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{{パーソナリティ障害}}
 
'''パーソナリティ障害''' (パーソナリティしょうがい、{{lang-en-short|Personality disorder}} ; '''PD''')とは、精神医学においては、一般的な成人に比べて極端な考えや行為を行ったりして、結果として社会への適応を著しく困難にしていたり、精神病理学的な症状によって本人が苦しんでいるような状態に陥っている人を言う。
 
従来の[[境界例]]や[[精神病質]]の後身にあたる概念で、以前はPersonality disorderに'''人格障害'''(じんかくしょうがい)の訳語が当てられていたが、日本語の「人格障害」という言葉は、人間の根幹を示しているような部分があること、それにより否定的なニュアンスが強いことから「パーソナリティ障害」と訳語が変更されている。なお、「パーソナリティ障害」が定着する以前は同様の意図から「性格障害」と言われることもあった。
 
== 概要 ==
パーソナリティ障害とは「病的な個性」、あるいは「自我の形成不全」 ともいえる状態を指す。[[精神疾患]]の一態に含まれ種であるが、その他の精神疾患と比べて慢性持続的であり、全体としての症状が長期にわたり変化しないことに特徴付けられる。ただし、他の精神疾患なども治癒するまでに数十年の歳月を要するケースもあり、判別は難しい。
 
パーソナリティ障害は広義において[[神経症]]に入る概念である。今日の精神科における神経症圏の病名は、そのほとんどが患者自身の苦しみ・つらさの中心となっている問題に「障害」をつける形での命名となっている。パニック発作を起こす「[[パニック障害]]」、強迫的観念・行動を特徴とする「[[強迫性障害]]」なども同様である。しかし苦しみやつらさが一つに限局できず、より深い問題を抱える例がある。このような患者は慢性的、かつ複数の症状をかかえており、抑うつや不安感、[[悲観主義|厭世観]]や希死念慮などの、人生を幸せに生きることができないという広範囲に及ぶ問題を持ち、「自分が自分であることそのもの」「生きることそのもの」、つまり[[人格|パーソナリティ]]が苦しみやつらさの中心であるとしか表現できないような状態を「パーソナリティ障害」と位置付けている<ref>[[#小羽俊士2009|小羽俊士2009]]</ref>。
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2008年06月に日本精神神経学会は[[#精神神経学用語集2008|『精神科用語集』]]を約20年ぶりに改定し、本名称も「パーソナリティ障害」に修正した。新聞記事には「人格障害は性格の極端な偏りを指すが、人格否定の印象があり、変更した<ref>読売新聞2008年 5月31日</ref>」と報道される。膨大な関連ドキュメントを抱える厚生労働省では名称変更対応が遅れ、一部に旧名称のまま未改訂のドキュメントも残るが、マスターでは2010年03月に変更しており<ref group="注" name="t1" />、2011年8月31日には、一般市民への啓蒙コンテンツ[http://www.mhlw.go.jp/kokoro/index.html 厚生労働省ホームページ:みんなのメンタルヘルス]にも[http://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_personality.html 「パーソナリティ障害」]としてページが作成された。
 
== パーソナリティ障害の全般的診断基準 (DSM-IV-TR) ==
== 分類 ==
A. その人の属する文化から期待されるものより著しく偏った、 内的体験および行動の持続的様式。この様式は以下の領域の2つ(またはそれ以上)の領域に現れる。
[[疾病及び関連保健問題の国際統計分類|ICD]]は行政上の分類をしたり統計目的で[[世界保健機関|WHO]]([[世界保健機関]])が作った分類である。しかし明確な診断基準は提示していないため、臨床上は[[精神障害の診断と統計の手引き|DSM]]を用いることが推奨されている<ref>[[#加藤忠志2009|加藤忠志2009]]</ref>。ただしこのDSMも各国の文化的相違により分類が困難な例がある、それぞれのパーソナリティ障害同士の境界が曖昧などの批判もあり、絶対的なものではないとされる<ref>[[#DSMケースブック2003|DSMケースブック2003]]</ref>。
:# 認知(すなわち、自己、他者、および出来事を知覚し解釈する仕方)
:# 感情性(すなわち、情動反応の範囲、強さ、不安定性、および適切さ)
:# 対人関係機能
:# 衝動の制御
B. その持続的様式は柔軟性がなく、個人的および社会的状況の幅広い範囲に広がっている。
 
C. その持続的様式が、臨床的に著しい苦痛、または社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている。
=== ICDによる分類 ===
[[#ICD-10新訂版2005|『ICD-10 ガイドライン(新訂版)』]]では、「F6.成人のパーソナリティおよび行動の障害」の中で「F60.特定のパーソナリティ障害」を規定している。F6.に含まれるものは他に「f61.混合性および他のパーソナリティ障害」、「f62.持続的パーソナリティ変化、脳損傷および脳疾患によらないもの」、「f63.習慣および衝動の障害」、「f64.性同一性障害」その他が含まれる。以下に「F60.特定のパーソナリティ障害」に含まれる疾患名を記す。
 
D. その様式は安定し、長期間続いており、その始まりは少なくとも青年期または成人期早期にまでさかのぼることができる。
* F60.0 [[妄想性パーソナリティ障害]] ''Paranoid personality disorder''
 
* F60.1 [[統合失調質パーソナリティ障害]] ''Schizoid personality disorder''
E. その持続的様式は、他の精神疾患の現れ、またはその結果ではうまく説明されない。
* F60.2 [[非社会性パーソナリティ障害]] ''Dissocial personality disorder''
 
* F60.3 情緒不安定性パーソナリティ障害 ''Emotionally unstable personality disorder''
F. その持続的様式は、物質(例:薬物乱用、投薬)または一般身体疾患(例:頭部外傷)の直接的な生理学的作用によるものではない<ref>{{Cite book |和書 |author=高橋三郎、大野裕、染矢俊幸(訳) |year=2003 |month=12 |title=DSM‐IV‐TR 精神疾患の診断・統計マニュアル 新訂版 |publisher=[[医学書院]] |isbn=9784260118897 |ref= }}</ref>。
** F60.30 衝動型 ''impulsive type''
 
** F60.31 [[境界性パーソナリティ障害|境界型]] ''borderline type''
== 分類 ==
* F60.4 [[演技性パーソナリティ障害]] ''Histrionic personality disorder''
[[疾病及び関連保健問題の国際統計分類|ICD]]は行政上の分類をしたり統計目的で[[世界保健機関|WHO]]([[世界保健機関]])が作った分類である。しかし明確な診断基準は提示していないため、臨床上は[[精神障害の診断と統計の手引き|DSM]]を用いることが推奨されている<ref>[[#加藤忠志2009|加藤忠志2009]]</ref>。ただしこのDSMも各国の文化的相違により分類が困難な例がある、それぞれのパーソナリティ障害同士の境界が曖昧などの批判もあり、絶対的なものではないとされる<ref>[[#DSMケースブック2003|DSMケースブック2003]]</ref>。
* F60.5 [[強迫性パーソナリティ障害]] ''Anankastic personality disorder''
* F60.6 [[回避性パーソナリティ障害|不安性[回避性]パーソナリティ障害]] ''Avoidant (avoidant) personality disorder''
* F60.7 [[依存性パーソナリティ障害]] ''Dependent personality disorder''
* F60.8 他の特定のパーソナリティ障害 ''Other specific personality disorder''
* F60.9 パーソナリティ障害、特定不能のもの ''personality disorder unspecified''
 
=== DSMによる分類 ===
[[#DSM新訂版2003|『DSM-IV-TR 精神疾患の分類と診断の手引』]]では、10種類のパーソナリティ障害を3つのカテゴリに分け規定している。
 
==== クラスターA (奇異群;odd or: eccentricodd disorderstype) ====
風変わりで自閉的で妄想を持ちやすく奇異で閉じこもりがちな性質を持つ。
 
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* 301.22 [[統合失調型パーソナリティ障害]] ''Schizotypal personality disorder''
 
==== クラスターB (劇的群;dramatic, emotional: ordramatic erratic disorderstype) ====
感情の混乱が激しく演技的で情緒的なのが特徴的。[[ストレス (生体)|ストレス]]に対して脆弱で、他人を巻き込むことが多い。
 
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* 301.81 [[自己愛性パーソナリティ障害]] ''Narcissistic personality disorder''
 
==== クラスターC (不安群;anxious or: fearfulanxious disorderstype) ====
不安や恐怖心が強い性質を持つ。周りの評価が気になりそれがストレスとなる性向がある。
* 301.82 [[回避性パーソナリティ障害]] ''Avoidant personality disorder''
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* 301.9 特定不能のパーソナリティ障害 ''personality disorder Not Otherwise specified ''
 
=== ICDによる分類 ===
[[#ICD-10新訂版2005|『ICD-10 ガイドライン(新訂版)』]]では、「F6.成人のパーソナリティおよび行動の障害」の中で「F60.特定のパーソナリティ障害」を規定している。F6.に含まれるものは他に「f61.混合性および他のパーソナリティ障害」、「f62.持続的パーソナリティ変化、脳損傷および脳疾患によらないもの」、「f63.習慣および衝動の障害」、「f64.性同一性障害」その他が含まれる。以下に「F60.特定のパーソナリティ障害」に含まれる疾患名を記す。
 
* F60.0 [[妄想性パーソナリティ障害]] ''Paranoid personality disorder''
* F60.1 [[統合失調質パーソナリティ障害]] ''Schizoid personality disorder''
* F60.2 [[非社会性パーソナリティ障害]] ''Dissocial personality disorder''
* F60.3 情緒不安定性パーソナリティ障害 ''Emotionally unstable personality disorder''
** F60.30 衝動型 ''impulsive type''
** F60.31 [[境界性パーソナリティ障害|境界型]] ''borderline type''
* F60.4 [[演技性パーソナリティ障害]] ''Histrionic personality disorder''
* F60.5 [[強迫性パーソナリティ障害]] ''Anankastic personality disorder''
* F60.6 [[回避性パーソナリティ障害|不安性[回避性]パーソナリティ障害]] ''Avoidant (avoidant) personality disorder''
* F60.7 [[依存性パーソナリティ障害]] ''Dependent personality disorder''
* F60.8 他の特定のパーソナリティ障害 ''Other specific personality disorder''
* F60.9 パーソナリティ障害、特定不能のもの ''personality disorder unspecified''
 
== 診断 ==