「失楽園」の版間の差分

削除された内容 追加された内容
Addbot (会話 | 投稿記録)
m ボット: 言語間リンク 37 件をウィキデータ上の d:q28754 に転記
WP:NOTESSAY
7行目:
 
ミルトンは[[悪魔学]]の専門家ではなかったが、その当時に見られた[[悪魔]]に対する様々な説を総合した独自の解釈を作中に盛り込んだ。ミルトンによる解釈はその後の[[キリスト教]]に影響し、殊にルシファーに関する逸話に大きな影響を与えた。ミルトンの詩の中では、ルシファーはヤハウェの偉大さを知りつつ、服従よりも自由に戦って敗北することを選ぶ、一種の英雄として描かれる<ref>本作は[[清教徒革命]]のあとで執筆されており、そしてミルトンは共和派、すなわち自由のために絶対君主たる王と戦った側であった。</ref>。
 
一方、人間[[アダム]]は、[[イヴ]]の誘惑によって[[禁断の果実]]を食べてしまう弱い存在ではあるが、いったんは神の命令に背くものの、自ら罪を犯したことを認め、悲哀を胸に抱いて己の罪の報いを自らの意思によって引き受ける、偉大な魂の持ち主として描かれる。
 
この他、ヤハウェの意思のもとアダムを追放する任を厳然公正に全うしながらもなお彼らへの憐憫を思わせる[[ミカエル]]、冷静沈着にして勇敢凛乎とした[[ガブリエル]]、ヤハウェの命によってアダムたちを優しく諭す「友誼心厚き天使」[[ラファエル]]、何億という反逆天使の憎悪を受けながら毅然とヤハウェのもとへ立ち返る[[アブディエル]]など、心清く正しいながら(あるいはそれゆえに)読者たる人間にも十分に共感できうる天使たちが登場する。
一方、堕天使たちも大いに魅力的である。[[サタン]]の片腕にして賢者のごとく威厳を湛える[[ベルゼブブ|ベルゼブル]]、勇猛果敢にして天使を圧倒するため生命も惜しまぬ猛将[[モレク]]、容貌絶美にして悪徳の権化たる[[ベリアル]]など、我々人間の持つ悪を極めたような悪魔たちが、世界最初の反逆者・悪行者たるサタンの同胞として、物語に更なる精彩を与える。
 
ミルトンはこれらの描写によって[[被造物]]における崇高を描きながら、それを超えた創造者としてのヤハウェの偉大さを称えようとした。特に、ヤハウェの御子(すなわち[[キリスト]])が、サタンの引き起こした[[原罪]]を贖うため自らを「贖罪」の贄とする旨、父なる主に申し出るくだりは、キリスト教の本質を的確に表現している。『創世記』においてヤハウェが蛇へ宣告した「私は女の胤とお前との間に敵意を置く。お前は女の胤のかかとを砕き、女の胤はお前の頭を砕くだろう」との言葉の本質を示しているのである。
 
== 関連書籍 ==