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'''定常宇宙論'''(ていじょううちゅうろん、steady state cosmology)とは、[[1948年]]に[[フレッド・ホイル]]、[[トーマス・ゴールド]]、[[ヘルマン・ボンディ]]らによって提唱された[[宇宙論]]のモデルであり、(宇宙は膨張しているが)無からの物質の創生により、任意の空間の質量(大雑把に言えば宇宙空間に分布する[[銀河]]の数)は常に一定に保たれ、宇宙の基本的な構造は時間によって変化することはない、とするものである。
 
[[2005年]]現在、[[ビッグバン]]理論(ビッグバン仮説)が有力と考えられることが多く、支持する多くの科学者らから「標準的宇宙論モデル」と呼ばれており、このような立場からは定常宇宙論は「非標準的宇宙論 (non-standard cosmology)」のひとつと見なされている。
 
== 定常宇宙論における宇宙 ==
定常宇宙論は、[[一般相対性理論]]の下では静的な宇宙は存在できないという理論的計算や、宇宙が膨張していることを示す[[エドウィン・ハッブル]]の観測を受けて考え出された。定常宇宙論では、宇宙は膨張しているが、にもかかわらず宇宙は時間とともに変化しないと主張する。この主張が成り立つためには、宇宙の密度を不変に保つために新たな物質が時間とともに絶えず生成されている必要がある。
 
この理論で必要な物質生成の速度は、1年間に1km<sup>3</sup>あたりおよそ[[水素]][[原子]]1個程度という非常に小さな割合で十分なため、このような物質生成が直接観測されていないことはこの理論の問題にはならない。新たに物質が生まれるということから[[質量保存の法則]]を破ってはいるものの、定常宇宙論には多くの魅力的な特徴がある。最も特筆すべき性質は、この理論では宇宙の始まりを必要としない点である。
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ビッグバン理論では、宇宙の爆発的な膨張に伴って[[中性水素]]が大量に生成し、それが現在見られる銀河を形成したと説くが、定常宇宙空間においては銀河はどのように形成されるのか。
 
各銀河は宇宙空間の膨張に伴う動きと同時に固有運動も行っているが、その空間の中には希薄な中性水素ガスがあり、銀河は船が水面を行くように水素ガスの中を運動している。かりやすいように、銀河が停止して水素が大きな流れとなって銀河周辺を移動していると考えてもよい。銀河の横を流れる水素は銀河の引力によって流路を曲げられ、銀河の後方に密度の高い部分を形成する。質量の大きな銀河は引力も強いので大きな質量の水素ガスの塊ができ、小さな銀河の場合は小質量のものになる。こうしてできた様々な質量の水素ガスの塊が[[恒星]]を次々に生み、銀河を形作って、宇宙は定常的に維持されると考える。
 
== 定常宇宙論の衰退 ==