「オゾン」の版間の差分

削除された内容 追加された内容
文体/専門用語。リンク。
17行目:
| Appearance = 淡青色気体
| Density = 2.144 g L<sup>−1</sup> (0 ℃), 気体
| Solubility = 0.105 g 100mL<sup>−1</sup> 100 mL (0 ℃)
| MeltingPt = 80.7 K, −192.5 ℃
| BoilingPt = 161.3 K, −111.9 ℃
36行目:
}}
 
'''オゾン''' (ozone) は、3つの[[酸素|酸素原子]]からなる酸素の[[同素体]]である。分子式は O<sub>3</sub> で、折れ線型の構造を持つ。[[腐食|腐食性]]が高く、生臭く特徴的な刺激臭を持つ有毒物質な[[気体]]である。[[大気]]中にもごく低い濃度で存在している。
 
== 性質 ==
[[常温]][[常圧]]では薄青色の[[気体]]である。[[沸点]]−111.9 [[セルシウス度|℃]] (161.25 [[ケルビン|K]]) で紺色の[[液体]]となり[[凝固点]])、−197.2 ℃ (75.95 K) で濃紫色の[[固体]]となる([[凝固点]])。中心の酸素原子と両端の酸素原子の結合は2本とも等価であり、オゾン分子は O=O<sup>+</sup>−O<sup>−</sup> と O<sup>−</sup>−O<sup>+</sup>=O の2つの極限構造からる[[共鳴理論|共鳴混成体]]であると考えられる。
 
オゾンは[[フッ素]]に次ぐ強い[[酸化|酸化力]]を持つため、高濃度では猛毒である。吸い込むと内臓が酸化され[[糜爛]](びらん)状になる。
 
== 発見 ==
オゾンは、[[ドイツ]]・[[スイス]]の[[化学者]]である[[クリスチアン・シェーンバイン]]によって[[1840年]]に発見された。彼は雷雨の中でオゾンが現れることに注目し、そしてその奇妙なにおいから[[ギリシア語]]で臭いを意味する Ozo, Ozein から Ozon と名付けた。
 
== 発生 ==
一般に空気中での[[紫外線]]照射したりまたは酸素中で[[無声放電]]を行うなど高いエネルギーを持つ[[電子]]と酸素分子の衝突によって発生する。オゾンの発生は主に以下の[[化学式]]で表せる。
 
:<math>\rm \, 3O_2 \longrightarrow 2O_3</math>
57行目:
この反応は[[温度]]や[[圧力]]が上昇するほど速くなる。
 
いくつかの[[電気]]機器]]は人間が臭いを感じる程度のオゾンを発生させる。特に[[ブラウン管]]テレビや[[コピー機]]など高電圧を用いる装置で起こる。ブラシによって整流する[[電動機|電気モーター]]は機器内で繰り返される火花によってオゾンを発生させる。[[エレベーター]]や[[ポンプ]]などに使われる大型モータは小さいモータよりもオゾン発生量が多い。なお、これは[[整流子電動機]]特有の現象で、整流子のない[[誘導電動機]]・[[同期電動機]]ではオゾンは発生しない。
 
=== オゾンの生産 ===
[[工業]]的にオゾンを用いる場合、一般に[[水銀灯]]による短い[[波長]]の紫外線照射や高電圧による低温[[放電]]によって生産される。低温放電装置は二枚の[[電極|電極板]]によって構成され、電極表面を、高い[[誘電率]]をもつホウケイ酸ガラス([[パイレックス|パイレックスガラス]])や[[雲母]]のような[[絶縁体]]で覆う。[[交流]]高電圧を電極にかけると[[無声放電]]が起こり、平板間に流した酸素分子が解離し、他の酸素分子と再結合することによってオゾンが発生する。また、[[カソード|陰極]]に黒鉛電極、[[アノード|陽極]]に[[白金]]電極を用い、希[[硫酸]]を[[電気分解]]することによって陽極からオゾンが酸素との混合気体として生成される。同様に固体高分子電解質膜を、白金を用いた陰極と[[二酸化鉛]]を用いた陽極で挟み、[[]]を電気分解することでも陽極からオゾンが酸素との混合気体として生成される。
 
== オゾンによる酸化反応 ==
67行目:
:<math>\rm \, O_3 + H_2O + 2 \mathrm{e}^- \longrightarrow O_2 + 2 \mathrm{OH}^-</math>
 
酸性溶液中では溶液内の[[水素イオン]]が直接反応し、生成した[[水酸化物イオン]]が溶液内の水素イオンと反応して水ができる。半反応式は次のようになる。
 
:<math>\rm \, O_3 + 2 \mathrm{H}^+ + 2 \mathrm{e}^- \longrightarrow O_2 + H_2O</math>
73行目:
=== オゾン酸化 ===
{{Main|オゾン酸化}}
オゾンを用いた[[有機合成]]反応の例として[[オゾン酸化]]が挙げられる。[[アルケン]]をオゾンで酸化すると -C-O-O-C-O- という並びの5員環構造を持つオゾニドが生じ、[[還元]]的な後処理をすることにより[[ケトン]]または[[アルデヒド]]が得られる。一方、[[酸化]]的な後処理をすると[[ケトン]]または[[カルボン酸]]が得られる。
 
[[ファイル:Ozonolysis Scheme.png|300px|center|オゾン酸化]]
 
有機[[高分子]]をオゾンにさらすと劣化が起こり、ときに亀裂が生じる。この現象をオゾンクラッキングと呼ぶ。
 
== オゾン層 ==
{{Main|オゾン層}}
 
[[大気]]の中で[[成層圏]]に存在するものは[[オゾン層]]と呼ばれを形成し、[[生命]]にとって有害な[[紫外線]]が地に降り注ぐ量を和らげている。しかし一方、地付近に存在するでは、オゾンは[[光化学スモッグオキシダント]]の際になどとして生成し[[大気汚染]]物質でもあの原因となる。成層圏中のオゾン量は[[ドブソン単位]]で表される。工業で用いられる場合、[[ppm]]や[[容量パーセント濃度]]または[[重量パーセント濃度]]で表される。
 
== 利用法 ==
オゾンは[[フッ素]]に次ぐ強力な[[酸化|酸化作用]]があり、[[殺菌]]・[[ウイルス]]の不活化・[[脱臭]]・[[漂白剤|脱色]]・[[有機物]]の除去などに用いられる。
 
[[日本]]および[[アメリカ合衆国では、食品添加物として認可されている]]<ref>[http://www.fda.gov/OHRMS/Dockets/98fr/062601a.htm] ([[アメリカ食品医薬品局|FDA]])</ref>では、[[食品添加物]]として認可されている<!--他の国は?-->。
 
[[水道水]][[殺菌]][[塩素]]の代わりにオゾンが用いられる国も多い。オゾンは[[有機塩素化合物]]を生成しないため、処理後の水にも残留せず、塩素と比較して味や匂いの変化が少ない。従って、いくつかのシステムでは配管での細菌増殖を防ぐために少量のオゾンを添加することがある。日本では近年、[[東京都水道局]]や[[大阪市水道局]]で水道水の殺菌の一環として用いられており、追随する[[自治体]]も増えてきている。
 
気体としてのオゾンは、その毒性により高度な濃度管理が求められるため、オゾンガスをミキシング又はバブリングと呼ばれる手法で水に溶け込ませたり、電気分解により水に含まれる酸素を利用して作る「オゾン水」として活用される例が増えている。オゾンの不安定な性質により数十分で酸素と水に戻るので残留性のない殺菌水として使えるほか、塩素系殺菌剤やエタノール系殺菌剤使えないところ場合にも使用できされる。
 
[[ヨーロッパ]]では[[医療]]への有効活用が多数試され、その効果が発表されている。近年は日本でも[[医療]]、[[介護]]、[[食品]]、[[酪農]]を主とする[[農業]]などの分野で殺菌消臭廃棄物処理目的で使われることが多くなった。
 
=== 医療 ===
日本では、[[1923年]]に小川正彦により医療用オゾンガス発生器が発明され、ヨーロッパでは[[ドイツ]][[1957年]]に発明されている<ref name="伝統獣医誌161">清水無空、清水紀子「小動物におけるオゾン療法」『日本伝統獣医学会誌』16(1) [2008.05]、37~4237-42頁。</ref>。
 
ヒトでは、難治性の疾患では、[[感染症]][[皮膚病]][[免疫不全]][[悪性腫瘍|がん]]の補助療法、老人病、慢性[[リウマチ]][[アレルギー疾患]]などに有効性が示されている<ref>Renate Viebahn-Haensler 『{{PDFlink|[http://ozone.fixa.jp/pdf/shupanbutsu/saishin-no-ozon-ryouhou.pdf ヨーロッパにおける最新のオゾン療法]}}』{{リンク切れ|date=2010年12月}}、日本医療・環境オゾン研究会訳、2002年</ref>。[[獣医学]]分野では、[[]][[]]に対し腫瘍やがんに対するオゾン療法に十分な効果があり[[クオリティ・オブ・ライフ]]の改善が見られるとされる<ref name="伝統獣医誌161" />。
 
[[歯科]]医療においては、[[う蝕|虫歯]]の治療においてオゾンガスを患部に当てる[[ヒールオゾン]]という治療法がある。
 
[[薬事法]]に基づく医療用具として、オゾン水手洗い機が認可されている<ref name="食品加工技術261" />。
 
=== 食品 ===
日本では[[食品添加物]]として認められており、いる。主流の[[殺菌料]]である[[次亜塩素酸ナトリウム]]と比較して食品に対しての殺菌剤としては、そのままオゾンガスを溶かすのではなく単に水道水を電解し陽極にできたオゾン水によってオゾンの濃度を高めることきるために殺菌力高くすることができ、使用後の洗浄が不必要で安全性が高く食品の味を損ねにくく、[[クロロホルム]]を生成しないという点が特徴的である<ref name="食品加工技術261">吉田幸一「高濃度オゾン水による食品分野での適応」『食品加工技術』26(1)[2006]、1~101-10頁。</ref>。[[アメリカ合衆国]]では、1997年6月に食品の殺菌剤として安全性に問題がないGRAS(一般安全認定)に分類され、[[アメリカ食品医薬品局|FDA]][[2001年]]6月に食品添加物として安全であると発表している<ref name="食品加工技術261" />。
 
=== 農業 ===
[[農薬]]の代わりとして、病害対策に用いられる。噴霧することで農薬のかわりに多くの病害菌を殺菌できるため、農作物に残留しない病害防除として利用することができ、収穫時にも収穫した農産物の殺菌に利用できる<ref name="農業技術638">草刈眞一「オゾン水による病害防除技術 養液栽培と農業分野へのオゾン水利用技術」『農業技術』63(8)[2008.8]、337~344337-344頁。</ref>。キュウリの[[うどんこ病]]などの病害対策ができるため、農薬の低減が期待がもてされる<ref name="食品加工技術261" />。
[[大麦]]・[[人参]]の発芽率の向上、[[カイワレ大根、ダイコン]]・[[ハツカダイコン]]・[[トマト]]の生育促進効果も確認されている<ref name="農業技術638" />。
 
=== 畜産 ===
畜産分野でにおいては、従来は消臭・殺菌に用いられる。畜舎にオゾンガスを噴霧することで[[硫黄]]系の臭気を分解することができたがる。従来は殺菌力があまりくなかった。しかし、平均5000 [[ナノメートル|nm]]であった気泡を5ナノメートル nmにすることで殺菌力が得られサルモネラ菌や鳥インフルエンザウイルスなどにもへの殺菌効果を示しが見られ、また、[[残留農薬等に関するポジティブリスト制度]]にも有効的になった対応できる<ref>ネイチャーズ株式会社「ナノピコバブルオゾン水の特性および効果 世界最小ナノバブルを超えた超微細気泡オゾン水(ポジティブリスト、HACCPに対応した新しい消毒技術)」『養豚の友』(通号 463)[2007.10]、40~4240-42頁。</ref>。
 
=== 洗浄 ===
工業分野では、[[半導体]]部品の洗浄において、主流のRCA洗浄が主流は[[アンモニア]]や塩酸フッ化物<!--塩酸フッ化物とは?-->が用いられるが、その代替としてオゾンガスを溶させたオゾン水は排水処理の面で環境負荷が低く<ref>「水の活性化と機能水-表面処理における各種対策について」『鍍金の世界』41(4)[2008.4]、52~5652-56頁。</ref>、代替として半導体の基板表面の有機物や金属の除去・洗浄に用いられている<ref>黒部洋(栗田工業株式会社)「機能水の製造方法および洗浄効果 オプト・半導体デバイスにおけるウェットプロセスの技術トレンド(薬品・機能水編)」『マテリアルステージ』7(10)[2008.1]、40~4340-43頁。</ref>。
 
また、水を使わずに(あるいはあまり使わずに)オゾンを利用した空流によって除菌や洗濯を行う[[洗濯機]]の例がある<ref>[[2006年]]3月、内部でオゾンを発生させ、水を使わずに(あるいはあまり使わずに)除菌や洗濯を行う洗濯機が[[三洋電機]]から発売された。</ref>。また、その後継機種では風呂の残り湯を使用する際、オゾンで除菌・浄化したり、オゾン水そのものを洗濯のすすぎに利用するものもある<ref>[http://kaden.watch.impress.co.jp/cda/news/2008/01/21/1815.html 三洋、“オゾンすすぎ”で洗浄力がアップした三代目「AQUA」] (家電Watch、2008年1月21日)</ref>。
 
== 毒性 ==
オゾンには急性・慢性双方の[[中毒|中毒症]]がある。
 
急性中毒では[[]][[呼吸器への]]が刺激から始まりされ、高濃度になるにれて[[]][[めまい]]が引き起こされ、さらに高濃度になると[[呼吸困難]]や[[麻痺]]、それに[[昏睡]]状態になり、放置しておけば[[死亡]]する。
慢性中毒では[[倦怠感]]や[[神経過敏]]など[[神経]]の異常や、[[呼吸器]]の異常を引き起こ来たす。
 
オゾンを発生させる可能性のある場ではたとえ低濃度であろうと[[活性炭]]入りの[[マスク]]をつけることが望まれるが、目の[[粘膜]]も保護できる全面マスクの使用がより好ましい。より高濃度(10ppm(10 ppm以上)の場合は[[ガスマスク]]の使用が必須になる。<ref>{{PDFlink|[http://www.gigadata.com.tw/WinTax/driver/finetax/std_ozone050322jp.pdf オゾン利用に関する安全管理規準]}} - 経済産業省・省エネルギー技術開発プログラム「省エネルギー型廃水処理技術開発」高濃度オゾン利用研究専門委員会平成17年(2005年)3月作成;平成25年(2013年)6月18日閲覧…外部サイトにて現存</ref>
 
== その他 ==
オゾンは[[光化学オキシダント]]の主成分である。近年、日本では、光化学オキシダント注意報を発令する[[都道府県]]の数が増加しているが、これは、[[大気汚染#日本の状況|中国大陸からの越境大気汚染]]によって広域化していると考えられている。また、オゾンの強力な酸化性のため、植物や農業に対する悪影響が憂慮されている。
 
オゾンは活性の高い酸素を含む酸化力の高い化学種であり、広義の[[活性酸素]]の一つとされる。身体に害があるとして話題になった「活性酸素は、狭義では[[スーパーオキシドアニオン|スーパーオキシドアニオンラジカル]]や[[ヒドロキシルラジカル]]を指し、オゾン含まないが、水中での分解過程では、オゾンの一部が狭義の活性酸素の一つであるヒドロキシラジカルを経て分解することも知られている。
 
[[自動車]]等の[[タイヤ]]を保管する際は電気機器の近くを避けるようにという説明がタイヤメーカーからなされているが<ref>例: [http://tyre.dunlop.co.jp/tyre/products/tyrecheck/keeping.html タイヤの保管の仕方] - ダンロップ</ref>、その理由は、[[#発生]]の節で述べられているとおり、モーターなどから発生するオゾンがタイヤの主成分である[[合成ゴム]]を侵すからである(オゾンクラッキング)。