「請求権」の版間の差分
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'''請求権'''(せいきゅうけん)とは、他人に対し、一定の行為を請求することができる[[権利]]のことである。
== ドイツ法学に由来する請求権概念 ==
'''請求権'''('''せいきゅうけん''')とは、他人に対し行為(作為又は不作為)を請求することができる権利のことである。もっとも、このような定義によると、ほぼ同様の定義をする[[債権]]との関係が不明確になり、両者の関係が問題となる(実際、両者は厳密に区別して使用されているわけではない)が、この点を考察するためには請求権概念が生み出された歴史を概観する必要がある。
歴史的に見ると、[[ローマ法]]では、現在と異なり[[実体法]]と[[手続法]]とが未分化であり、それゆえ実体法上の権利と手続法上の権利との関係も未分化の状態にあった。具体的には、[[民事訴訟]]で救済の対象となる個々の権利の類型が、それぞれ固有の手続と結びつけられており、そのような権利を actio (「訴権」と訳されることがあるが、民事訴訟法学にいう「[[訴権]]」とは異なる。)として把握する構成を採っていた。その結果、裁判所に訴えを提起して救済を求める権利である actio を離れて実体法上の権利を認識することはできなかった(もっとも、actio を離れて実体法上の権利を認識することはできなかったという認識は間違いであるという有力な批判もある。)。
その後、ドイツにおいてローマ法の継受が行われたが、[[19世紀]]のドイツ民法学で実体法と手続法との分化が行われるようになったため、actio も実体法と手続法との分化という視点から再構成される。すなわち、実体法上の権利として'''私権'''が観念され、手続法上の権利として訴え提起により裁判所の審理を受けることができる権利である'''訴権'''が観念されるようになる。'''請求権'''概念は、このように分化した私権と訴権とを媒介する概念として考え出された概念であり、実体法上の権利([[物権]]や債権)があることを前提に、当該権利が他人に対して行為を要求できるという形態を採った場合に、そのような形態を採った権利が請求権であり、そのような請求権を満足させるために手続法([[民事訴訟法]])上の権利としての訴権が認められることになる。したがって、請求権は、債権から(債権的請求権)だけではなく、物権からも発生し([[物権的請求権]])、一定の親族の地位からも発生する(親族的請求権)。
若干具体的にいうと、ある物の[[所有権]](実体法上の権利)を有している者 (X) が、当該物を他人 (Y) に奪われた場合、Xの所有権は、当該物を返還するようYに対して要求できる権利(請求権、いわゆる物権的請求権)として把握される。そして、そのような返還請求権を満足させるための民事訴訟法上の権利として、裁判所に対して訴えを提起し審判を受ける権利(訴権)が把握される。
もっとも、請求権の発生原因となる実体法上の権利が債権(例:損害賠償を請求することができる権利)である場合は、
== 英米法学に由来する請求権概念 ==
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つまり、ドイツ法学に由来する請求権概念は、実体法上の権利と訴権とを媒介する概念として用いられるのに対し、英米法学に由来する請求権概念は、他人との関係を念頭に置いた概念であるという差異があり、両者は対応する概念ではない。
== 関連項目 ==
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