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{{otheruses|財産権の主体としてとらえられた国家としての国庫|国に属する現金を出納・経理する制度|国庫制度}}
▲===歴史的背景===
[[ローマ法]]におけるfiscusは、「皇帝財庫」「皇帝金庫」と訳されることもあれば「国庫」と訳されることもある。
ラテン語のfiscusは、本来は大金を収納するための籠を指す言葉であったものが、転じて宝物や金銭の貯蔵庫を指すようになったものである。この言葉は、帝政ローマにおいてはやがて(何らの修飾語も伴わずに)皇帝の財庫のみを意味するようになった。皇帝の財庫としてのfiscusは、少なくとも[[ハドリアヌス]]帝の時代には、ローマ帝国の国庫<ref>ここでは国家の財産の貯蔵庫の意義。</ref>(共和制ローマにおけるaerariumに相当するもの)とは区別されていたが、後にこれを統合するに至り、「国庫」<ref>同前。</ref>としての意義を得るに至る<ref>本
▲====ローマ法におけるfiscus====
▲ラテン語のfiscusは、本来は大金を収納するための籠を指す言葉であったものが、転じて宝物や金銭の貯蔵庫を指すようになったものである。この言葉は、帝政ローマにおいてはやがて(何らの修飾語も伴わずに)皇帝の財庫のみを意味するようになった。皇帝の財庫としてのfiscusは、少なくとも[[ハドリアヌス]]帝の時代には、ローマ帝国の国庫<ref>ここでは国家の財産の貯蔵庫の意義。</ref>(共和制ローマにおけるaerariumに相当するもの)とは区別されていたが、後にこれを統合するに至り、「国庫」<ref>同前。</ref>としての意義を得るに至る<ref>本節の記述につき、"Fiscus" in Jowitt's Dictionary of English Law (3rd Ed.) </ref>。
[[法治国家]]に至る前段階として位置づけられる[[警察国家]]([[絶対君主制]]国家の[[内政]]面を指す概念。)においては、国家は原則として法の規制を受けず、したがって裁判権にも服しないため、人民は国家に対しては[[国家賠償]]その他の法的救済を求めることができなかった(国家無問責の原則)。そこで、[[ドイツ]]法の国庫理論(Fiskustheorie)においては、このように法の規制を受けない公権力の主体としての国家と対比して、私人と同じ立場で[[私法]]の適用を受ける財産権の主体(ないし経済活動の主体)としての国家を、特に'''国庫'''(Fiskus:ラテン語のfiscusをドイツ語化したもの。)と呼んだ<ref>「公権力の主体としての国家」も「財産権の主体としての国家」も、国家という一つの[[法人|人格]]の両側面に過ぎず、国庫それ自体が独立の法人格を有するわけではない。</ref>。国庫は、公権力の主体としての国家とは異なり、一般私人と同様に民事裁判所の裁判権に服するため、民事訴訟において被告として(例えば契約に基づく債務の不履行を理由として)訴えることが可能であった。
19世紀の法治国家においても、ドイツの司法裁判所は国庫理論による私法上の法的救済を模索したが、その背景には、各ラントの[[行政訴訟|行政裁判]]<ref>(司法裁判所ではなく)[[行政裁判所]]
ドイツ法の国庫理論は日本にも影響を与え、Fiskusには「国庫」との訳語が与えられて、法令においても用いられるようになった。
現在の法治国家においては、公権力の主体としての国家もまた法の下にあり、あらゆる権利侵害は裁判所による救済の対象とされていることから、「公権力の主体としての国家」と「財産権の主体としての国家」(国庫)の区別は本来的な意義を失っている。
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現在の日本においては、今でも法令において財産権の主体としての国家(この場合は日本国)を指すものとして国庫の語が用いられる例は多い([[日本国憲法第49条|憲法49条]]、[[民法 (日本)|民法]]239条2項など)が、端的に「国」の語を用いることも多い([[日本国憲法第17条|憲法17条]]、[[会計法]]34条2項など)。
▲[[Category:財政]]
[[Category:国家論]]
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