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==概論==
人は[[健康]]に生きるために、[[呼吸]]し、食べて、[[生活]]を営む<ref>『食の安全と安心を守る』p.147</ref>。食をめぐる問題は、生存にとってもっとも基本的な問題{{Sfn|黒川清|2005|p=125}}であり、「食は命である<ref>{{Harvnb|黒川清|2005|p=147}}</ref>」とも表現される。安全でない[[食料]]が流通する社会は人間存在を根底から危うくする<ref>{{Harvnb|黒川清|2005|p=147}}</ref>。1年365日、毎日とる食事に、安全なものを望むのは当然である<ref>{{Harvnb|米虫節夫|2002|p=172}}</ref>。ところが、食の安全に関係する大事件は、過去から現在まで洋の東西を問わず頻繁に発生しており<ref>{{Harvnb|ジョン・ハンフリース|2002|loc=第三章}}</ref>、後を絶たない。
 
食の安全を考える上で欠かすことができないのは、[[食品公害]]を振り返り、その被害と犠牲に思いを馳せ学ぶことである<ref>{{Harvnb|山口英昌|2006|p=6}}</ref>、ともされる。
ところが、食の安全に関係する大事件は、過去から現在まで洋の東西を問わず頻繁に発生しており<ref>{{Harvnb|ジョン・ハンフリース|2002|loc=第三章}}</ref>、後を絶たない。
 
食の安全を考える上で欠かすことができないのは、食品公害を振り返り、その被害と犠牲に思いを馳せ学ぶことである<ref>{{Harvnb|山口英昌|2006|p=6}}</ref>、ともされる。
 
食の安全に関しては、[[生産]]・[[流通]]・[[消費]]のどの一つがつまづいても深刻な事態となりうる{{Sfn|黒川清|2005|p=125}}のであり、生産者、流通業者、生活者のすべてを巻き込んだ問題となっている<ref>{{Harvnb|黒川清|2005|p=138}}</ref>。
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食の安全の確保のために必要な仕組み・取り組み方としては、事故後の後処理を行うだけではなく、[[有毒物質]]の[[評価]]・管理等といった、食の安全に影響を与える要因について事前にリスク管理を行うことが重要だということが、国際的な共通認識となっている<ref name="h18syokuryohakusyo">『第2節 安全な食料の安定供給と消費者の信頼確保』平成18年度食料・農業・農村白書([[農林水産省]])</ref>、ともされる。
 
==食品の安全による危害と健康被害事故==
食品に危険なものが入っていれば健康に重大な危害が出る<ref name="Komemushi-p3">{{Harvnb|米虫節夫|2002|p=3}}</ref>。我々は毎日食べる[[食事]]([[食品]])に関心を持ち、十分に注意をはらわなければならない<ref name="Komemushi-p3">{{Harvnb|米虫節夫|2002|p=3}}</ref>。
 
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# 長期的危害:[[環境ホルモン]]などの影響による健康被害
 
===食品事故の恐ろしさ・食中毒===
食品は口から入り、食道・胃・十二指腸を通り小腸・大腸で消化吸収されるので、毒物や微生物など危険なものが入っていると、人体にその影響は直接に出てくる<ref>{{Harvnb|米虫節夫|2002|p=6}}</ref>。
急性のものであれば、一部は、口に入れた時に即時吐き出したり、嘔吐や下痢となって吐き出されることもある。細菌性の食中毒では潜伏期間があり、数時間から数日後に発症する。だが、慢性のものでは徐々に身体に影響(健康被害)が出てくることがある。
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# 自然の毒によるもの([[毒きのこ]] や ふぐ毒など)
 
==食の安全にかかわる食環境==
健康的で安全な食生活を送るためには、健全な食をめぐる環境(食環境)が欠かせない<ref name="Yamaguchi-p1">{{Harvnb|山口英昌|2006|p=1}}</ref>。食の安全にかかわる環境は自然環境だけではない。作物や家畜や魚が栽培・採取・飼育・捕獲され、加工・運搬・調理されて、食卓に上がるまでのプロセスが食環境と定義されるべきである<ref name="Yamaguchi-p1" />。また、行政組織や規格や国際関係なども食環境とされている<ref name="Yamaguchi-p1" />。
 
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|}
 
=== 食生活 ===
== 安全と安心の関係 ==
[[ファーストフード]]や[[ジャンクフード]]の問題については先進国をはじめ各国で問題視されている。また、[[コレステロール]]の過剰摂取、[[トランス脂肪酸]]の問題、また[[加工食品]]における[[食品添加物]]の問題についてもこれまでに様々な指摘や研究があり、報道もなされている。
 
==== 日本人の食生活 ====
人に必要なエネルギーは食品中の[[蛋白質]](Protein)、[[脂肪]](Fat)、[[炭水化物]](Carbohydrate)の3大栄養素によって供給されている。3大栄養素の頭文字P、F、Cをとり、各エネルギーの比をPFCエネルギー比と言い、適正比率はP:12~13%、F:20~30%、C:57~68%といわれているが、日本人の食生活は現在のところ、ほぼこの適正比率の範囲に入っており、世界一長寿の秘訣なのかも知れないと考えられている<ref>{{Harvnb|石田英雄|2005|p=25}}</ref>。ただし、日本でも最近欧米型の食生活に近づいており、肉食が増えているのが懸念されてもいる<ref>{{Harvnb|石田英雄|2005|p=26}}</ref>。欧米では肉食中心で、脂肪(Fat)比率が非常に高く、PFCエネルギーバランスが悪く、肥満や心臓病が多いのである。また、[[動脈硬化]]<ref>動脈硬化を含む心疾患や脳血管疾患による死亡を合計すると、日本人の死因の約3割を占め、ほぼ癌と同数。({{Harvnb|石田英雄|2005|p=31}})</ref>の増加につながっているとも考えられている。
 
石田英雄は、これ以上洋食に傾かないように気をつけたいと語っている<ref>{{Harvnb|石田英雄|2005|p=26}}</ref>。
 
==== 生活習慣病 ====
[[生活習慣病]]の中で最も恐ろしいのは[[癌]]であるが、医学的な疫学調査によると、食事の影響が35%、タバコの影響が30%、職業の影響が4%、飲酒の影響が3%などとなっており、食事の影響が一番大きい<ref>{{Harvnb|石田英雄|2005|p=29}}</ref>。例えば塩分の摂り過ぎは胃癌の原因ともなっており、かつて日本人に胃癌が多かったのはそのためであった。近年になって日本人に大腸癌や乳癌が増えてきた原因のひとつには、食生活の欧米化による動物性脂肪の摂取の増加と食物繊維の摂取不足が指摘されている。大腸での便の停滞時間が長くなって発癌物質が大腸粘膜と長時間接するため大腸癌が多くなったと考えられているのである<ref>{{Harvnb|石田英雄|2005|p=29}}</ref>。
 
== 安全と安心 ==
=== 食の安心 ===
「食の安全」という表現とともに、日本国内では「食の安心」という言葉も用いられている。《安全》と《安心》の違いが学術的に明確に定義されているわけではないが、およそ以下のように言える、ともされる<ref name="Kurokawa-p11">{{Harvnb|黒川清|2005|p=11}}</ref>。
 
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:安心:心配・[[不安]]がない[[主体]]的・主観的な心の状態<ref name="Kurokawa-p11" /> <br>
 
このように定義されると、自然科学系の人間などは、つい《安心》を軽視してしまう傾向があるが、そのような態度・判断は間違っている<ref>{{Harvnb|黒川清|2005|p=34}}</ref>。《安心》の問題が重要視されるのは、個々の人々は社会サービスに依存して暮らさざるをえ問題い状態にあり、状態を自分でコントロールすることができず、全体状況を知ることも困難ためである。一連の[[不祥事]]によって不安が発生している。<ref name="Kurokawa-p11" />
 
《安心》の問題が重要視されるのは、個々の人々は社会サービスに依存して暮らさざるをえない状態にあり、状態を自分でコントロールすることができず、全体状況を知ることも困難なためである。一連の[[不祥事]]によって不安が発生している。<ref name="Kurokawa-p11" />
人々の安心を得るためには、システムが安全でなければならないことは言うまでもないが、それだけでは十分ではなく、[[ステークホルダー|関係者]]からシステムが[[安全]]である、との[[信頼]]が得られていなければならない。《安心》とは安全についての信頼感である。
 
=== 品質保証 ===
安全と安心の関係については、[[ISO]]([[国際標準化機構]])における定義・考え方が参考になる。
安全と安心の関係については、[[ISO]]([[国際標準化機構]])における定義・考え方が参考になる。ISO8402(1984年)においては「[[品質保証]]」の定義は以下のように与えられた。
 
{{Quotation|[[品質保証]]とは、[[品質]]が確保されているという[[信頼|信頼感]]を購入者に与えるための計画的・体系的な活動である。}}
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[[ISO9000]](1987年~)においては、《安心》とは、安全の保証である。「安全保証」とは、関係者にそれが安全であることについて十分な信頼感を与えるための計画的・体系的な活動、と言える<ref>{{Harvnb|黒川清|2005|p=12}}</ref>。
<!--「{{要出典範囲|安心を保証する根拠は明示できないので、「食の安心」という言葉は極めて曖昧である」と主張する者がいた{{誰|date=2011-5}}{{いつ|date=2011-5}}。-->
 
== 放射能と食の安全 ==
===ベラルーシ===
[[ベラルーシ]]という国は[[チェルノブイリ原子力発電所事故]]によって国土が放射性物質を含んだ雲に襲われ現在でも国土の23%が放射能汚染地帯となっている<ref name="nhk_ishikawa">NHK解説委員石川一洋による解説 「食の安全・ベラルーシから学ぶこと」2011年11月7日1:05~1:55の「スタジオパークからこんにちは」の枠内で放送。概要は[http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/200/100539.html 解説委員室 解説アーカイブス]でも検証可能。</ref>。その汚染レベルは日本の[[福島第一原子力発電所事故]]で設定された警戒区域から計画避難区域とほぼ同等である<ref name="nhk_ishikawa" />。チェルノブイリ事故では住民に様々な健康被害が出た<ref>実放送内で写真つきで言及。</ref>。ベラルーシでは、チェルノブイリ原発事故から25年の間に、放射能が関連する食の安全確保について様々な体制や制度が構築された<ref name="nhk_ishikawa" />。それは次の3つを柱とするものである<ref name="nhk_ishikawa" />。
{{Quotation|
* 食品に対する何段階におよぶ検査体制<ref name="nhk_ishikawa" />
* 食品に含まれる[[放射性物質]]に関する厳しい基準<ref name="nhk_ishikawa" />
* 安全な食品を作るための、生産者に対する技術面・財政面での支援<ref name="nhk_ishikawa" />
}}
ベラルーシでは[[生産]]・[[流通]]・[[販売]]、それぞれの現場で放射性物質の測定が常に行われている<ref name="nhk_ishikawa" />。食品検査場(室)はベラルーシの全国860か所に設置されており、全国で年間1100万回検査(調査)されている。食品を買った一般消費者(買い手)が、自分が買った食品をこうした(食品市場・マーケットなどに併設されている)検査室に持ち込んで検査することもでき、しかも検査は無料で、消費者自身が自分の眼で安全を確かめることもできる<ref name="nhk_ishikawa" />(自分の眼で計器の数値を見ることもでき、安心できる)。
 
一例を挙げると、(ベラルーシでは人々が日常的に買い物をするのは食糧品市場で、それは日本の[[スーパーマーケット]]におおよそ当たるわけであるが)食糧品[[市場]]でも、国が定めた基準値以下であるという証明書が無いと食品を販売してはいけない、と定められている。検査が具体的にどのように行われているか解説するために、食品をひとつ挙げその検査法を紹介するために木の実の例を挙げる。ベラルーシの人々は(ちょうど日本人と同じように)[[木の実]]や[[キノコ]]などの森の幸も栄養源・食材としているが、それらにも常にしっかりと検査が行われている<ref name="nhk_ishikawa" />。検査方法としては、まず(測定に恣意性が入り込まないように)食品が入っている各箱の外部から放射線測定を行いそれぞれ放射線レベルがほぼ同じであることを確かめ、箱の中のさまざまな部分から無作為に実を選び、重量を量り、[[放射線測定器]]にかけている<ref name="nhk_ishikawa" />。市場は基本的に検査装置や検査室を備えているのである<ref>実放送内で言及</ref>。この検査の場合でも、検査に要する時間はおよそ10分で済む<ref name="nhk_ishikawa" />。
 
基準値については、1992年・1996年・1999年と次第に厳しい値に設定してきており、2011年現在は1999年に定められたものが用いられており、それは次のようなものである<ref name="nhk_ishikawa" />。
例えば[[放射性セシウム]]に関しては
{{Quotation|
* [[飲料水]]: '''10[[ベクレル|Bq]]/[[リットル|L]]'''<ref name="nhk_ishikawa" />
* [[牛乳]]および[[乳製品]]: '''100Bq/L(100Bq/kg)'''<ref name="nhk_ishikawa" />
* [[牛肉]]([[牛]]の肉)、[[羊肉]]([[羊]]の肉)、およびその加工品 : '''500Bq/kg'''<ref name="nhk_ishikawa" />
* [[豚肉|豚]]、[[鶏肉|鶏]]、およびその加工品 : '''180Bq/kg'''<ref name="nhk_ishikawa" />
* [[野菜]] :'''100Bq/kg'''<ref name="nhk_ishikawa" />
** ただし[[ジャガイモ]]は '''80Bq/kg'''<ref name="nhk_ishikawa" />
* [[果物]] : '''40Bq/kg'''<ref name="nhk_ishikawa" />
}}
※「Bq」は[[ベクレル]]という単位である。
 
次第に基準値を厳したが、基準値を超えてしまう汚染食品の数は減ってきており、それは検査結果をもとにしたベラルーシの生産現場の努力・対策のおかげであり<ref name="nhk_ishikawa" />、悪い値が出たら、生産過程のどこが悪かったのか原因を究明したり、汚染程度の大きい土地ではその影響の出にくい作物を選んで植えるなどの対策をとっているのである<ref name="nhk_ishikawa" />。
 
現場で常にまめに測定できるように、ベラルーシでは簡易な放射線測定器がこの25年の間に開発されてきた歴史があり、日本に比べるとはるかに安価で販売されている。そして政府の予算<ref>補助金等</ref>も使って、市場、生産組合、学校などが購入している<ref name="nhk_ishikawa" />。検査員の数を確保するために、もともと他に仕事を持っている人々でも国の定めた一定の研修を受けることで放射性物質の測定を行う実際的・実践的な体制にして、細やかで速い検査体制を実現しているのである<ref name="nhk_ishikawa" />。
 
では、なぜベラルーシでは汚染地域での居住やそこで採れる食品の流通を一律禁止にせず厳格な検査体制を確立することになったのか? というと、国土に対する放射能汚染地域の面積割合が高かったこと(ロシアよりもむしろ高かったこと)、ベラルーシの農業を支えていた肝心の地域(南部)が放射能汚染されてしまったこと、などの理由があり、ベラルーシとしてはこの汚染地域をまるまる全て放棄してしまうわけにはいかず、しかたなく、汚染された土地の中でどのように安全に暮らすのか、真剣に向き合わざるを得なくなった、という<ref name="nhk_ishikawa" />。
 
===ウクライナ===
[[ウクライナ]]でも、甚大な原発事故の経験としては、1986年に旧ソ連で起きたチェルノブイリ原発事故がある。同事故の影響で、'''[[内部被曝]]'''により病気が多発しているという、この貴重な経験を生かすことが必要である。「チェルノブイリ救援・中部」の[[河田昌東]]理事は20年以上にわたり救援活動を行ってきたが、事故後10年経った1997年に内部被曝を踏まえて見直したウクライナの食品基準にならい日本の[[暫定規制値]]も見直すべきである、と提案している<ref>(出典)河田昌東「チェルノブイリからみた福島原発震災」『土と健康』No.427</ref><ref>(出典)*現代用語の基礎知識2012年版</ref>。以下にその暫定規制値を示す。
 
;ウクライナの食品基準(食品中に含まれる[[放射性セシウム]]の基準)
{{Quotation|
*[[飲料水]] : '''2ベクレル'''
*[[パン]] : '''20ベクレル'''
*ジャガイモ : '''60ベクレル'''
*野菜 : '''40ベクレル'''
*果物 : '''70ベクレル'''
*肉類 : '''200ベクレル'''
*[[魚]] : '''150ベクレル'''
*[[ミルク]]・[[乳製品]] : '''100ベクレル'''
*[[卵]](1個) : '''6ベクレル'''
*[[粉ミルク]] : '''500ベクレル'''
}}
※ ウクライナは内部被曝を重視して1997年に基準を改定している。
 
=== 日本 ===
==== チェルノブイリ原子力発電所事故後の対応 ====
 
1986年の[[チェルノブイリ原子力発電所事故]]を受け、日本では同年に[[輸入]]食品中の[[放射能]]の[[暫定規制値|暫定限度]]を定め<ref name="09-01-04-07">[http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_Key=09-01-04-07 輸入食品中の放射能の濃度限度]</ref>、食品中のセシウム134と 137由来の放射能濃度は370Bq/kg以下とした。
 
===== 日本の輸入停止事例 =====
 
日本が過去に基準値を超えたとして1989年(平成元年)以降、税関にて発見され積み戻しを指示した食品と、日本国内で検出された植物の放射線量の比較一覧を挙げる。なお、1988年までにも、39件合計約160トンの農産物が暫定限度を超えたため、税関にて積戻しを指示されている <ref name=korosho>[http://www.mhlw.go.jp/houdou/0111/h1108-2.html 厚生労働省 放射能暫定限度を超える輸入食品の発見について(第34報)(別紙)暫定限度(放射能濃度)を超えた輸入食品一覧]</ref> 。
 
{|class="wikitable"
|+日本が過去に基準値(370 Bq/kg)を超えたとして輸入停止した食品<ref name=korosho />
! 発表日・測定日時 || 品種 || 地域・国 || 測定値(Bq/kg)
|-
|1989年1月11日 || きのこ(くろらっぱたけ) || フランス|| 650
|-
|1989年1月23日 || 乾燥ぜんまい || ソビエト || 655
|-
|1989年4月10日 || 乾燥ぜんまい || ソビエト || 379
|-
|1989年10月23日 || きのこ(あんずたけ) || フランス || 532
|-
|1990年2月28日 || ハーブ茶(ダンデリオン) || スイス || 1,167
|-
|1990年10月3日 || ハーブ茶(セイヨウノコギリ草) || アルバニア || 814
|-
|1991年2月14日 || 乾燥きのこ(ヤマドリタケ) || ユーゴスラビア || 556
|-
|1991年3月13日 || ミックススパイス || フランス || 1,028
|-
|1994年11月8日 || 燻製トナカイ肉 || フィンランド || 388
|-
|1998年1月21日 || 乾燥ポルチーニ(ヤマドリダケ) || イタリア || 731
|-
|2001年11月8日 || 乾燥ポルチーニ(ヤマドリダケ) || イタリア || 418
|-
|}
 
==== 福島第一原子力発電所事故後の対応 ====
{{main|福島第一原子力発電所事故の影響#食品中の放射性物質に対する規制}}
 
[[福島第一原子力発電所事故]]以降、2012年3月末まで暫定規制値を通知に基づき食品衛生法の規制対象として準用してきたが<ref name="tuuti0317-3">{{Cite web |url=http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001558e-img/2r9852000001559v.pdf |title=食安発0317第3号 平成23年3月17日 厚生労働省医薬食品局食品安全部長 放射能汚染された食品の取り扱いについて |publisher=厚生労働省 |format=PDF |date=2011-03-17 |accessdate=2012-05-07}}</ref>、食品衛生法の下位法令にあたる[[乳及び乳製品の成分規格等に関する省令]]および[[食品、添加物等の規格基準]]が改正され<ref>{{Cite web |url=http://wwwhourei.mhlw.go.jp/hourei/doc/hourei/H120319I0030.pdf |title=厚生労働省告示第百二十九号 平成二十四年三月十五日 |publisher=厚生労働省 |format=PDF |date=2012-03-15 |accessdate=2012-05-10}}</ref><ref>{{Cite web |url=http://wwwhourei.mhlw.go.jp/hourei/doc/hourei/H120319I0040.pdf |title=厚生労働省告示第百三十号 平成二十四年三月十五日 |publisher=厚生労働省 |format=PDF |date=2012-03-15 |accessdate=2012-05-10}}</ref>、[[乳及び乳製品の成分規格等に関する省令]]に基づきセシウム134およびセシウム137を規制の対象とする[[省令]]が新たに整備されたことにより<ref>{{Cite web |url=http://wwwhourei.mhlw.go.jp/hourei/doc/hourei/H120319I0020.pdf |title=厚生労働省令第三十一号 平成二十四年三月十五日 |publisher=厚生労働省 |format=PDF |date=2012-03-15 |accessdate=2012-05-10}}</ref>、2012年4月1日から食品中の放射性物質に対する規制が法的に食品衛生法の下に行われることとなった。
 
*'''規制の具体的な数値基準および詳細ならびに経緯は[[福島第一原子力発電所事故の影響#食品中の放射性物質に対する規制と経緯|福島第一原子力発電所事故の影響]]の項を参照されたい。'''
 
 
===== 事故後の食の安全に関する識者の見解 =====
 
日本の[[福島第一原子力発電所事故]]の放射線汚染に関する食の安全確保、ということに眼を向けるならば、日本の場合、チェルノブイリやベラルーシの先例・経験があるので、(人類が未経験という)知識ゼロの状態から組み立てるというような困難は無いのであり、チェルノブイリやベラルーシでの経験の蓄積から学べばよいのであり、また、ベラルーシは経済的には日本よりもはるかに弱者であるが、そういった国ですらしっかりと安全確保体制を実現できたのであるから、日本でも彼らの経験をとりいれてそこに日本の技術を組み合わせれば、日本には日本にあった放射能対策が必ずできるはず、といった内容のことをNHK解説委員の石川一洋は2011年11月に解説した<ref name="nhk_ishikawa" />。
 
なお、ベラルーシは[[地産地消]](地元の食糧をその土地で食べること)の割合が多く、また国民が自分の別荘地で自ら食料を栽培しているのに対し、日本の場合は[[加工食品]]の流通割合が多いので、どこで検査するのか、どこを抑えればよいのか、という点では異なるシステムが必要でしょう、といったことを同NHK解説委員は指摘した<ref name="nhk_ishikawa" />。
 
=== 米国 ===
 
米国では飲料水の最大汚染基準<ref>{{Cite web
| url = http://water.epa.gov/drink/contaminants/index.cfm
| title = Drinking Water Contaminants
| publisher = United State Environment Protection Agency
| data = HTML
| date = 2004
| accessdate = 2011-04-15}}</ref>として、[[ベータ粒子|ベータ線]]および[[ガンマ線]]の摂取量を年間4m[[レム]](すなわち40マイクロ[[シーベルト]])以下とするよう定めている。放射性[[ヨウ素]]、および放射性[[セシウム]]はこれに該当する。
 
1986年の[[チェルノブイリ原子力発電所事故]]当時の食品中の放射性物質に対する暫定限度は370Bq/kgであった<ref name="09-01-04-07"/>。
 
=== EU ===
 
1986年の[[チェルノブイリ原子力発電所事故]]当時の[[欧州共同体|EC(現EU)]]では乳幼児食品で370Bq/kg以下、一般食品で600Bq/kg以下であった<ref name="09-01-04-07"/>。
 
== 歴史 ==
=== 前史 ===
食の安全に関する古い記述としては[[古代ローマ]]時代のものがある。それによると、古代ローマにおいて、「ワインの味がおかしい」と苦情を述べる市民たちの人数が増えた時に、調査官にその問題を調べさせた。するとワイン製造者らがワインを(正規の原料だけでなく)アロエや他の薬を使って人工的に熟成させていたことが明るみに出た。また、(古代)ローマのパン屋が、パンに「白い土」と当時呼ばれた[[炭酸塩]]や[[酸化マグネシウム]]を混ぜたことが発覚し告発された、という記録も残っている<ref>{{Harvnb|ジョン・ハンフリース|2002|p=53}}</ref>。
 
イギリスにおいては中世の時代まで、社会が農業を中心として成り立っており、人々のほとんどが小さな村で暮らしていたので互いに知り合いであり、食物に混ぜ物をされる危険はほとんどなく、食品は、まずまず健康的で安全だった。ところが[[産業革命]]が始まって、人々が農村から街に移り住むようになるとともに、インチキな食品が横行するようになった。ひとたび大きな街ができると、金儲けの為なら[[道徳]]や[[倫理]]のことを何とも思わないような食品製造業者や商人が集まってきたのである<ref>{{Harvnb|ジョン・ハンフリース|2002|pp=53-54}}</ref>。
 
=== 19世紀の食の安全問題 ===
[[1819年]]には100人以上の[[醸造業|醸造業者]]やその関係者が、[[黒ビール]]の材料として、正規の麦芽やホップでなく、様々な代用物を混入した罪で有罪の判決を受けた。<ref name="John-p54">{{Harvnb|ジョン・ハンフリース|2002|p=54}}</ref>
 
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[[1850年]]ころ、イギリスの医師で、医学専門誌の編集者でもあり、検視官でもあるトーマス・ワクリーは、その仕事柄、数多くの人々が粗悪食品製造業者のせいで死んだり苦しんだりするのを目の当たりにしていた。ワクリーはこの問題に関して徹底的な調査を行うことを要求した。すると、アーサー・ハスル博士(ロンドンのロイヤル・フリー・ホスピタルの内科医兼講師)がその調査を担当することになった。この調査のために2400件の試験が行われた。これほどまで多品種の食品について、かつ厳密なやり方で系統だった試験が行われたのはおそらく世界で初である。その試験の結果明らかになったのは、当時のイギリスでは「基本食品を正常な状態で買うことは、ほぼ不可能」という結論だった。そして、その調査によって明らかになった粗悪品の製造や取引にかかわった製造業者や商人たちの名は公表されることになった。<ref>{{Harvnb|ジョン・ハンフリース|2002|pp=55-56}}</ref>
 
こうなってくると次第にイギリス議会もこの問題(食の安全問題)に注目しはじめ、議会内に複数の委員会が発足した。[[1855年|1855]]~[[1886年|56年]]ごろに、医師、化学者、製造業者、商人などが、(議会で)議員らの前で証言を行った。もっとも、当時のイギリスの政治も(他国、他の時代同様に)腐敗しており、議員らは後援者から献金を受け取ると、後援者にとって都合の悪い法案はことごとく廃案にしつづけていたものだった。だが、食品関連の問題に関しては(幸いにして)そうはならずに済み、1860年に「'''食物及び薬剤粗悪化防止法'''」が成立した。それ以後、悪質な製造業者や商人から大衆(消費者)を守る法律がいくつも制定されてゆくことになった。大衆が初めて「鍋の中の死」から法律によって守られるようになったのである。そしてその後、今にいたるまで悪徳業者との闘いは続いている。<ref>{{Harvnb|ジョン・ハンフリース|2002|p=56}}</ref>
 
 
== 米国 ==
== 米国における問題と対応 ==
食品の工業製品化により、加工業者の安全意識の欠如といった問題が発生している<ref name="economist"/>。
 
他には、病原細菌汚染の摘発が多く、次いで重金属汚染が多い。これは、家畜等の屎尿の未処理や工業による土壌汚染によるもので、環境汚染と食の安全は密接に繋がっていることを示している<ref name="economist"/>。
 
=== :米国の輸出入食品に対する対応等 ===
2007年には[[中国産食品の安全性|中国から輸入する食品の安全性]]が新聞で取り上げられたが、そもそも輸入食品が増加する中で、検査機関の人数が少なく、体制の不備が指摘されている。[[食品医薬品局]](FDA)の検査員は、全米で700人しかおらず、以前と比べて人数が減少している。輸入食品全体に対する検査数の割合は、10年前の8.0%→0.6%まで低下している<ref name="economist"/>。
 
輸出食品については、残留農薬の問題が指摘されている([[ポストハーベスト農薬]]も参照)。
 
== EUの対応 ==
2000年代に入り、[[欧州連合|EU]]は生産現場から食卓に到るまで、一貫した食品安全システムの構築を目指している。生産・流通業者に対しては安全性に関する規制を設け、規制を守ることを義務づけるとともに、EUも監視する体制を取っている<ref name="economist"/>。
 
域内の安全性については、病原細菌汚染の摘発が多く、次いで重金属汚染が多い。米国同様、環境汚染による影響である<ref name="economist"/>。
 
=== ;EUの輸出入食品に対する対応等 ===
EU領域外から輸入される食品に対しても、EU内と同様の体制を求めているが、EU勧告を満たしている国は無い<ref name="economist"/>。
 
== 中国における問題と対応 ==
[[中国産食品の安全性]]参照のこと。
 
== 日本における問題と対応 ==
=== 歴史 ===
==== 公害 ====
1945年頃、富山県[[神通川]]流域で、'''[[イタイイタイ病]]'''が発生した。神通川上流にある三井金属神岡工業所が川に流した金属廃液にカドミウムが含まれており、下流域の田畑を汚染、そこで収穫された作物や飲み水を利用した人々の骨がゆがんだり、ひびが入ったりした。([[神通川]]流域では1998年にもカドミウム腎症が多発した、という)<ref>{{Harvnb|石田英雄|2005|p=133}}</ref>
 
また、同1945年に主婦らが「おしゃもじ運動」を起こすなどして消費者運動が始まった。
1951年(昭和26年)、'''[[黄変米事件]]'''が発生<ref>{{Harvnb|黒川清|2005|p=60}}</ref>。
 
1951年(昭和26年)、'''[[黄変米事件]]'''が発生<ref>{{Harvnb|黒川清|2005|p=60}}</ref>。1955年6月(昭和30年)'''[[森永ヒ素ミルク事件]]'''が発生。森永乳業で製造された粉ミルクに多量のヒ素が含まれていた。死者131名。患者数12,159名(昭和31年2月時点)<ref name="Komemushi-p6-9">{{Harvnb|米虫節夫|2002|pp=6-9}}</ref>。
 
1956年5月(昭和31年)熊本県で'''[[水俣病]]'''が発生。チッソ水俣工場の排水により汚染された水俣湾の魚介類を食べた住民に食中毒被害が生じた。死者157名、患者968名(昭和51年4月時点)<ref name="Komemushi-p6-9">{{Harvnb|米虫節夫|2002|pp=6-9}}</ref>。
 
1965年6月(昭和40年)、新潟県で'''[[第二水俣病]]'''(新潟水俣病)が発生。昭和電工鹿瀬工場の排水に、[[アセトアルデヒド]]合成を行う際の有機水銀が含まれており、それによって汚染された川魚を食べた人々に被害が生じた。死者33名、患者数625名(昭和51年3月時点)<ref name="Komemushi-p6-9">{{Harvnb|米虫節夫|2002|pp=6-9}}</ref>。
 
1968年3月(昭和43年)'''[[カネミ油症事件]]'''が発生。死者28名、患者数1,283名<ref name="Komemushi-p6-9">{{Harvnb|米虫節夫|2002|pp=6-9}}</ref>。
 
==== 産業優先から消費者優先へ ====
1960年頃の高度経済成長の時期になると様々な消費者問題が起き、1968年に「[[消費者保護基本法]]」が制定され、ようやく産業優先の考え方から消費者優先の原則へと移行し、消費者保護の基本的方向が示されることとなった<ref>{{Harvnb|石田英雄|2005|pp=15-16}}</ref>。また、1970年には[[消費生活センター]]が開設された。当時、消費者の最大の関心事は食品の安全性であった。当時、牛乳の[[BHC]]汚染、発がん性が問題となった[[フリルフラマイド]](AF2)や[[チクロ]]などの[[食品添加物]]、魚の[[水銀]]汚染などの問題が発生していた。
1970年~79年までに寄せられた相談の件数でも食料品の相談が1位を占めている<ref>{{Harvnb|石田英雄|2005|p=22}}</ref>。[[食品添加物]]や[[健康食品]]などに関する相談が多かった。
 
昭和60年代(1985年~)になると、消費生活が多様化・複雑化し、消費生活センターへの相談としては、住居品、教養娯楽品、保健衛生品などの相談件数が増加し、食料品の問い合わせ件数は3位になった。ただし、食料品の相談件数はほぼ横ばいで、減ったわけではなく、他の問い合わせが増えた<ref name="Ishida-p22-23">{{Harvnb|石田英雄|2005|pp=22-23}}</ref>。
 
 
1990年、埼玉県浦和市の幼稚園で[[O157]]食中毒事件が発生。死者2名、患者268名<ref>{{Harvnb|米虫節夫|2002|p=29}}</ref>。
287 ⟶ 189行目:
1998年7月(平成10年)和歌山県のある地区での夏祭りに出されたカレーに毒物が混入され死者が出る事件('''[[和歌山毒物カレー事件]]''')が発生。死者4名、患者67名<ref name="Komemushi-p6-9">{{Harvnb|米虫節夫|2002|pp=6-9}}</ref>。
 
==== JAS法改正 ====
2000年7月、雪印乳業の大阪工場で生産された低脂肪乳によって食中毒('''[[雪印集団食中毒事件]]''')が発生。死者1名、患者数14,849名<ref name="Komemushi-p6-9">{{Harvnb|米虫節夫|2002|pp=6-9}}</ref>。
 
2000年7月、「[[農林物質の規格化及び品質表示の適正化に関する法律の一部を改正する法律]]」(通称、'''改正JAS法''')が成立(2001年4月1日施行)。内容としては食品の表示について次の改良点を含んでいた。
*(1)全ての飲食料品に品質表示を義務化。全ての生鮮食品に[[原産地]]表示を義務化<ref>注. 同法以前は、生鮮食品のうち、9品目の青果物にしか原産地表示の義務はなかった。</ref>。
*(2)[[有機食品]]の第三者認証制度の導入。(第三者が認証したものしか「有機」と表示してはならないことになった。) 
*(3)[[遺伝子組み換え食品]]の表示の義務化。<ref>『やさしい 食の安全』p.68</ref>2001年4月1日、改正JAS法施行。
 
JAS法改正されによって、すべての生鮮食品に原産地表示が義務づけられた後も[[偽装表示]]が後を絶たず、輸入肉を「鹿児島産」と表示するものや、輸入肉を8割も混入している[[ロースハム]]やベーコンを「国産」と表示するもの等々が後を絶たなかった<ref>{{Harvnb|石田英雄|2005|p=24}}</ref>。そのため、消費者は食品表示を信頼することができなくなったともいわれる<ref>{{Harvnb|石田英雄|2005|p=24}}</ref>。
2001年4月1日、上記の「改正JAS法」施行。
 
==== BSE(狂牛病)事件 ====
2001年(平成14年)9月、日本でも'''[[BSE]]'''('''[[牛海綿状脳症]]''')が確認された。10月、肉骨粉の製造・出荷・輸入が停止され、在庫分は焼却処分する方針が日本政府によって打ち出された。政府はまた屠殺牛の全頭検査の対策をとった。
{{Main|BSE問題}}
2001年(平成14年)9月、日本でも'''[[BSE]]'''('''[[牛海綿状脳症]]'''、'''[[狂牛病]]''')が確認された。10月、肉骨粉の製造・出荷・輸入が停止され、在庫分は焼却処分する方針が日本政府によって打ち出された。政府はまた屠殺牛の全頭検査の対策をとった。消費者の多くは狂牛病はヨーロッパでの出来事で、日本では発生するとは思われていなかったので、非常なショックを憶えた<ref>{{Harvnb|石田英雄|2005|p=24}}</ref>。
 
==== 牛肉偽装事件 ====
2002年、日本政府の牛海綿状脳症対策の「国産牛肉買い上げ制度」を悪用し、輸入肉を国産と偽装し助成金を詐取する詐欺事件が相次いで発覚した('''[[牛肉偽装事件]]''')。1月、[[雪印食品]]関西ミートセンターで偽装牛肉事件が発覚、その後の調査で関東ミートセンターや雪印食品本社のミート営業調達部でも同様の偽装が見つかった。詐欺容疑で一斉捜索を受け、その後は雪印食品は解散に追い込まれることになった(偽装と判明した量は約30トン)。6月、福岡市に本社を置く食肉加工会社が、輸入スジ肉を国産肉に偽装し、制度を悪用して不正な利益を得ようとしていたことが発覚した(偽装と判明した量は120トン余り)。8月、'''[[日本ハム]]'''(株)の牛肉偽装が[[内部告発]]によって発覚した。同社は、売上高が75%減少した。<ref>{{Harvnb|石田英雄|2005|p=196}}</ref>
 
同2002年、'''BSE問題に関する調査検討委員会'''が報告書を提出<ref>{{Harvnb|黒川清|2005|p=22}}</ref>。
 
==== 食品安全基本法の制定 ====
2003年5月、'''[[食品安全基本法]]'''が制定された。
 
330 ⟶ 240行目:
 
=== 消費者側の対応 ===
[[消費者]]は国民経済における最大の集団であるにもかかわらず、組織化されていなかったため、事業者に対して発言する力を持たず、意見も聞いてもらえず無視されるというような弱い立場に長らく立たされていた<ref name="Ishida-p15">{{Harvnb|石田英雄|2005|p=15}}</ref>。企業が製造した商品の欠陥により消費者に被害が発生しても、消費者側から損害賠償を申し立てることは実際上非常に困難であった<ref name="Ishida-p15">{{Harvnb|石田英雄|2005|p=15}}</ref>。しかし、1960年代に[[公害]]問題などを背景に食品の安全性への意識が高まり、政府も産業優先から消費者優先へと政策の基本方針を変更していくようになった([[#歴史]]参照)
 
消費者の健康に対する関心は高く、[[消費生活センター]]に寄せられる食品成分の問い合わせとしては、味噌汁の塩分や清涼飲料水の糖分やカルシウム、ビタミン、食物繊維、オリゴ糖、DHAなどについてのものが多い<ref name="Ishida-p22-23">{{Harvnb|石田英雄|2005|pp=22-23}}</ref>。
日本でも第二次世界大戦後の1945年に主婦らが「おしゃもじ運動」を起こすなどして消費者運動が始まった。1960年頃の高度経済成長の時期になると様々な消費者問題が起き、その後「[[消費者保護基本法]]」が制定され、ようやく産業優先の考え方から消費者優先の原則へと移行し、消費者保護の基本的方向が示されることとなったのである<ref>{{Harvnb|石田英雄|2005|pp=15-16}}</ref>。
 
2007年に[[偽装表示]]の問題が相次いだ結果、価格よりも原材料等の表示を注視するようになったとも報道されている<ref>『食品偽装の余波ジワリ 買い物客、原産地や表示じっくり』2007年11月20日付配信 [[産経新聞]]</ref>。
1970年に[[消費生活センター]]が開設された当時、消費者の最大の関心事は食品の安全性であった。当時、牛乳の[[BHC]]汚染、発がん性が問題となった[[フリルフラマイド]](AF2)や[[チクロ]]などの[[食品添加物]]、魚の[[水銀]]汚染などの問題が発生していた。
1970年~79年までに寄せられた相談の件数でも食料品の相談が1位を占めている<ref>{{Harvnb|石田英雄|2005|p=22}}</ref>。[[食品添加物]]や[[健康食品]]などに関する相談が多かった。
 
昭和60年代(1985年~)になると、消費生活が多様化・複雑化し、消費生活センターへの相談としては、住居品、教養娯楽品、保健衛生品などの相談件数が増加し、食料品の問い合わせ件数は3位になった。ただし、食料品の相談件数はほぼ横ばいで、減ったわけではなく、他の問い合わせが増えたのである<ref name="Ishida-p22-23">{{Harvnb|石田英雄|2005|pp=22-23}}</ref>。
 
消費者の健康に対する関心は非常に高く、消費生活センターに寄せられる食品成分の問い合わせとしては、味噌汁の塩分や清涼飲料水の糖分やカルシウム、ビタミン、食物繊維、オリゴ糖、DHAなどについてのものが多い<ref name="Ishida-p22-23">{{Harvnb|石田英雄|2005|pp=22-23}}</ref>。
 
2001年には日本でも[[BSE]]([[狂牛病]])が発生したが、消費者の多くは狂牛病はヨーロッパでの出来事で、日本では発生するとは思っていなかったので、非常なショックを憶えた<ref>{{Harvnb|石田英雄|2005|p=24}}</ref>。
 
2000年にJAS法が改正され、すべての生鮮食品に原産地表示が義務づけられた後も[[偽装表示]]が後を絶たず、輸入肉を「鹿児島産」と表示するものや、輸入肉を8割も混入している[[ロースハム]]やベーコンを「国産」と表示するもの等々が後を絶たなかった状況では、消費者は食品の表示を信頼することはできなくなった<ref>{{Harvnb|石田英雄|2005|p=24}}</ref>。
 
2007年に[[偽装表示]]の問題が相次いだ結果、価格よりも原材料等の表示を注視するようになった、といった姿も報道されている<ref>『食品偽装の余波ジワリ 買い物客、原産地や表示じっくり』2007年11月20日付配信 [[産経新聞]]</ref>。
 
==== 消費者の権利 ====
重要なことは、消費者には、国や自治体が消費者の権利を擁護するための法的、行政的なシステムを完備することを要求する権利がある、ということである<ref name="Fujihara2003">
消費者には、国や自治体が消費者の権利を擁護するための法的、行政的なシステムを完備することを要求する権利があり<ref name="Fujihara2003">
{{Harvnb|藤原邦達|2003|p=271}}</ref>、また消費者は日本政府に対して[[食品衛生法]]を整備し、食品衛生行政体勢を完備することを要求する権利を行使し持っのである<ref name="Fujihara2003" />。しかし、消費者が[[偽装表示]]を見破ることは不可能に近い。とすれば、日本ため政府が法、行政的なシステム制度等を完備して、国民・消費者を守るほかはないのである、とも言われる<ref name="Fujihara2003" />。消費者の食の安全が守られることを要求する権利こそは、食品の安全性確保のためのシステム形成のために必要な重要な権利である<ref name="Fujihara2003" />。
 
消費者には様々な権利がある。ただし、その権利はただ事態を傍観していると自然に与えられるといった性質のものではないので、消費者の権利を守るために自発的に闘ったり努力したりすることが消費者の責務だと考えられるようになってきている。消費者も積極的にリスク・コミュニケーションに参加しなくてはならない、とも言われる<ref>『日本の食と農』p.63、p.68</ref>。
 
人に必要なエネルギーは食品中の[[蛋白質]](Protein)、[[脂肪]](Fat)、[[炭水化物]](Carbohydrate)の3大栄養素によって供給されている。3大栄養素の頭文字P、F、Cをとり、各エネルギーの比をPFCエネルギー比と言い、適正比率はP:12~13%、F:20~30%、C:57~68%といわれているが、日本人の食生活は現在のところ、ほぼこの適正比率の範囲に入っており、世界一長寿の秘訣なのかも知れないと考えられている<ref>{{Harvnb|石田英雄|2005|p=25}}</ref>。
 
ただし日本でも最近欧米型の食生活に近づいており、肉食が増えているのが懸念されてもいる<ref>{{Harvnb|石田英雄|2005|p=26}}</ref>。欧米では肉食中心で、脂肪(Fat)比率が非常に高く、PFCエネルギーバランスが悪く、肥満や心臓病が多いのである。また、動脈硬化<ref>動脈硬化を含む心疾患や脳血管疾患による死亡を合計すると、日本人の死因の約3割を占め、ほぼ癌と同数。({{Harvnb|石田英雄|2005|p=31}})</ref>の増加につながっているとも考えられている。これ以上洋食に傾かないように気をつけたいものである<ref>{{Harvnb|石田英雄|2005|p=26}}</ref>、とも言われる。
 
生活習慣病の中で最も恐ろしいのは癌であるが、医学的な疫学調査によると、食事の影響が35%、タバコの影響が30%、職業の影響が4%、飲酒の影響が3%などとなっており、食事の影響が一番大きい<ref>{{Harvnb|石田英雄|2005|p=29}}</ref>。例えば塩分の摂り過ぎは胃癌の原因ともなっており、かつて日本人に胃癌が多かったのはそのためであった。近年になって日本人に大腸癌や乳癌が増えてきた原因のひとつには、食生活の欧米化による動物性脂肪の摂取の増加と食物繊維の摂取不足が指摘されている。大腸での便の停滞時間が長くなって発癌物質が大腸粘膜と長時間接するため大腸癌が多くなったと考えられているのである<ref>{{Harvnb|石田英雄|2005|p=29}}</ref>。
 
=== 日本国内産食品 ===
多くの消費者が国内産を求める傾向があるのは、[[リスク]]を低減させるため、および安心の追求である。ただし、中国産に安全性に問題のある食品が多数存在した事実が、国産の安全性を保証するものではないことは当然であるが、特に日本では[[信仰]]にも似た国産への傾倒が顕著である。これは[[マスメディア|マスコミ]]による過剰な[[報道]]や[[日本人]]独自の特性が関係していると考えられている。
 
国内産の食品も、生産段階及び小売段階で安全性を損なう危険性が多分にある。また、過去にも多くの事故が判明している。生産段階では、農家による無許可農薬の使用や、農薬の規制を破るといった行為がある<ref name="economist">2007年9月4日号 週刊エコノミスト</ref>。小売段階では、要冷商品の非冷販売や[[偽装表示]]などが行われる危険性がある。例えば、2007年には27都道府県で、表示偽造が発覚した<ref name="20071118mainichi"/>。([[産地偽装]]も参照されたい。)かつて、[[四国]]の[[シイタケ]]を栽培する農業団体が中国産と国産の残留農薬を比較分析したところ、明らかに国産シイタケの方が数値が高かった。この団体は、この結果を公表しなかった。根から浸透させるタイプの[[防虫剤]]である[[オルトラン]]は、葉菜への使用は禁じられているにもかかわらず、実際には多くの農家で常識的に使われている。
国内産の食品も、生産段階及び小売段階で安全性を損なう危険性が多分にある。また、過去にも多くの事故が判明している。
生産段階では、農家による無許可農薬の使用や、農薬の規制を破るといった行為がある<ref name="economist">2007年9月4日号 週刊エコノミスト</ref>。小売段階では、要冷商品の非冷販売や[[偽装表示]]などが行われる危険性がある。例えば、2007年には27都道府県で、表示偽造が発覚した<ref name="20071118mainichi"/>。([[産地偽装]]も参照されたい。)かつて、[[四国]]の[[シイタケ]]を栽培する農業団体が中国産と国産の残留農薬を比較分析したところ、明らかに国産シイタケの方が数値が高かった。この団体は、この結果を公表しなかった。根から浸透させるタイプの[[防虫剤]]である[[オルトラン]]は、葉菜への使用は禁じられているにもかかわらず、実際には多くの農家で常識的に使われている。
 
=== 日本国外産食品 ===
[[残留農薬の問題が指摘されている。]]や[[ポストハーベスト]]など、ほか、[[遺伝子組み換え作物]]や[[クローン食品]]について参照問題や疑義が指摘されている
<!--ノートでの指摘によりコメントアウト。復活させる方は、資料等を辺り適宜修正の上、復活してもらえればと思います
==== 農薬への誤解、無農薬野菜の危険性 ====
377 ⟶ 270行目:
といった状況があり、過度に恐れる必要はないという指摘がある<ref name="syokunoanzen"/>。
-->
 
== 疑義を呈されるもの ==
* 遺伝子組み換え作物
:詳細は、[[遺伝子組み換え作物]]を参照。
* クローン食品
:詳細は、[[クローン食品]]を参照。
 
== 各国における輸入国別の食品違反件数 ==
405 ⟶ 292行目:
<small>出典:2007年9月4日号 週刊エコノミスト</small>
 
注)この表の数字自体は間違いではないが、大きな誤解を招く。それは「{{要査件数」を示していないことである。証範囲|date=2013年3月|中国食品の違反件数が多いのは、検査件数が多いためであり、違反件数÷検査件数、すなわち違反率で表すと、中国食品の違反率は他の国の食品の違反率と変わらないか、むしろ少ない(出典:厚生労働省輸入食品監視統計)。このような不適切な統計値の取り扱いが、食品の安全性に対する誤解を大きくする一つの原因になっている。}}
 
== 放射能と食の安全 ==
===ベラルーシ===
[[ベラルーシ]]は[[チェルノブイリ原子力発電所事故]]によって国土が放射性物質を含んだ雲に襲われ現在でも国土の23%が放射能汚染地帯となっている<ref name="nhk_ishikawa">NHK解説委員石川一洋による解説 「食の安全・ベラルーシから学ぶこと」2011年11月7日1:05~1:55の「スタジオパークからこんにちは」の枠内で放送。概要は[http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/200/100539.html 解説委員室 解説アーカイブス]でも検証可能。</ref>。その汚染レベルは日本の[[福島第一原子力発電所事故]]で設定された警戒区域から計画避難区域とほぼ同等である<ref name="nhk_ishikawa" />。チェルノブイリ事故では住民に様々な健康被害が出た<ref>実放送内で写真つきで言及。</ref>。ベラルーシでは、チェルノブイリ原発事故から25年の間に、放射能が関連する食の安全確保について様々な体制や制度が構築された<ref name="nhk_ishikawa" />。それは次の3つを柱とするものである<ref name="nhk_ishikawa" />。
{{Quotation|
* 食品に対する何段階におよぶ検査体制<ref name="nhk_ishikawa" />
* 食品に含まれる[[放射性物質]]に関する厳しい基準<ref name="nhk_ishikawa" />
* 安全な食品を作るための、生産者に対する技術面・財政面での支援<ref name="nhk_ishikawa" />
}}
ベラルーシでは[[生産]]・[[流通]]・[[販売]]、それぞれの現場で放射性物質の測定が常に行われている<ref name="nhk_ishikawa" />。食品検査場(室)はベラルーシの全国860か所に設置されており、全国で年間1100万回検査(調査)されている。食品を買った一般消費者(買い手)が、自分が買った食品をこうした(食品市場・マーケットなどに併設されている)検査室に持ち込んで検査することもでき、しかも検査は無料で、消費者自身が自分の眼で安全を確かめることもできる<ref name="nhk_ishikawa" />(自分の眼で計器の数値を見ることもでき、安心できる)。
 
一例を挙げると、(ベラルーシでは人々が日常的に買い物をするのは食糧品市場で、それは日本の[[スーパーマーケット]]におおよそ当たるわけであるが)食糧品[[市場]]でも、国が定めた基準値以下であるという証明書が無いと食品を販売してはいけない、と定められている。検査が具体的にどのように行われているか解説するために、食品をひとつ挙げその検査法を紹介するために木の実の例を挙げる。ベラルーシの人々は(ちょうど日本人と同じように)[[木の実]]や[[キノコ]]などの森の幸も栄養源・食材としているが、それらにも常にしっかりと検査が行われている<ref name="nhk_ishikawa" />。検査方法としては、まず(測定に恣意性が入り込まないように)食品が入っている各箱の外部から放射線測定を行いそれぞれ放射線レベルがほぼ同じであることを確かめ、箱の中のさまざまな部分から無作為に実を選び、重量を量り、[[放射線測定器]]にかけている<ref name="nhk_ishikawa" />。市場は基本的に検査装置や検査室を備えているのである<ref>実放送内で言及</ref>。この検査の場合でも、検査に要する時間はおよそ10分で済む<ref name="nhk_ishikawa" />。
 
基準値については、1992年・1996年・1999年と次第に厳しい値に設定してきており、2011年現在は1999年に定められたものが用いられており、それは次のようなものである<ref name="nhk_ishikawa" />。
例えば[[放射性セシウム]]に関しては
{{Quotation|
* [[飲料水]]: '''10[[ベクレル|Bq]]/[[リットル|L]]'''<ref name="nhk_ishikawa" />
* [[牛乳]]および[[乳製品]]: '''100Bq/L(100Bq/kg)'''<ref name="nhk_ishikawa" />
* [[牛肉]]([[牛]]の肉)、[[羊肉]]([[羊]]の肉)、およびその加工品 : '''500Bq/kg'''<ref name="nhk_ishikawa" />
* [[豚肉|豚]]、[[鶏肉|鶏]]、およびその加工品 : '''180Bq/kg'''<ref name="nhk_ishikawa" />
* [[野菜]] :'''100Bq/kg'''<ref name="nhk_ishikawa" />
** ただし[[ジャガイモ]]は '''80Bq/kg'''<ref name="nhk_ishikawa" />
* [[果物]] : '''40Bq/kg'''<ref name="nhk_ishikawa" />
}}
※「Bq」は[[ベクレル]]という単位である。
 
次第に基準値を厳したが、基準値を超えてしまう汚染食品の数は減ってきており、それは検査結果をもとにしたベラルーシの生産現場の努力・対策のおかげであり<ref name="nhk_ishikawa" />、悪い値が出たら、生産過程のどこが悪かったのか原因を究明したり、汚染程度の大きい土地ではその影響の出にくい作物を選んで植えるなどの対策をとっているのである<ref name="nhk_ishikawa" />。
 
現場で常にまめに測定できるように、ベラルーシでは簡易な放射線測定器がこの25年の間に開発されてきた歴史があり、日本に比べるとはるかに安価で販売されている。そして政府の予算<ref>補助金等</ref>も使って、市場、生産組合、学校などが購入している<ref name="nhk_ishikawa" />。検査員の数を確保するために、もともと他に仕事を持っている人々でも国の定めた一定の研修を受けることで放射性物質の測定を行う実際的・実践的な体制にして、細やかで速い検査体制を実現しているのである<ref name="nhk_ishikawa" />。
 
では、なぜベラルーシでは汚染地域での居住やそこで採れる食品の流通を一律禁止にせず厳格な検査体制を確立することになったのか? というと、国土に対する放射能汚染地域の面積割合が高かったこと(ロシアよりもむしろ高かったこと)、ベラルーシの農業を支えていた肝心の地域(南部)が放射能汚染されてしまったこと、などの理由があり、ベラルーシとしてはこの汚染地域をまるまる全て放棄してしまうわけにはいかず、しかたなく、汚染された土地の中でどのように安全に暮らすのか、真剣に向き合わざるを得なくなった、という<ref name="nhk_ishikawa" />。
 
===ウクライナ===
[[ウクライナ]]でも、甚大な原発事故の経験としては、1986年に旧ソ連で起きたチェルノブイリ原発事故がある。同事故の影響で、'''[[内部被曝]]'''により病気が多発しているという、この貴重な経験を生かすことが必要である。「チェルノブイリ救援・中部」の[[河田昌東]]理事は20年以上にわたり救援活動を行ってきたが、事故後10年経った1997年に内部被曝を踏まえて見直した[[ウクライナの食品の放射能基準|ウクライナの食品基準]]にならい日本の[[暫定規制値]]も見直すべきである、と提案している<ref>(出典)河田昌東「チェルノブイリからみた福島原発震災」『土と健康』No.427</ref><ref>(出典)*現代用語の基礎知識2012年版</ref>。以下にその暫定規制値を示す。
 
;ウクライナの食品基準(食品中に含まれる[[放射性セシウム]]の基準)
{{Quotation|
*[[飲料水]] : '''2ベクレル'''
*[[パン]] : '''20ベクレル'''
*ジャガイモ : '''60ベクレル'''
*野菜 : '''40ベクレル'''
*果物 : '''70ベクレル'''
*肉類 : '''200ベクレル'''
*[[魚]] : '''150ベクレル'''
*[[ミルク]]・[[乳製品]] : '''100ベクレル'''
*[[卵]](1個) : '''6ベクレル'''
*[[粉ミルク]] : '''500ベクレル'''
}}
※ ウクライナは内部被曝を重視して1997年に基準を改定している。[[ウクライナの食品の放射能基準]]を参照。
 
=== 日本 ===
==== チェルノブイリ原子力発電所事故後の対応 ====
1986年の[[チェルノブイリ原子力発電所事故]]を受け、日本では同年に[[輸入]]食品中の[[放射能]]の[[暫定規制値|暫定限度]]を定め<ref name="09-01-04-07">[http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_Key=09-01-04-07 輸入食品中の放射能の濃度限度]</ref>、食品中のセシウム134と 137由来の放射能濃度は370Bq/kg以下とした。
 
;日本の輸入停止事例
日本が過去に基準値を超えたとして1989年(平成元年)以降、税関にて発見され積み戻しを指示した食品と、日本国内で検出された植物の放射線量の比較一覧を挙げる。なお、1988年までにも、39件合計約160トンの農産物が暫定限度を超えたため、税関にて積戻しを指示されている <ref name=korosho>[http://www.mhlw.go.jp/houdou/0111/h1108-2.html 厚生労働省 放射能暫定限度を超える輸入食品の発見について(第34報)(別紙)暫定限度(放射能濃度)を超えた輸入食品一覧]</ref> 。
 
{|class="wikitable"
|+日本が過去に基準値(370 Bq/kg)を超えたとして輸入停止した食品<ref name=korosho />
! 発表日・測定日時 || 品種 || 地域・国 || 測定値(Bq/kg)
|-
|1989年1月11日 || きのこ(くろらっぱたけ) || フランス|| 650
|-
|1989年1月23日 || 乾燥ぜんまい || ソビエト || 655
|-
|1989年4月10日 || 乾燥ぜんまい || ソビエト || 379
|-
|1989年10月23日 || きのこ(あんずたけ) || フランス || 532
|-
|1990年2月28日 || ハーブ茶(ダンデリオン) || スイス || 1,167
|-
|1990年10月3日 || ハーブ茶(セイヨウノコギリ草) || アルバニア || 814
|-
|1991年2月14日 || 乾燥きのこ(ヤマドリタケ) || ユーゴスラビア || 556
|-
|1991年3月13日 || ミックススパイス || フランス || 1,028
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|1994年11月8日 || 燻製トナカイ肉 || フィンランド || 388
|-
|1998年1月21日 || 乾燥ポルチーニ(ヤマドリダケ) || イタリア || 731
|-
|2001年11月8日 || 乾燥ポルチーニ(ヤマドリダケ) || イタリア || 418
|-
|}
 
==== 福島第一原子力発電所事故後の対応 ====
{{main|福島第一原子力発電所事故の影響#食品中の放射性物質に対する規制}}
 
[[福島第一原子力発電所事故]]以降、2012年3月末まで暫定規制値を通知に基づき食品衛生法の規制対象として準用してきたが<ref name="tuuti0317-3">{{Cite web |url=http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001558e-img/2r9852000001559v.pdf |title=食安発0317第3号 平成23年3月17日 厚生労働省医薬食品局食品安全部長 放射能汚染された食品の取り扱いについて |publisher=厚生労働省 |format=PDF |date=2011-03-17 |accessdate=2012-05-07}}</ref>、食品衛生法の下位法令にあたる[[乳及び乳製品の成分規格等に関する省令]]および[[食品、添加物等の規格基準]]が改正され<ref>{{Cite web |url=http://wwwhourei.mhlw.go.jp/hourei/doc/hourei/H120319I0030.pdf |title=厚生労働省告示第百二十九号 平成二十四年三月十五日 |publisher=厚生労働省 |format=PDF |date=2012-03-15 |accessdate=2012-05-10}}</ref><ref>{{Cite web |url=http://wwwhourei.mhlw.go.jp/hourei/doc/hourei/H120319I0040.pdf |title=厚生労働省告示第百三十号 平成二十四年三月十五日 |publisher=厚生労働省 |format=PDF |date=2012-03-15 |accessdate=2012-05-10}}</ref>、[[乳及び乳製品の成分規格等に関する省令]]に基づきセシウム134およびセシウム137を規制の対象とする[[省令]]が新たに整備されたことにより<ref>{{Cite web |url=http://wwwhourei.mhlw.go.jp/hourei/doc/hourei/H120319I0020.pdf |title=厚生労働省令第三十一号 平成二十四年三月十五日 |publisher=厚生労働省 |format=PDF |date=2012-03-15 |accessdate=2012-05-10}}</ref>、2012年4月1日から食品中の放射性物質に対する規制が法的に食品衛生法の下に行われることとなった。
 
*'''規制の具体的な数値基準および詳細ならびに経緯は[[福島第一原子力発電所事故の影響#食品中の放射性物質に対する規制と経緯|福島第一原子力発電所事故の影響]]の項を参照されたい。'''
 
 
;事故後の食の安全に関する識者の見解
日本の[[福島第一原子力発電所事故]]の放射線汚染に関する食の安全確保、ということに眼を向けるならば、日本の場合、チェルノブイリやベラルーシの先例・経験があるので、(人類が未経験という)知識ゼロの状態から組み立てるというような困難は無いのであり、チェルノブイリやベラルーシでの経験の蓄積から学べばよいのであり、また、ベラルーシは経済的には日本よりもはるかに弱者であるが、そういった国ですらしっかりと安全確保体制を実現できたのであるから、日本でも彼らの経験をとりいれてそこに日本の技術を組み合わせれば、日本には日本にあった放射能対策が必ずできるはず、といった内容のことをNHK解説委員の石川一洋は2011年11月に解説した<ref name="nhk_ishikawa" />。
 
なお、ベラルーシは[[地産地消]](地元の食糧をその土地で食べること)の割合が多く、また国民が自分の別荘地で自ら食料を栽培しているのに対し、日本の場合は[[加工食品]]の流通割合が多いので、どこで検査するのか、どこを抑えればよいのか、という点では異なるシステムが必要でしょう、といったことを同NHK解説委員は指摘した<ref name="nhk_ishikawa" />。
 
=== 米国 ===
米国では飲料水の最大汚染基準<ref>{{Cite web
| url = http://water.epa.gov/drink/contaminants/index.cfm
| title = Drinking Water Contaminants
| publisher = United State Environment Protection Agency
| data = HTML
| date = 2004
| accessdate = 2011-04-15}}</ref>として、[[ベータ粒子|ベータ線]]および[[ガンマ線]]の摂取量を年間4m[[レム]](すなわち40マイクロ[[シーベルト]])以下とするよう定めている。放射性[[ヨウ素]]、および放射性[[セシウム]]はこれに該当する。
 
1986年の[[チェルノブイリ原子力発電所事故]]当時の食品中の放射性物質に対する暫定限度は370Bq/kgであった<ref name="09-01-04-07"/>。
 
=== EU ===
1986年の[[チェルノブイリ原子力発電所事故]]当時の[[欧州共同体|EC(現EU)]]では乳幼児食品で370Bq/kg以下、一般食品で600Bq/kg以下であった<ref name="09-01-04-07"/>。
 
== 食品表示検定 ==
[[食品表示検定]]が2009年から[[食品表示検定協会]]によって行われている。
 
== その他 ==
* [[スーパーの女]] 映画。
*[[木久蔵ラーメン]](食の事故ではないが、『[[笑点]]』の「大喜利」において近い表現でネタ(答え)にされる)
 
== 脚注 ==
420 ⟶ 425行目:
 
== 関連項目 ==
* [[雪印集団食中毒事件]]
* [[森永ヒ素ミルク事件]]
* [[食品偽装問題]]
* [[食中毒]]
* [[残留農薬等に関するポジティブリスト制度]]
* [[BSE問題]]
* [[遺伝子組み換え作物]]
* [[食品安全基本法]]
* [[食品衛生法]]
* [[食品表示検定]]
* [[スーパーの女]]
* [[産地判別技術]]
* [[リスクコミュニケーション]]<!--『食の安全と安心を守る』p.129~136-->
* [[食物連鎖]]  [[生物濃縮]]
*[[ウクライナの食品の放射能基準]]
*[[木久蔵ラーメン]](食の事故ではないが、『[[笑点]]』の「大喜利」において近い表現でネタ(答え)にされる)
 
==関連書==
464 ⟶ 460行目:
* 大島一二『中国野菜と日本の食卓―産地、流通、食の安全・安心』芦書房,2007,ISBN 4755612039
* 岡田幹治『アメリカ産牛肉から、食の安全を考える』岩波書店,2007,ISBN 4000093967
* 食品表示検定協会編・日本食品管理・情報研究所監修『食品表示検定認定テキスト・初級』ダイアモンド社,2009,ISBN 4478090060
* 食品表示検定協会編・日本食品管理・情報研究所監修『食品表示検定認定テキスト・中級』ダイアモンド社,2009,ISBN 4478090091
 
==外部リンク==