「本格派推理小説」の版間の差分

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*[[島田荘司]]
 
== 新本格ミステリ ==
=== 概要と歴史 ===
==== 確立 ====
ここでは前述の、1980年代後半から90年代にかけて日本でデビューした作家群を中心に記述する。
 
1950年代後半以降の日本では、古典的ミステリ(例えば、「豪壮な邸宅で起きる[[不可能犯罪]]、奇怪な殺人者が跳梁し、超人的頭脳の[[名探偵]]がそれを追い詰める」といったテーマや、[[エラリー・クイーン]]の初期作品のようなパズル性を持った作品)への関心は一般に薄れており<ref>もっとも、1970年代から80年代にかけての「[[横溝正史|横溝]]ブーム」は、[[角川書店]]の強力な宣伝も伴い、非常に大きな盛り上がりをみせた。また、書誌研究者の[[島崎博]]は、探偵小説専門誌『[[幻影城 (雑誌)|幻影城]]』を創刊し、古典的ミステリを掘り起こす試みを行っている。</ref>、古典的設定に基づくミステリを書く新人作家の数は少なかった<ref>この期間にも、ベテラン作家の[[横溝正史]]、[[鮎川哲也]]、[[都筑道夫]]、[[土屋隆夫]]、中堅作家の[[泡坂妻夫]]、島田荘司、[[連城三紀彦]]など、少なくない数の作家が本格推理の新作を書き続けている。[[千街晶之]]『本格ミステリ・フラッシュバック』(2008年、[[東京創元社]])なども参照。</ref>。
 
=== 確立 ===
一般に、「新本格派ミステリー作家」の活動は、[[1987年]]、[[綾辻行人]]が島田荘司の推薦を伴い『[[十角館の殺人]]』でデビューしたことに始まるとされる(前述の通り、笠井潔や島田荘司などを新本格派とみなす場合もある)。以降、[[講談社]]の編集者・[[宇山秀雄]](新本格の生みの親とも言われる)は、主に[[講談社ノベルス]]を経路として、「新本格」を[[コピー|キャッチコピー]]とするミステリの集中的な販売戦略を取った。また、[[東京創元社]]の編集者・[[戸川安宣 (編集者)|戸川安宣]]も、新人作家の活動をバックアップした。このような状況を受けて<ref>以上の事情から、例えば[[宮部みゆき]]などの作品が新本格の一つとして扱われるケースもあった。</ref>、1980年代後半から1990年代前半にかけ、ミステリの新人作家が相次いでデビュー、作品の出版点数が大きく高まり、一般的な注目も集まった。この一連の動きを指して、'''新本格ムーブメント'''(もしくは'''第三の波'''〔これは笠井潔が提唱した呼称である〕)などと呼ぶ場合がある。
 
==== 発展 ====
新本格派を登場時期を基準に分類する場合がある。当初は、綾辻行人、[[有栖川有栖]]、[[法月綸太郎]]などを代表的な作家とし、京都大学ミステリ研究会出身の作家がその中心であったと見ることができる。この世代は、前述の古典的ミステリに倣った作風を志向しているのが特徴である(作家により差異はあるが、おおむね謎の不可解性や解決の論理性を重視している)。[[江戸川乱歩]]や[[横溝正史]]、クイーン(現在に至るまで、『[[Yの悲劇]]』のパロディものなどに取り組む作家は多い)などの影響を語る者も多い。狭義には「新本格派ミステリー作家」はこの世代の作家を指し、第一世代とも呼ばれる。
 
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[[2000年]]に、ジャンルとしての本格ミステリの発展とその年間最優秀作の選定のため、有栖川有栖を初代会長として、[[本格ミステリ作家クラブ]]が発足、以降毎年、アンソロジーの編纂と[[本格ミステリ大賞]]の選定を行っている。
 
=== 新本格という用語 ===
「新本格」という言葉は、綾辻行人の第2作『水車館の殺人』([[1988年]]講談社ノベルズ刊)の[[帯]]で初めて使われた[[コピー]]であり、従ってこの言葉はもともと[[講談社]]が使用していたものであって、厳密に言えば[[東京創元社]]系の作家群には使用すべきではないとする説がある。だが、[[1966年]]から翌年にかけて[[読売新聞社]]が『新本格推理小説全集』と銘打った推理小説叢書を刊行している(ちなみに、同叢書の責任監修・解説を務めたのは[[松本清張]]であるが、同叢書の序文において、社会派以来の推理小説の形骸化を反省・批判する文脈で「ネオ・本格」という標語を使っている)ことを考えると、コピーとしての「新本格」という言葉を講談社が最初に使用したと考えるには疑問がある。
 
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* [[藤村正太]]『孤独なアスファルト』講談社文庫版の[[渡辺剣次]]の1976年に書かれた解説によれば、「[[乱歩賞]]は、それまで新本格ないしは文学派の作品で占められていたが」と記述されており、ここでは[[仁木悦子]]らが新本格の作家と位置づけられている。
 
=== 代表的な新本格ミステリ作家 ===
'''新本格派ミステリー作家'''(しんほんかくはミステリーさっか)とは、もともと[[イギリス]]の1940年前後の[[推理小説家]]群の総称であるが<ref>[[マイクル・イネス]]、[[マージェリー・ アリンガム]]、[[ニコラス・ブレイク]]ら、「本格ミステリ黄金時代」の後の時代に登場した本格作家群を、[[江戸川乱歩]]が総称して呼んだ。『イギリス新本格派の諸作』(乱歩の評論集『[[幻影城]]』(1951年、岩谷書店、2003年、[[光文社文庫]])に収録)参照。</ref>、一般に、[[日本]]の推理小説史においては、1980年代後半から90年代にかけてデビューした一連の作家群を指して、このように呼ぶ場合が多い。ただ、'''新本格'''という言葉自体定義が曖昧なものであるため(後述)、この定義についても(それ以前にデビューしている[[笠井潔]]、[[島田荘司]]等を加えるなど)諸説ある。