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'''キムラグモ'''とは、狭義には[[節足動物門]][[クモ綱]][[クモ|クモ目]]ハラフシグモ亜目ハラフシグモ科に属するクモの一種''Heptathela kimurai''の和名、また広義には[[ハラフシグモ科]]キムラグモ属''Heptathela''に属するクモの総称である。腹部に体節の跡がありる、最も原始的なクモの一つとして有名である。この特徴を持つハラフシグモ科の現生種として、日本で初めて発見、記載された。
== 特徴形態 ==
'''[[キムラグモ'''属]]は複数種を含むが、いずれも形態に大差はなくややずんぐりとした褐色のクモで、体長は約1.5cm雌15㎜、雄10㎜前後になる。
キムラグモの体は、頭胸部と腹部からなる。頭胸部には、一見すると5対の歩脚があるように見える。これは、触肢が歩脚と同じ形に発達するためである(普通のクモ類では、触肢は歩脚状だがはるかに小さい)。また、鋏角は大きく発達し、これは捕食以外に巣穴を掘りる際にも使用される。
一般的なクモ類では、腹部は袋状で外見上体節構造は見られず、後端に出糸器官をもつ。ハラフシグモ亜目に属するキムラグモの腹部には、はっきりとした体節の跡があり、背面には体節ごとにやや硬化した背板がならぶ。一方、クモ亜目これは化石種に属すみられる一般原始的なクモ類形質ではあり、腹部分類名には外見上は体節が見られない。それが見られあることが、「腹節グモ」の名称の由来であり、原始的性質である。腹面側には、前方には、二呼吸器官として2対の'''書[[肺]]'''がある。またと、腹面中央には、四対長い紡錘形の出糸突起が7個あるが、長い紡錘形で、他のクモより大きく<ref>新海(2006),p.10</ref>、これらが付属肢に起源することが分かりやすい作り構造になっている。
== 生活態 ==
[[Image:Heptathela.kimurai.yanbaruensis.burrow.-.tanikawa.jpg|right|220px|thumb|巣の入り口、扉の下にクモの脚が見える<br>(ヤンバルキムラグモ)]]
キムラグモは、地下に穴を掘って暮らしている。がけ地や切り通しなど、裸の地面が急斜面になったところに多い。横向きまたは斜め下向きに5~10cm程度の穴を掘り、深さは20cmに達す巣を造る。巣穴の入り口には糸で作った幕によって蓋をしてある。蓋は入作り口、巣穴の上側で蝶番部に扉のよう様に取り付けられ、開け閉めできる。ふた蓋の外側には土や泥コケがついて付き、巣穴と周囲との区別がつきにくくなっている。このような巣は、[[トタテグモ]]類と共通である。ただし、トタテグモ類の場合、巣穴の内側すべてに糸で裏打ちしてあるのに対し、キムラグモの場合は、扉と入り口付近だけが糸で裏打ちされている。これは、キムラグモが原始的なクモで、糸を出す能力が十分でないためとも言われる。
クモは巣穴の入り口で待機し、近くを昆虫などが通りかかると、飛びかかって捕らえ、巣穴に持ち引き込んで食べる。
東南アジアの近縁属では、穴の入り口から受信糸という糸を地表に放射状に張り、そこに接触した餌に飛びかかって食べるものがいるが、キムラグモはこれを作らない。
成熟した雄は巣穴から出て、雌の巣穴を探す。巣穴を見つけると、入り口で、雌の巣穴の戸蓋を一定のリズムで触肢を使って叩く。これによっての時雌の同意攻撃が確認できなければ、雄は巣穴に入り交接がを行わう。雄はその後しばらく雌の巣穴に留まるが、その際雌に捕食されることもある。
キムラグモの幼虫体は、他のクモ類の幼虫体が行なう[[バルーニング (動物)|バルーニング]]をしないことが知られており、これが多くの固有種を生む原因の一つとも考えられている。
== 名前の由来 ==
こキムラグモの名前は発見者にちなむものである。当時まだ高校生(旧制)だった[[木村有香]](きむらありか)が[[1920年]]に[[鹿児島県]]で発見し、標本を送られた[[岸田久吉]]が[[1923年]]に記載、木村に[[学名]]と[[和名]]を[[献名]]した。木村は後に[[植物学]]者として名をなし、[[東北大学]]を舞台に[[ヤナギ]]の分類で大きな業績を挙げている<ref>八木沼(1969)p.80-81</ref>。当時ハラフシグモ科のクモは[[東南アジア]]から4種発見されていただけで、どれも採集困難なものばかりであったので、クモの系統の研究上大きな意味のある発見となった。東亜蜘蛛学会(現・[[日本蜘蛛学会]])はシンボルマ-クにこの蜘蛛を使っている。
その後九州以南の各地で分布が確認されたのではあるが、すべて同一種と考えられていた<ref>八木沼(1960),p.19</ref>。ところがキムラグモの配偶行動を研究していたドイツのハウプトが沖縄産のものの行動が全く異なることを発見し、研究の結果、これを別種オキナワキムラグモ ''H.Heptathela nishihirai''(= ''Ryuthela nishihirai'' ) として発表した。この学名は標本を提供した沖縄出身の生態学者である西平守孝に献名したものである。これを契機に研究が進んだ結果、以下に述べるように各地で種分化が進んでいることが判明した。
==分類==
当初、キムラグモは日本では[[九州]]南部から[[南西諸島]]にかけて分布するとされたが、上述のように複数属種が含まれていることが判明した。沖縄本島以南のまた分類ものは別属の[[オキナワキムラグモ属]]としている。上記[[オキナワキムラグモもこ属]]の2属に移さ分けられた。
それ以北現在、九州までの[[キムラグモ属]]は9種に、[[オキナワキムラグモ属]]は7種に分けられている。それについては属の項を参照されたい。現在の範囲での種名キムラグモ''Heptathela kimurai''は、熊本県東部と、西部および南部、大分県西部、熊本県西部に棲息分布するものである。他の種とは形態的には大差がなく、雄の触手肢先端の生殖器官と雌の生殖器の違いで分類されている。
<!-- その後、小野(2009)ではさらにオキナワキムラグモを中心とする種群をなお、オキナワキムラグモ属についてはハウプトはニシヒラグモ属という和名を提唱している。以下、これによる分類体系を示す。-->
==出典==
<references />
==参考文献==
*小野展嗣編著、『日本産クモ類』、(2009)、東海大学出版会
*新海栄一、『ネイチャーガイド 日本のクモ』、(2006)、文一総合出版
*八木沼健夫、『原色日本蜘蛛類大図鑑』、(1960)、保育社
*八木沼健夫 『クモの話 : よみもの動物記』 北隆館、1969年。
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