「NHKスペシャル シリーズ 「JAPANデビュー」」の版間の差分

削除された内容 追加された内容
120行目:
 
=== NHK内部の声 ===
『[[正論 (雑誌)|正論]]』に掲載されたNHK現役職員の匿名証言<ref>[http://www.sankei.co.jp/seiron/etra/no12/ex12.html 別冊『正論』THE SEIRON Extra.12「亡国のモンスター・メディアを斬る  朝日新聞・NHKの大罪」]2009年11月18日初版第一刷発行。P.276「こんなに杜撰だったJデビューの製作現場」</ref>によれば、もともとNHK内部でも同番組への疑問の声が多く、放送直後から各職場で「これ、やばくない」「やりすぎだよ」との声があったという。結果としてNHKが最も力を入れるNHKスペシャルとしては前代未聞の抗議の嵐であり、このNHK職員は外部の有識者や専門家と会う際に「NHKはどうしちゃったの」と何度も聞かれたことも明かした。
 
=== 批判および問題点の指摘 ===
136行目:
 
==== 日英博覧会の表現 ====
1910年に開催された日英博覧会で台湾の先住民族・パイワン族の生活を紹介した企画を番組内で、「人間動物園」と表現したことについてNHKは、取材協力者の[[:fr:Pascal Blanchard (historien)|ブランシャール]]<ref>著書{{Cite book|title=Human Zoos: Science and Spectacle in the Age of Colonial Empires |editor=Pascal Blanchard , Nicolas Bancel , Gilles Boetsch , Eric Deroo , Sandrine Lemaire|year=2009|publisher=Liverpool Univ Pr}}</ref>の指摘する英国や仏国の考え方を基として野生動物商人[[ハーゲンベック]]の回想録にある独語の言葉を訳し、[[吉見俊哉]]の著書<ref>吉見俊哉『博覧会の政治学 - まなざしの近代』 中央公論社〈中公新書〉、1992年。</ref>を参考にしたとしている<ref name="NHK説明1"/><ref name="NHK説明2"/>。しかし朝日新聞は、パイワン族が住む村の村長は「先達が海外で我々の文化を広めたことは村の誇りとして語り継がれている」と話し、又そのような感情を番組で紹介されなかったと報じた<ref name="asahi"/>。産経新聞は「日本政府がパイワン族の実演を『人間動物園』と呼んだことはない」(訴状)<ref name="sankei20090625">{{Cite web|date=2009年6月25日|url=http://sankei.jp.msn.com/economy/business/090625/biz0906251726014-n1.htm|title=歪曲報道でNHK相手に8400人が集団提訴|publisher=産経新聞|accessdate=2009年6月26日}}</ref><ref name="産経平成21年6月25日-2">{{Cite news|date=2009-06-25|url=http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/090625/trl0906251844016-n1.htm|title=【NHK提訴】JAPANデビュー どこが問題になっているのか|newspaper=MSN産経ニュース}}</ref>、「パイワン族に対する人権問題」(出演者)だとして訂正を求める声が挙った<ref name="sankei20090625"/><ref name="産経平成21年6月25日-2"/><ref group="注記">『日英博覧会事務局事務報告』によれば、日本政府による公式の名称は「台湾蕃人の生活状態」である。蕃は野蛮人のことで、後の博覧会でも蕃屋と称する同様のものがつくられた。</ref>と報じた。
 
番組に出演し、「人間動物園」に関連して登場したパイワン族の女性が涙を流しながら話す場面に「悲しいね。この出来事の重さ語りきれない」との字幕が付けられて放送されたが、[[朝日新聞]]の取材によると、この女性は「涙を流したのは父親を懐かしく思ったから」「説明もなく突然(NHKが)来て、父親の写真を見せられただけ」と証言しており、番組の発言を専門家が翻訳したところ「何と言えばいいか。(父のことは)よく分からない」と語っていると伝えられた。同紙は、NHKの「発言と字幕は違っていない。見せ物になったこともディレクターが説明した」との反論も合わせて伝えた<ref name=asahi/>。産経新聞の取材として、番組に出演したパイワン族は「番組を見るまで人間動物園の言葉を全く知らなかった。(放送された)『かなしいね』などと述べた自分のコメントは、人間動物園に対して(かなしいと)述べたものではなく、(取材者から示された写真の)亡父を見て『かなしい』と語ったものだ」と説明した、と伝えた<ref name="産経210828"/>。
151行目:
1938年(昭和13年)に出版された『東洋歴史大辞典<ref>[[下中弥三郎|下中彌三郎]]編『東洋歴史大辞典』 平凡社、1938年(1986年に臨川書店から再版)。</ref>』によれば、当該台湾の戦いのことを「台湾の役」(1874年の[[台湾出兵]]も台湾の役と表現しており2度目)と表記している。同書によれば[[台湾民主国]]は20日間で瓦解し宣戦布告もなく日清戦争の一環として行われたとしている。また日本の公文書では明治廿七八年役の延長という扱いである。なお日本で一般的な呼称は当時の公文書の表記および[[台湾平定宣言]]による'''[[台湾平定]]'''もしくは'''台湾征討'''である。
 
NHK経営委員会の第1095回会議では「日台戦争」について、日本と台湾の戦争という「歴史的事実」がないのなら、あったように内容を放送することは放送法に違反するのではないか、との問いが小林英明委員から出された。応じた日向英実理事(放送総局長)は「歴史的な事実」は年代ごとに様変わりするとして、[[支那事変|日華事変]]が今日では日中戦争と呼ばれていることを例に挙げた。さらに小林委員が「学会で多数説でなく、少数説や異説なら、そう説明するのが正しい放送」だと意見を述べたが、これに日向理事が、一説とは考えていないと答えた<ref name="産経626"/><ref name="NHK経営委員会1095回">{{Cite web|date=2009-06-12|url=http://www.nhk.or.jp/keiei-iinkai/giji/g1095.html|title=NHK経営委員会|過去の議事録|第1095回|publisher=NHK|accessdate=2009年9月3日}}</ref><ref namegroup="注記">一般に学会は専門用語を制定する機関ではない。</ref>。
 
[[日本李登輝友の会]]の抗議声明に対する平成21年4月14日付NHKエグゼクティブ・プロデューサー河野伸洋の名による回答では「日本の専門家が1990年代に名付け」たと説明<ref name="友の会"/>。後日、プロジェクトJAPANの公式サイトに記されたNHKの説明では、用語は「1995年、『日清戦争百年国際シンポジウム』から使われていました」とし、使用されている文献3点を示した<ref name="NHK説明1"/><ref>檜山幸夫 「日台戦争」『日清戦争 秘蔵写真が明かす真実』講談社、1997年、243-258頁。他、119・291-293頁。</ref>。また台湾平定に際して戦闘は苛烈で日本軍の死者が5000人に上った<ref name="下中" group="注記" />ことに着目している。
 
一方、産経新聞や「日本李登輝友の会」は、4000人以上は[[マラリア]]による病死であり「戦死」者と言えるのか<ref name="下中" group="注記" >下中彌三郎編『東洋歴史大辞典』によれば、日本軍の人的被害の内訳は戦死者が164人、戦傷者は500人であったが、戦病死者は[[北白川宮能久親王]]も含め4640人、戦病で戦線を離脱した者が2万7000人であったとしている。なおここには軍夫の死者は含まれていない。一方台湾側の戦死者は日本軍が把握している数では1万4千人ほどで、清朝時代の資金で雇っていた兵はほとんど含まれず、義勇兵と、無差別殺戮の被害にあった一般人の総計である。</ref><ref group="注記">日清戦争終了時、病死は靖国神社の合祀基準に満たなかったが、日本政府は後に認識を改め、戦病死者を追加合祀した。</ref>、また[[国立国会図書館]]の論文検索でこの用語は見つからず学説と呼べる代物なのか<ref group="注記">NDL-OPACは全文検索ではないので、本や論文の表題になければ検索でヒットしない。</ref>、と指摘する<ref name="友の会"/><ref name="産経新聞53"/>。「日本李登輝友の会」の関係者は、「日台戦争」という用語は平成に入って用いられた造語であり、「一部の大学教授が使っているが原典は戦争の定義もしておらず、治安回復のための掃討戦に過ぎない」と批判した<ref name="産経平成21年6月25日-2" />。
 
==== 改姓名・日本語教育・他 ====
229行目:
| accessdate = 2010-01-09
}}</ref><ref name="友の会"/>。
* 4月21日、日本文化チャンネル桜が、番組に出演した台湾人を追跡取材し検証番組を放送した<ref>「[http://www.youtube.com/watch?v=dDMxsesr3TY 【台湾取材レポート】]・[http://www.youtube.com/watch?v=s0xWSlGhCMM 2]・[http://www.youtube.com/watch?v=tAL0FzMAwks 3]・[http://www.youtube.com/watch?v=8SOhCw4w_5M 4]・[http://www.youtube.com/watch?v=eXvmpZbfooA 5]・[http://www.youtube.com/watch?v=e9rYQ7ndA4I 6]・[http://www.youtube.com/watch?v=9lO3fbu508A 7]・[http://www.youtube.com/watch?v=m76GwZ9PNoA 8]」 {{YouTube channel|SakuraSoTV|チャンネル桜}}、2009年4月21日ほか ([桜 H21/4/21]付の動画は8分割)。</ref>。
* 4月22日、番組にも出演した蒋松輝と藍昭光が連名で「ご参考まで」という題名のメールをNHKに提出した。メールの内容は「人間動物園」「日台戦争」「漢民族」「中国語」について『別の表現が適切でないか』という趣旨だった(下記「6月9日」参照)。
* 4月23日、自民党の[[清和政策研究会|町村派]]総会で同番組に対し「台湾は[[李登輝]]元総統など親日家が多いのに番組は反日の部分だけを偏向して報じた」との批判が挙がる<ref>{{cite news
248行目:
* 5月初め、「プロジェクトJAPAN」ディレクター鎌倉英也が、労組や労働闘争の支援団体「レイバーネット日本」<ref>http://www.labornetjp.org/</ref>で『「JAPANデビュー」のディレクターが語る右翼の圧力の実態 』というタイトルで講演することが「レイバーネット日本」ホームページ上で告知されネットで注目を集めた。その直後、該当ページから「右翼の圧力」に関する記述が削除され、文章が修正された<ref group="注記">以下全て原文ママ。(修正前)「優れたドキュメンター番組を見ながら制作者(ディレクター)との討論を通してメディアリテラシーの養成をめざす。通説の検証し、事実を掘り下げて伝えるために右翼などの圧力で制作しづらくなってきる現場からの声も交えて報告、討議する企画です」 / (修正後)「優れたドキュメンター番組を見ながら制作者(ディレクター)との討論を通してメディアリテラシーの養成をめざす。通説の検証し、事実を掘り下げて伝えるために現場で格闘してきた制作者の声を紹介できればと思います」[http://www.labornetjp.org/news/2009/1240025472795staff01 MediR講座『制作者との対話~TVドキュメンタリーを通して社会を考える』] </ref>。
* 5月12日、NHKの第1094回経営委員会において「アジアの“一等国”」が議題とされた。NHKの[[福地茂雄]]会長は「番組を3回見ましたが、確かに見る人の見方によっては国辱だというところはあります」と発言した。ただし、福地会長は同時に、「日本の植民地政策に軸足を置き、アジアの一等国を目指していた当時の日本の姿を描こうという制作意図から作った番組ですので、番組の内容はこれでいいのではないかと思います」「軸足を植民地政策に置いたら、こういったことはありうるだろうという感じがしました」と発言し、最終的には問題がないとした<ref name="第1094回">{{Cite web|date=2009年5月29日|url=http://www.nhk.or.jp/keiei-iinkai/giji/g1094.html|title=NHK経営委員会|過去の議事録|第1094回|publisher=NHK|accessdate=2009年9月20日}}</ref>。福地会長は同様の見解を明後日の会見でも発している。
* 5月14日、NHKの[[福地茂雄]]会長は定例会見において「あの番組はいいところも随分言っていると思った」「(当時の)産業・インフラの芽が今の台湾の産業につながっているという気がしたし、教育でも規律正しい子供たちが映っており、一方的とは感じなかった。文献や証言に基づいているし、(取材対象の)発言の“いいとこ取り”もない」として番組に問題はないとの認識を表明した<ref>[http://sankei.jp.msn.com/economy/business/090514/biz0905141912025-n1.htm 「一方的ではない」 N Nスペ「偏向番組問題」で福地会長]『産経新聞』2009年5月14日。</ref>。
* 5月16日以降東京、大阪、名古屋や[[台北]]などで今回の問題でNHKへの抗議活動が行われ<ref>読売新聞[[2009年]](平成21年)6月5日。</ref>、東京で行われた16日の抗議デモには約1100名が参加<ref>[http://www.ch-sakura.jp/topix/1041.html NHK「JAPANデビュー」に抗議する国民大行動]日本文化チャンネル桜</ref>。
* 5月17日、[[中華民国]]の自由時報は、NHKによる[[媚中]]欺台報道によって[[日台関係]]を離間するものであると報じる<ref name="LibertyTimes">[http://www.libertytimes.com.tw/2009/new/may/17/today-p6.htm NHK媚中欺台報導 台日連線抗議] 自由時報 2009-5-17</ref>。