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『'''ローマの松'''』(のまつ、{{lang-it-short|'''I pini di Roma'''}})は、[[イタリア]]、[[ボローニャ]]出身[[作曲家]]'''[[オットリーノ・レスピーギ]]'''によって[[1924年]]12月に完成された[[交響詩]]。この前後に作曲した『[[ローマの噴水]]』([[1916年]])『[[ローマの祭り]]』([[1928年]])と共に「ローマ三部作」と呼ばれる。レスピーギが[[聖チェチーリア音楽院]]の教授や委員長をつとめていた時代の作品である。
 
初演は、1924年12月14International Music Score Library ProjectInternational Music Score Library ProjectInternational Music Score Library ProjectInternational Music Score Library Project14日、[[ローマ]]の[[アウグステオ]]楽堂で行われた。
 
== 概要 ==
後述するようなタイトルのつけられた4つの部分によって構成されている。おのおのに於いて異なった松と場所、時間を彼の得意とした色彩的な[[管弦楽法|オーケストレーション]]を用いてうまく描写している。
 
またレスピーギは[[1926年]][[1月15日]]に、みずから[[フィラデルフィア管弦楽団]]を指揮してこの曲を演奏するにあたり、プログラムに次のように書い記している。
:『ローマの松』では、私は、記憶と幻想を呼び起こすために出発点として自然を用いた。極めて特徴をおびてローマの風景を支配している何世紀にもわたる樹木は、ローマの生活での主要な事件の証人となっている
 
つまり、彼はこの曲で単に松のことを描こうとしたわけではなく、松という自然を通して[[古代ローマ]]へ眼を向け、ローマの往時の幻影に迫ろうとう意図をもっていた。そのためこの曲には、[[グレゴリオ聖歌]]などの古い[[教会旋法]]が好んで使用され、古い時代への郷愁と過去への幻想が効果的に生かされている。
「『ローマの松』では、私は、記憶と幻想を呼び起こすために出発点として自然を用いた。極めて特徴をおびてローマの風景を支配している何世紀にもわたる樹木は、ローマの生活での主要な事件の証人となっている」
 
つまり、彼はこの曲で単に松のことを描こうとしたわけではなく、松という自然を通して[[古代ローマ]]へ眼を向け、ローマの往時の幻影に迫ろうと言う意図をもっていた。そのためこの曲には、[[グレゴリオ聖歌]]などの古い[[教会旋法]]が好んで使用され、古い時代への郷愁と過去への幻想が効果的に生かされている。
 
演奏時間は約20分。
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*[[フルート]]3(第3フルートは[[ピッコロ]]持替え)
*[[オーボエ]]2
*[[コーラングリッシュホルン]]1
*変ロ調とイ調の[[クラリネット]]2
*変ロ調とイ調の[[バスクラリネット]]1
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*舞台裏の[[トランペット]](第2部で使用)
*[[ブッキーナ]] - 変ロ調のソプラノ・テナー・バスの[[フリコルノ]]([[サクソルン]])各2(第4部で使用)
*:ブッキーナは古代ローマの兵士が用いた金管楽器の一種。トランペット、トロンボーンの祖先とされる。レスピーギがブッキーナに指定したフリコルノはイタリアにおける円錐管系金管楽器。
*夜鳴きウグイス([[サヨナキドリ|ナイチンゲール]])の歌声の録音(第3部で使用)
*:楽譜出版社である[[リコルディ]]社からテープが発売されている。何らかの方法で代用している例も少なくないが、普通はこの出版社のパート譜の貸し譜に付いてくる。
 
== 構成 ==
楽章の後の文章はレスピーギによる曲の説明。なお、以下の4つの部分は切れ目なく続けて演奏される。
=== 第1部 ボルゲーゼ荘の松===
:{{lang-it-short|''I pini di Villa Borghese''}} ,{{lang-en-short|The Pines of the Villa Borghese}})
 
アレグレット・ヴィヴァーチェ→ヴィヴァーチェ(8分の2拍子)
:「ボルゲーゼ荘の松の木立の間で子供たちが遊んでいる。彼らは輪になって踊り、兵隊遊びをして行進したり戦争している。夕暮れの燕のように自分たちの叫び声に昂闘し、群をなして行ったり来たりしている。突然、情景は変わり、第二部に曲は入る。」
 
「ボルゲーゼ荘の松の木立の間で子供たちが遊んでいる。彼らは輪になって踊り、兵隊遊びをして行進したり戦争している。夕暮れの燕のように自分たちの叫び声に昂闘し、群をなして行ったり来たりしている。突然、情景は変わり、第二部に曲は入る。」
 
ローマの[[ボルゲーゼ公園]]の松並木で遊ぶ子供たちの情景をホルンの高らかな響きと、にぎやかで派手なオーケストレーションで彩った速い旋律で描いている。なお、「ボルジア荘の松」とする記載を見かけるが[[ボルゲーゼ家]]と[[ボルジア家]]は別であり、誤りである。
 
===第2部 カタコンバ付近の松===
:{{lang-it-short|''Pini presso una catacomba''}} ,{{lang-en-short|Pines near a catacomb}})
 
レント(4分の4拍子)
:「カタコンバの入り口に立っている松の木かげで、その深い奥底から悲嘆の聖歌がひびいてくる。そして、それは、荘厳な賛歌のように大気にただよい、しだいに神秘的に消えてゆく。」
 
[[カタコンベ|カタコンバ]]とは古代ローマでの初期キリスト時代の墓のこと信者たちの悲観と祈りに満ちた歌声が全オーケストラを駆使して描かれる。後半にでてくる連続する5度のハーモニーでのメロディは、古代の教歌からインスピレーションを受けたと言われる。
「カタコンバの入り口に立っている松の木かげで、その深い奥底から悲嘆の聖歌がひびいてくる。そして、それは、荘厳な賛歌のように大気にただよい、しだいに神秘的に消えてゆく。」
 
[[カタコンベ|カタコンバ]]とは古代ローマでの初期キリスト時代の墓のこと、信者たちの悲観と祈りに満ちた歌声が全オーケストラを駆使して描かれる。後半にでてくる連続する5度のハーモニーでのメロディーは、古代の教歌からインスピレーションを受けたと言われる。
 
===第3部 ジャニコロの松===
:{{lang-it-short|''I pini del Gianicolo''}} ,{{lang-en-short|The Pines of the Janiculum}})
 
レント(4分の4拍子)
:「そよ風が大気をゆする。ジャニコロの松が満月のあかるい光に遠くくっきりと立っている。夜鶯が啼いている。」
 
「そよ風が大気をゆする。ジャニコロの松が満月のあかるい光に遠くくっきりと立っている。夜鶯が啼いている。」
 
[[ジャニコロの丘]]はローマ南西部にある。満月の中に浮かぶ松と幻想的な月光が描かれる。クラリネットのソロが哀しい。
 
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===第4部 アッピア街道の松 ===
:{{lang-it-short|''I pini della Via Appia''}} ,{{lang-en-short|The Pines of the Appian Way}})
 
テンポ・ディ・マルチャ
:「アッピア街道の霧深い夜あけ。不思議な風景を見まもっている離れた松。果てしない足音の静かな休みないリズム。詩人は、過去の栄光の幻想的な姿を浮べる。トランペットがひびき、新しく昇る太陽の響きの中で、執政官の軍隊がサクラ街道を前進し、カピトレ丘へ勝ち誇って登ってゆく。」
 
「アッピア街道の霧深い夜あけ。不思議な風景を見まもっている離れた松。果てしない足音の静かな休みないリズム。詩人は、過去の栄光の幻想的な姿を浮べる。トランペットがひびき、新しく昇る太陽の響きの中で、執政官の軍隊がサクラ街道を前進し、カピトレ丘へ勝ち誇って登ってゆく。」
 
古代ローマの進軍道路として使われた[[アッピア街道]]の石畳の道は今でも残る。ピアニッシモから「軍隊の行進」に伴い徐々に音強を増し、フォルティッシモに至る。舞台上の管弦楽に加え、[[バンダ (オーケストラ)|バンダ]]のファンファーレが加わり、勇壮に全曲を閉じる。舞台裏の金管楽器はしばしば客席の脇や後ろ、2階席などに置かれ、立体的な音響を響き渡らせることがある。