「民事訴訟法」の版間の差分

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=== 処分権主義 ===
訴訟手続の開始、審判範囲の特定、訴訟手続の終了については、当事者の自律的な判断に委ねられるという原則のことである。民事訴訟の対象となる私人間の権利関係については[[私的自治の原則]]が認められるため、この原則を民事訴訟手続にも反映したものといえる<ref>同旨、和田吉弘『基礎からわかる民事訴訟法』商事法務 東京 2012年 68頁。</ref>
;訴訟手続の開始
:私人間に権利関係をめぐる紛争があっても、裁判所としては、当事者から紛争を解決したい旨の申立て(訴え)がなければ訴訟手続を開始することはしない。一見当たり前のようであるが、訴訟以外の裁判所の手続中には、申立てがなくても職権で手続を開始するものもある(例えば、[[民事再生法|民事再生手続]]で再生計画案が認可されなかった場合の[[職権]]による[[破産]]手続開始決定など)。
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民事訴訟において弁論主義が採用される根拠としては、[[私的自治の原則|私的自治]]の訴訟上の反映とする説(本質説ないし私的自治説)が通説である。これを前提に、近年は、当事者が訴訟資料を限定できる権能とそれによる責任こそが弁論主義の本質であり、当事者が訴訟資料を提出できる権能([[攻撃防御方法]]提出権、弁論権)とそれによる責任は職権探知主義にも妥当するものであって両者は区別すべきだとする議論が有力化しつつある。
;第1テーゼ(当事者が主張しない事実の扱い)
:その事実を当事者が主張しなければ、判断の基礎とすることはできない<ref>同旨、和田吉弘『基礎からわかる民事訴訟法』商事法務 東京 2012年 233頁。</ref>。例えば、貸金返還請求訴訟において、被告が既に[[弁済]]していることが証拠上認められる場合であっても、当事者が弁済の事実を主張していない限り(例えば、そもそも[[消費貸借]]契約自体が不成立という争い方しかしていない場合など)、弁済の事実があったことを前提に判断をすることはできない。
;第2テーゼ(当事者間に争いのない事実の扱い)
:その事実について、当事者間に争いがない事実はそのまま判断の基礎としなければならない<ref>同旨、和田吉弘『基礎からわかる民事訴訟法』商事法務 東京 2012年 233頁。</ref>。例えば、貸金返還請求訴訟において、被告が既に弁済していることが証拠上認められる場合であっても、被告自身が未だ弁済していないという自己に不利益な事実を認めている場合は、弁済をしていないことを前提に判断しなければならない。
:しかしこの場合も、通説ではそのまま判断の基礎とされる当事者間に争いがない事実とは[[主要事実]]であるとされているため、[[間接事実]]にかかわる証拠や自白において、たとえ当事者間に争いがなかったとしても、必ずしもそれがそのまま判断の基礎とされるわけではない。
;第3テーゼ(職権証拠調べの禁止)
:[[事実認定]]の基礎となる[[証拠]]は、当事者が申し出たものに限定される<ref>同旨、和田吉弘『基礎からわかる民事訴訟法』商事法務 東京 2012年 233頁。</ref>。例えば、貸金返還請求訴訟において、被告が既に弁済したか否か証拠上はっきりしない場合で、裁判所としては別の証拠があれば事実認定できると考えた場合でも、当事者が申出をしない限りその別の証拠を調べることはできない。
:なお、大正旧民事訴訟法第261条では職権による証拠調べがあったが、第2次大戦後に刑事訴訟法全面改正時に削除された経緯がある。
 
== 脚注 ==
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== 関連項目 ==