の用途は、[[鉛蓄電池]]の[[電極]]、金属の快削性向上のための[[合金]]成分、[[鉛ガラス]](光学[[レンズ]]や[[クリスタルガラス]])、美術工芸品(例えば[[ステンドグラス]]の縁)、防音・制振シート、[[銃弾]]、電子材料([[チタン酸鉛]])などである。また、金属の中では比較的比重が大きいので[[放射線]]遮蔽材として鉛ガラスや鉛シートなどの形で用いられる。例えば核戦争を想定した[[戦車]]の内壁や、X線撮影施設の窓ガラス、[[ブラウン管]]用ガラスには鉛が含まれている。
 
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* 鉛と[[スズ]]の[[合金]]として[[はんだ]]が知られ、低融点などの利点を持つため、古くから金属同士の接合に多用されてきた。電気回路の組み立てなどにもはんだは多用されてきたが、近年では鉛を含まない「[[鉛フリーはんだ]]」に置き換えられつつある。
* [[欧州連合]] (EU) では、[[RoHS]]指令により、2006年7月1日以降、高温溶融はんだなどの例外を除き、電気・電子製品への鉛の使用が原則として禁止された。このため、日本のメーカーでも鉛を含有しない部材の使用を原則としつつあるが、代替ハンダの強度不足・融点上昇の問題に起因する電気製品の製造不良(部品の中には熱に弱い物もあり、融点が上がった分ハンダ付けの際により高温に曝され部品が壊れる)が問題となっている。
* [[ガソリン]]の[[オクタン価]]向上及び吸排気バルブと周辺部品の保護に[[テトラエチル鉛]] (C<sub>2</sub>H<sub>5</sub>)<sub>4</sub>Pb が添加されていたが、排気中に鉛が含まれてしまうことから汚染源となって問題視された。現在では鉛を含まない添加剤によるオクタン価向上策が選択されるようになり、日本など先進諸国では法的規制により[[有鉛ガソリン]]は使われなくなった。しかし日本自動車工業会<ref>[http://release.jama.or.jp/sys/news/detail.pl?item_id=195 社団法人 日本自動車工業会による2002年12月19日発表のニュースリリース]</ref>によると、およそ50か国で有鉛ガソリンの使用が認められており、今なお有鉛ガソリンの問題は終結していない。また、航空機の[[レシプロエンジン]]にも有鉛ガソリン (Avgas) が多用されている。
* 鉛は、[[狩猟]]や[[クレー射撃]]に使われる[[散弾銃|散弾]](多数の小さな金属粒を飛ばすタイプの銃に使われる銃弾。単体の金属弾であるライフル弾やスラッグ弾と比べると、威力は劣るが、高い命中精度を要求されないという利点がある)にも使われてきた。しかし鉛散弾は環境中に鉛の粒をばらまくものであり、土壌汚染を引きこしたり(クレー射撃の場合)、鉛散弾を打ち込まれて死んだ上で放置された動物や鳥の死体を食べた鳥獣が鉛中毒を引き起こすなどしたため(狩猟の場合)、威力は劣るが汚染の少ない鉄、銅散弾への切り替えが進められている。また、自衛隊の射撃場等弾頭部が地中に残りやすい箇所に隣接する河川等で高濃度の鉛の成分が検出される事も多く、近年では廃弾の回収や射場の改修工事などで周辺に鉛による被害が出ないように対策されている事もある。
* 鉛製水道管については、2005年7月時点の[[厚生労働省]]調査で約547万世帯に残っているが、本管から分かれた引き込み管については、水道メーターを除き個人の所有とされていることから交換費用は自己負担となり、交換は進んでいない。
* 安価な鋳造の[[ペンダント]]、[[メダル]]、[[バッジ]]、[[ネックレス]]などの[[装身具|アクセサリー]]には、低融点・低価格であることから鉛を含む[[スズ|]]合金(ホワイトメタルと通称される)が用いられる場合がある<ref>http://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/02/s0216-5.html 鉛含有金属製アクセサリー類等の安全対策に関する検討会報告書について</ref>。また、金属小物のベースに使われる[[黄銅]]には切削性を良くする目的で鉛が添加されているものがある<ref>[http://www.daiomfg.co.jp/products/TECHNIQUE/ROHS/index.html 株式会社大王製作所の「鉛を含む有害物質への取組」より]</ref>。近年、先進国では鉛への規制が強くなり上記のような素材は利用される事が少なくなったが、安価な輸入玩具にはいまだ利用されている場合があり、これらを子供が口に含んだりすることで健康被害が起こる可能性が指摘されている。
* 産業の副産物である[[スラグ]](鉱滓)には鉛を含んでいるものが存在しており、スラグからの溶出する場合がある。そのため、建材試験センターの土工用製鋼スラグ砕石の規格には溶出量と含有量を規定した環境基準が設けられている<ref>[http://www.jtccm.or.jp/library/jtccm/public/mokuji08/kikansi/0811_kikakukijyun.pdf JSTM H 8001(土工用製鋼スラグ砕石)の制定について] 建材試験センター</ref>。