「万有引力定数」の版間の差分

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| 画像 =[[File:NewtonsLawOfUniversalGravitation.svg|270px]]</br>[[万有引力]]の法則における万有引力定数 ''G''
| 記号 =''G''
| 値 =6.673 84(80){{E|-11}} m<sup>3</sup>s<sup>-2</sup>kg<sup>-1</sup> CODATA2010推奨値
| 不確かさ = 1.2 × 10<sup>-4</sup>
| 定義 =重力相互作用の大きさを決定する定数
| 語源 =
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ニュートンの重力理論を修正・拡張した[[アルベルト・アインシュタイン]]の[[一般相対性理論]]でも、''G'' が登場する。一般相対性理論では、まず物体が[[時空]]を曲げ、その曲がりにより物体の運動が影響を受けるという段階を踏む。万有引力定数は最初の段階で物体が時空を曲げる度合いに関与する。
 
== 定数の値 ==
万有引力定数の[[科学技術データ委員会|CODATA]](2010年)推奨値は以下の値である<ref name="CODATA">{{cite web|
url=http://physics.nist.gov/cgi-bin/cuu/Value?bg |
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}}</ref>。
:<math>G = 6.673\;84(80) \times 10^{-11} \; \mbox{m}^3 \; \mbox{s}^{-2} \; \mbox{kg}^{-1}</math>
ただし、カッコ内の数値は表された最後の桁を単位とした数値の[[標準不確かさ]]を表す。 上記の定数は1 kgの質量の2つの物体が1 m離れた時の引力を単位 N ([[ニュートン]]) で表した値と等しく非常に小さい値である。たとえばそれぞれが質量1000 kgの物体が1 m離れて引き合う力は約 6.7 &times; 10<sup>&minus;5</sup> Nであり、大体地球上の6.8 mgの質量の物体に働く重力に等しい。
 
== キャヴェンディッシュによる測定 ==
== 測定の歴史・精度 ==
万有引力定数を定めるには、互いに質量のわかっているものの間に働く万有引力を精密に測定せねばならない。万有引力定数は[[ヘンリー・キャヴェンディッシュ|キャヴェンディッシュ]]による1798年の鉛球実験 ([[キャヴェンディッシュの実験]]) に基づいて初めて計測された。これは針金で吊るした棒の両端に二つの鉛球をつけ、固定した別の鉛球との間に働く力を計測するものであった。キャヴェンディッシュの実験はもともと地球の密度を求めるためのものとして考案されたもので、万有引力定数が求められたことによって、既知の[[重力加速度]]と地球の半径から地球の質量そして密度がはじめて求められた。この実験で求められた万有引力定数は 6.74 &times; 10<sup>&minus;11</sup> m<sup>3</sup>s<sup>&minus;2</sup>kg<sup>&minus;1</sup> であり、現在知られている上記の値と比較しても相当に高精度なものであった。
 
== 精度の低さ ==
万有引力はこのように非常に弱い力であるとともに、周囲の物質による影響が除去しにくいために測定が非常に難しい。上に示したCODATA 2010の値にも、1.2 × 10<sup>-4</sup>の[[標準不確かさ]] がある。この[[不確かさ]]は、様々な重要な[[物理定数]]の中では最も大きい<ref>例えば、[http://physics.nist.gov/cuu/Constants/Preprints/lsa2010.pdf] "CODATA Recommended Values of the Fundamental Physical Constants:
2010" TABLE XLVIII Comparison of the 2010 and 2006 CODATA
adjustments of the values of the constants by the comparison
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2010" FIG. 6 Values of the Newtonian constant of gravitation G in
Table XXIV and the 2006 and 2010 CODATA recommended
values in chronological order from top to bottom p.59</ref>。このような測定精度の低さのため[[CODATA]]推奨値も時代と共に以下のように変遷している<ref name="CODATA Older values">{{cite web| url=http://physics.nist.gov/cuu/Constants/background.html | title=Older values of the constants | work=CODATA Internationally recommended values of the Fundamental Physical Constants | publisher=Physics Laboratory, NIST | accessdate=2010-05-20}}</ref>。CODATA2010推奨値も基礎[[物理定数]]CODATA2006推奨値比べは変化が著しい。6.6×10<sup>-5</sup>も小さく<ref>[http://physics.nist.gov/cuu/Constants/Preprints/lsa2010.pdf] B. Brief overview of CODATA 2010 adjustment, 4. Newtonian constant of gravitation G
, CODATA Recommended Values of the Fundamental Physical Constants:2010∗, March 15, 2012, p.4</ref>、基礎[[物理定数]]としては変化が著しい。
: ''G'' = 6.6720(41) × 10<sup>-11</sup> m<sup>3</sup>s<sup>-2</sup>kg<sup>-1</sup> (CODATA1973)<ref>E.R.Cohen, B.N.Taylor, ''J.Phys.Chem.Ref.Data'', '''2''',663(1973).</ref>
: ''G'' = 6.67259(85) × 10<sup>-11</sup> m<sup>3</sup>s<sup>-2</sup>kg<sup>-1</sup> (CODATA1986)
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: ''G'' = 6.67384(80) × 10<sup>-11</sup> m<sup>3</sup>s<sup>-2</sup>kg<sup>-1</sup> (CODATA2010)[http://physics.nist.gov/cgi-bin/cuu/Value?bg|search_for=g]<ref>1982年から2010までの主な測定結果については、[http://physics.nist.gov/cuu/Constants/Preprints/lsa2010.pdf]TABLE XVII Summary of the results of measurements of the Newtonian constant of gravitation relevant to the 2010 adjustment. p.48が参考になる。</ref>
 
万有引力定数の精度が4桁程度しかないことは、[[連星パルサー]]の質量の測定精度などにも影響する。また、ミリメートル以下の範囲でニュートンの万有引力が精度良く確かめられていないことから、小さなスケールでは重力理論の変更を考慮する余地が残されていて、近年、小さなスケールで[[余剰次元]]を持つ5次元膜宇宙モデル([[ブレーンワールド]]モデル)が盛んに研究されている。
 
=== その他の値 ===
[[国際測地学協会]]では1999年に万有引力定数の値として ''G'' = 6.67259(30) × 10<sup>-11</sup> m<sup>3</sup>s<sup>-2</sup>kg<sup>-1</sup> を用いることを定めている<ref>東京天文台編纂 『理科年表2009』 丸善</ref>。[[アメリカ航空宇宙局|NASA]]でもこの値を採用している<ref name="NASA">{{cite web| url=http://ssd.jpl.nasa.gov/?constants | title=Astrodynamic Constants | work= | publisher=NASA | accessdate=2010-05-20}}</ref>。
 
2007年には原子干渉計を用いた測定による万有引力定数として、''G'' = 6.693(21) × 10<sup>-11</sup> m<sup>3</sup>s<sup>-2</sup>kg<sup>-1</sup> という、それまでの測定結果とは著しく異なった値が[[サイエンス]]に報告された<ref name="Fixler">{{Citation |author1=J. B. Fixler |author2=G. T. Foster |author3=J. M. McGuirk |author4=M. A. Kasevich |title=Atom Interferometer Measurement of the Newtonian Constant of Gravity |url=http://www.sciencemag.org/cgi/content/abstract/315/5808/74 |date=2007-01-05 |volume=315 |issue=5808 |pages=74–77 |doi=10.1126/science.1135459 |author=Fixler, J. B. |journal=Science}}</ref>。
 
万有引力定数の精度が4桁程度しかないことは、[[連星パルサー]]の質量の測定精度などにも影響する。また、ミリメートル以下の範囲でニュートンの万有引力が精度良く確かめられていないことから、小さなスケールでは重力理論の変更を考慮する余地が残されていて、近年、小さなスケールで[[余剰次元]]を持つ5次元膜宇宙モデル([[ブレーンワールド]]モデル)が盛んに研究されている。
 
== 万有引力定数と質量の積 ==
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従って、地球質量の精度は万有引力定数の測定精度に依存し、CODATA 2006による地球質量は ''M''<sub>⊕</sub> = 5.9722(6) ×10<sup>24</sup> kg と計算され<ref name="IAU2009" />、国際測地学協会の協定値では ''M''<sub>⊕</sub> = 5.9737(3) ×10<sup>24</sup> kg と計算される。NASAでは ''M''<sub>⊕</sub> = 5.9736 ×10<sup>24</sup> kg としている<ref name="NASA Earth">{{cite web|url=http://nssdc.gsfc.nasa.gov/planetary/factsheet/earthfact.html |language=英語|title=Earth Fact Sheet |author=Dr. David R. Williams|publisher=NASA |accessdate=2010-05-20}}</ref>。
 
== 一般相対性理論とアインシュタインの重力定数 ==
[[アルベルト・アインシュタイン]]の[[一般相対性理論]]においては、[[重力場]]を記述する[[アインシュタイン方程式]]の中に万有引力定数 <math>G</math> が現れる。アインシュタイン方程式は、
:<math>G_{\mu\nu} = {8 \pi G \over c^4} T_{\mu\nu}\,</math>