「AGM-65 マーベリック」の版間の差分

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ブルパップの誘導方式は[[無線]]指令誘導方式で、発射と同時に弾体後部で発火するトレーサと呼ばれる火炎を兵器管制員が目視で確認し、[[ジョイステック]]を操作して[[無線]]により操舵して目標まで誘導し続けなくてはならなかった。
 
そのため、射程と命中率は操縦者の[[視力]]と技量に依存し、発射から弾着までは誘導し続けなければならず、誘導が困難になるような激しい機動も制限された。また、[[発電所]]や[[橋]]など大型の目標に対しては有効であったが、小型目標を狙うには不向きであり、誘導の難しさから不評だった。
 
=== ウォールアイ ===
ベトナム戦争が始まって2年後の[[1962年]]には、問題を抱えていたブルパップの後継としてAGM-62 ウォールアイが[[アメリカ海軍]]によって開発開始された。続いてその3年後である[[1965年]]には[[アメリカ空軍]]もヒューズと共にブルパップの後継ミサイル、'''AGM-65 マーベリック'''の開発に乗り出した。先に実用段階まで至ったウォールアイは、[[1966年]]にブルパップと同じくマーチンエリエッタ社と[[契約]]が結ばれAGM-62A ウォールアイ I の[[生産]]が開始される。
 
ウォールアイはブルパップとは比較にならない程大きな進化を遂げている。その大きな特徴としては、[[誘導装置]]に[[ビデオカメラ]]を利用した点である。これはミサイルの先端部にビデオカメラを収め、その[[映像]]は母機の[[ビデオモニター|モニター]]に表示され、パイロットは映り込んだ目標を[[ロックオン]]して発射すれば、後はミサイルがロックした目標へ自動で向かってくれる。それにより命中率と射程は大幅に上昇し、母機は発射直後に回避行動をとることが出来るので、[[地対空ミサイル|SAM]]や[[対空砲]]、敵[[戦闘機]]の脅威に長時間晒されることく離脱することが可能となった。しかし、ウォールアイは分類上ミサイルであるが[[推進装置]]を持っておらず、[[射程距離]]は母機の高度に依存するので遠距離の目標を狙おうとすると機体の高度を上げなくてはならない。そのため、[[天候]]の悪い日は[[雲]]が邪魔してシーカーに目標が映らずロック出来ないと言うトラブルもあり、基本的にウォールアイが使用されるのは天気が良好で[[陽]]が出ている間だけである。
 
ウォールアイはそれら以外の問題も多々抱えており、登場以来数々の細かいアップデートが行われその種類は数十種にもおよぶ。その中でも長射程データリンク型のウォールアイI ER/DLや、搭載弾頭を2,000lbに増量したウォールアイ II はベトナム戦争で活躍した。それでもブルパップを全てウォールアイに置き換えることは出来なかった。ウォールアイは高い命中率や[[撃ち放し能力]]を持っていたが、推進装置を搭載していないことから、母機から遠距離の目標を攻撃するのに向かないなどの欠点があった。
 
==== AGM-12E ====
その後、ブルパップの派生型で[[クラスター爆弾]]を弾頭としたAGM-12Eが開発された。これは上空で弾体が炸裂し内部の子爆弾を広範囲に撒き散らすことから、誘導に精確性が求められず、単純な無線誘導方式なので1基あたりの価格も低廉で、搭載母機に改修などが不要という汎用性もあった。ブルパップはウォールアイの登場により使用機会は減ったが、その後も使われ続けた。
 
=== マーベリック登場 ===
[[1972年]]になるとマーベリックの初期型であるAGM-65Aが空軍に納入される。マーベリックの特徴は、弾体中央上部から後部にかけて伸びる[[デルタ翼]]や、後部に僅かにある操縦翼など[[AIM-47 (ミサイル)|AIM-47 ファルコン]]、[[フェニックス (ミサイル)|AIM-54 フェニックス]]などと同様の外形を採用していて小型なために、1つのキャリッジに最大3発のマーベリックを装着することが出来る。[[A-10 (航空機)|A-10]]では14発のマーベリックが搭載可能である。
 
誘導方式はウォールアイと同じくTV誘導方式で、短射程ながら運動性も良く、ベトナムで数発が試験使用されて予想以上の命中率を示した。好成績を収めたAGM-65Aは、[[1973年]]に勃発した[[第四次中東戦争]]で[[イスラエル国防軍]]に供与され、80%の命中率を記録した。良好な命中率と信頼性を示したマーベリックは、ウォールアイでは果たせなかったブルパップの完全置き換えを達成し、その優れた性能から後に[[アメリカ海兵隊]]にも採用された。その後シーカーの倍率を上げたタイプや、レーザー誘導やIRシーカー搭載の全天候型、威力向上型、対艦型、CCDシーカー搭載型等の派生型が作られ、[[湾岸戦争]]や[[イラク戦争]]などで使用された。また、旧[[ユーゴスラビア]]に供与されたマーベリックは[[クロアチア内戦|クロアチア独立戦争]]や[[ボスニア・ヘルツェゴビナ内戦]]において旧[[ユーゴスラビア連邦空軍]](および後身の[[セルビア空軍]])が使用していた。
 
== 基本型と派生型 ==
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[[湾岸戦争]]中1991年の[[湾岸戦争#砂漠の嵐|「砂漠の嵐」作戦]]で、[[F-16 (戦闘機)|F-16]]と[[A-10 (航空機)|A-10]]が運用し、[[イラク軍]]に対して大きな戦果を挙げた。
 
AGM-65用のLAU-117発射機(単連ランチャー)は、海軍および空軍の航空機に多数搭載されている。また、初期に運用されていたLAU-88発射機(三連装ランチャー)は信頼性の問題から湾岸戦争のころにはほとんど使用されないようになった<ref>『[[航空ファン (雑誌)|航空ファン]]』NO632 文林堂 2005年 63-64頁</ref>。
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; [[攻撃機]]