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'''前科'''(ぜんか)とは、過去に[[刑罰]]を受けたことがある経歴をいうが、法律上の定義はないため、以下のようにいくつかの異なる意味で用いられる。
 
広義は、有罪[[判決]]で[[刑]]の言渡しを受けた事実そのものを指す。この意味では、[[実刑]]および[[執行猶予]]付き判決はもちろん、[[罰金]]や[[科料]]も前科に含まれ、後記のとおり時間の経過により刑の言渡しの効力が失われた場合でも事実としての前科は消えないといえる。[[検察庁]]の作成・管理している'''前科調書'''には、科料のような軽微な刑もすべて記録され、刑の言渡しの効力が失われても抹消されないので(後記[[#検察庁による犯歴管理]]参照)、前科調書の記載は、この広義の前科にほぼ対応するといえる。
 
狭義は、広義の前科のうち、時間の経過により刑の言渡しの効力が法律上消滅したものは前科でなくなると考える(後記[[#刑の言渡しの効力の消滅]]の項参照)<ref>「前科者」とほぼ同じ意味の古い表現として、「刑余者」という言葉がある。刑法34条の2が新設されるに際しての審議で、第1回国会・衆議院本会議[[昭和]]22年([[1947年]])7月10日(会議録15号-[http://kokkai.ndl.go.jp/ 国会会議録検索システム]参照)の庄司一郎議員発言では、刑の言渡しの効力の消滅によって、前科者ないし刑余者ではなくなる旨表現されている。</ref>。
 
また、狭義の前科とほぼ重なるが、各[[市町村]](東京都[[特別区]]は区)ごとに管理される'''犯罪人名簿'''に記載されていることを指すこともある(後記[[#犯罪人名簿]]参照)。
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これらと異なり、一般社会における用法としては、主に[[懲役]]刑・[[禁錮]]刑の言渡しを受けたか、実際にその執行を受けて出所した者を「前科者」、すなわち過去に犯罪を犯した者と見ることが多い。罰金刑以下の行政刑(道交法の反則金など)についてはいわゆる「前科」と見ないこともある。逆に、時間の経過によって刑の言渡しの効力が法律上消滅した後でも「前科」のレッテルがとれないことも多い。
 
なお、前科は、[[戸籍]]や[[住民票]]、[[住民基本台帳]]等に記載されることはない(現在は廃止されている明治5年式戸籍([[壬申戸籍]])には、犯罪歴に関する記載があったとされる<ref>[http://www8.cao.go.jp/jyouhou/tousin/001-h13/008.pdf 情報公開・個人情報保護審査会 平成13年諮問第12号] 「同戸籍(注:明治5年式戸籍)には,族称,職業,寺氏神等が記載されることとされている上,'''犯罪歴の記載'''のほか,明治4年8月に廃止された賎称が誤って記載されているものもあった。」</ref>)。
 
== 刑の言渡しの効力の消滅 ==
[[刑法 (日本)|刑法]]27条及び34条の2は、刑の言渡しの効力の消滅について定める。この規定は、刑の言渡しによって失った資格および権利(後述、前科と制限を参照)を回復させる「復権」であると解されている。具体的には次の場合に刑の言渡しの効力が消滅する。
* [[禁錮]]以上の刑の執行を終わり、またはその執行を免除された者が、[[罰金]]以上の刑に処せられないで10年を経過したとき(刑法34条の2第1項前段)。
* 罰金以下の刑の執行を終わり、またはその執行を免除された者が、罰金以上の刑に処せられないで5年を経過したとき(同項後段)。
* 刑の[[執行猶予]]の言渡しを取り消されることなく猶予期間を経過したとき(同法27条)。
 
また、刑の免除の言渡しを受けた者が、言渡しが確定した後、罰金以上の刑に処せられないで2年を経過したときは、刑の免除の言渡しは効力を失う(同法34条の2第2項)。
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== 犯罪人名簿 ==
=== 犯罪人名簿の根拠規定 ===
現在{{いつ|date=2013年05月}}、日本国において犯罪人名簿の保管および管理を各市区町村に義務付け、あるいは根拠付ける規定は存在しない。これは、「本籍人犯罪人名簿整備方」([[1917年|大正6年]]4月12日[[内務省 (日本)|内務省]][[訓令]]第1号)、「入寄留者犯罪人名簿整備方」([[1927年|昭和2年]]内務省訓令第3号)に基づき、市区町村が作成保管すべきとされた犯罪人名簿が、[[1947年|昭和22年]]の[[地方自治法]]施行によって市区町村の業務から外されたことによる。しかしながら、市区町村は、後述するように[[選挙人名簿]]を調製する必要があることから、地方自治法上の[[自治事務]]<ref>第174回国会において、木村太郎衆議院議員の「犯罪人名簿に関する質問主意書」(平成22年3月2日提出質問第191号)に対して、内閣は、犯罪人名簿の調製に関する事務は「地方公共団体の自治事務として実施されているものであり、法律又はこれに基づく政令の根拠を必要とするものではなく、……」という答弁書を閣議決定している(平成22年3月12日、内閣衆質174第191号)。なお、[[地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律|地方分権一括法]]による改正前の分類では、犯罪人名簿の調製は、[[固有事務]]。</ref>として、明確な根拠規定のないまま([[公職選挙法]]に[[公民権]]関連の規定があるのみである)、現在{{いつ|date=2013年05月}}でも犯罪人名簿の作成保管を続けている。
 
=== 犯罪人名簿の作成 ===
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=== 犯罪人名簿の記載対象 ===
犯罪人名簿に記載されるのは、以下に該当する者である([http://www.moj.go.jp/KEIJI/keiji21.html 犯歴事務規程]第2条、第3条、第7条)。
* [[道路交通法]]等違反による裁判以外で、[[罰金]]以上の刑に処せられた者([[少年]]のときに犯した罪にかかる裁判で、確定時にその刑の執行を受け終えたことになる者、刑の[[執行猶予|執行を猶予]]された者、刑の執行を免除された者を除く)。
* 道路交通法等違反による裁判で、[[禁錮]]以上の刑に処せられた者(少年のときに犯した罪にかかる裁判で、確定時にその刑の執行を受け終えたことになる者、刑の執行を猶予された者、刑の執行を免除された者を除く)。
 
=== 犯罪人名簿の取扱い ===
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==== 選挙権を有しない者 ====
* 禁錮以上の刑に処せられその執行を受けることがなくなるまでの者(刑の執行猶予中の者を除く)(法11条1項3号)
* 公職にある間に犯した、[[収賄罪|収賄]]等の罪または[[公職にある者等のあっせん行為による利得等の処罰に関する法律|あっせん利得処罰法]]第1条の罪により刑に処せられ、その執行を終わりもしくはその執行の免除を受けた者で、その執行を終わりもしくはその執行の免除を受けた日から5年を経過しない者、またはその刑の執行猶予中の者(同項4号)
* 法律の定めによって行われる選挙等に関する犯罪により禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行猶予中の者(同項5号)
* 公職選挙法の罰則規定(236条の2第2項、240条、242条、244条、245条、252条の2、252条の3、253条を除く)に違反し罰金の刑に処せられた者で、裁判確定から5年(221条、222条、223条、223条の2の罪につき刑に処せられ、さらに221条から223条の2までの罪につき刑に処せられた者については10年)を経過しない者またはその刑の執行猶予中の者(法252条1項、3項)
* 公職選挙法の罰則規定(253条を除く)に違反し禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わりもしくはその執行の免除を受けた者で、その執行を終わりもしくはその執行の免除を受けた日から5年(221条、222条、223条、223条の2の罪につき刑に処せられ、さらに221条から223条の2までの罪につき刑に処せられた者については10年)を経過しない者、またはその刑の執行を終わらずもしくは執行の免除を受けず、未だ刑の執行を受けることがなくならない者および執行猶予中の者(法252条2項、3項)
 
==== 被選挙権を有しない者 ====
* 禁錮以上の刑に処せられその執行を受けることがなくなるまでの者(刑の執行猶予中の者を除く)(法11条1項3号)
* 公職にある間に犯した、収賄等の罪またはあっせん利得処罰法第1条の罪により刑に処せられ、その執行を終わりもしくはその執行の免除を受けた者で、その執行を終わりもしくはその執行の免除を受けた日から10年を経過しない者またはその刑の執行猶予中の者(同項4号、法11条の2)
* 法律の定めによって行われる選挙等に関する犯罪により禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行猶予中の者(法11条1項5号)
* 公職選挙法の罰則規定(236条の2第2項、240条、242条、244条、245条、252条の2、252条の3、253条を除く)に違反し罰金の刑に処せられた者で、裁判確定から5年(221条、222条、223条、223条の2の罪につき刑に処せられ、さらに221条から223条の2までの罪につき刑に処せられた者については10年)を経過しない者またはその刑の執行猶予中の者(法252条1項、3項)
* 公職選挙法の罰則規定(253条を除く)に違反し禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わりもしくはその執行の免除を受けた者で、その執行を終わりもしくはその執行の免除を受けた日から5年(221条、222条、223条、223条の2の罪につき刑に処せられ、さらに221条から223条の2までの罪につき刑に処せられた者については10年)を経過しない者、またはその刑の執行を終わらずもしくは執行の免除を受けず、未だ刑の執行を受けることがなくならない者および執行猶予中の者(法252条2項、3項)
 
=== その他の法律上の資格制限 ===
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欠格事由が「禁錮以上の刑を受け、その執行を終わりもしく受けることがなくなった日から5年を経過しない者」と定められている場合、執行猶予の場合は猶予期間が経過すれば刑自体が消滅することにより「禁錮以上の刑を受け」に該当しなくなるので、資格は回復するとされる。禁錮以上の実刑の場合は、刑の言渡しの効力は消滅していなくても、その執行を終わり5年経過すれば欠格事由はなくなる。この規定は、前者の「禁錮以上の刑に処せられた者」に比して欠格事由を緩和したものである。ちなみに、この規定による「受けることがなくなった」ものに該当する例は、刑の時効の完成(刑法31条)や恩赦による刑の執行の免除などをさす。なお、執行猶予期間の満了については、刑自体が消滅するとの見解と、刑の言い渡しの効力が消滅するに過ぎないとの見解がある。
 
=== 外渡航・永住等の制限 ===
日本国外渡航や日本国外永住申請等の際に、[[犯罪経歴証明書]]の提出が必要となることがある。相手国の法律によっては、[[査証]](ビザ)の免除が受けられないことや、渡航や永住が認められないこともある。例えば[[アメリカ合衆国|米国]]の場合、犯罪歴のある者の入国には査証が必要となることがあり<ref>[http://japan.usembassy.gov/j/visa/tvisaj-waiver.html 米国大使館 ビザ免除プログラム] 「有罪判決の有無にかかわらず逮捕歴のある方、'''犯罪歴(恩赦や大赦などの法的措置がとられた場合も含む)がある方'''、(中略)に該当する旅行者は、ビザを取得しなければなりません。ビザを持たずに入国しようとする場合は入国を拒否されることがあります。</ref>、[[オーストラリア]]の場合、服役の有無にかかわらず12か月以上の懲役または禁錮刑を受けたことのある者の入国には査証が必要となることがある<ref>[[オーストラリア移住市民権省]]ウェブサイト "[http://www.immi.gov.au/visitors/tourist/976/obligations.htm ETA (Visitor) (Subclass 976)]"、2012年3月10日閲覧。 - "You must not have any criminal convictions, for which the sentence or sentences (whether served or not) are for a total period of 12 months duration or more, at the time of travel to, and entry into, Australia."</ref>。
 
== 前科とプライバシー ==
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== 比喩表現 ==
転じて、過去に犯した過ちや悪しき前例一般の意として使われている。
 
== 脚注 ==
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== 関連項目 ==
* [[プライバシー]]
* [[前科照会事件]]
* [[ノンフィクション「逆転」事件]]
<!--* [[Wikipedia:削除の方針#ケース B-2:プライバシー問題に関して|Wikipedia:削除の方針]] - 個人の犯罪歴に関する記載は、削除の対象となる可能性があります。--><!-- 左記は記事内に記述する必要なし-->
* [[個人情報保護法]]
* [[犯罪経歴証明書]]
* [[累犯]]
 
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