「自動車排出ガス規制」の版間の差分

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[[1970年]](昭和45年)、運輸技術審議会自動車部会において「自動車排出ガス対策基本計画」が策定され、昭和48年・50年の二段階での排出ガスの低減目標を設定。この時点では東京都内の排出ガス総量を昭和50年において昭和38年相当量とし、昭和55年において昭和36年相当量とすることを目標とするという事を主旨としていた<ref name="unyu46">[http://www.mlit.go.jp/hakusyo/transport/shouwa46/ind040304/001.html 第1節 自動車による公害の現状と対策 - 2.自動車排出ガス - 昭和46年運輸白書]</ref>。同時に、同年5月に[[東京都]][[新宿区]][[牛込柳町]]にて発覚した[[牛込柳町鉛中毒事件]]への対策の為、段階的に[[有鉛ガソリン]]を[[無鉛化]]する方針も決定された<ref group="注釈">結果的に、昭和53年規制以降の三元触媒の普及にあたり、触媒の寿命を縮める要因の一つが除去される道筋が付けられた。</ref>。
 
そして[[1973年]](昭和48年)、新車及び使用過程車に対する排ガス試験項目が[[炭化水素]]及び[[窒素酸化物]]にも拡大される形で昭和48年排出ガス規制が成立<ref name="kankyo48">[http://www.env.go.jp/policy/hakusyo/honbun.php3?kid=148&serial=1162&bflg=1 昭和48年版環境白書 - 公害の現況および公害の防止に関して講じた施策 - 第2章 大気汚染の現況と対策 - 第2節 自動車公害の現状と対策 - 3 自動車排出ガスの規制強化]</ref>。同時に、1970年大気法改正法(マスキー法)を直接の下敷きにする形で、同法が目標としていた'''1975年式以降のCO / HC及び1976年式以降のNOxは、それぞれ1970年式以前のCO / HC及び1971年式のNOxの少なくとも1/10以下に低減する'''という環境基準を、日本の排出ガス規制においても正式に適用する事が決定(昭和50年及び51年規制)されたのである<ref name="kankyo48"/>。
 
=== 昭和48年以後 ===
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== 関連した規制 ==
* [[マスキー法]]([[エドマンド・マスキー]])
* [[エネルギーの使用の合理化に関する法律]](省エネ法) - 1979年施行。制定当時は日本版[[CAFE]](企業別燃費基準)の性格も帯びており、''0.75-1tクラスで13km/L''という[[燃費]]目標が定められたほか、それまでの''触媒の定期交換義務を廃止''するなど、自動車メーカーの排ガス対策機器の構造や採用動向にも影響を与えた。
* [[平成10年アイドリング規制]] - 1998年施行。識別記号'''GF'''(定員10人以下)
* [[新車加速騒音規制]] - 主に[[オートバイ]]に適用される[[マフラー_(原動機)|排気管]]やエンジンの音量規制。
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=== 海外での規制 ===
==== 北米 ====
[[アメリカ合衆国]]と[[カナダ]]([[:en:Environment Canada{{仮リンク|カナダ環境省]]|en|Environment Canada}})がそれぞれ独自の規制を定めている。
 
米国内においては大気浄化法を根拠規定として、連邦政府が定める規制と各州が独自に定める規制が存在し、中でも[[カリフォルニア州]]が周年の排ガス検査の義務付け([[:en:California Smog Check{{仮リンク|カリフォルニア州スモッグチェック制度]]|en|California Smog Check}})を含めた特に厳しい規制を課している事で知られている。その他の49州は特に州による規制値の制定が無い限りは、原則として1994年以降義務付けとなった[[アメリカ合衆国環境保護庁]]('''EPA''')の定める{{仮リンク|米連邦排出ガス規制値([[:|en:|US_Emission_standard]])}}に依る。米国では1996年以降ECUの通信規格の'''OBD-II'''規格への完全移行を達成、概ねこの世代を境に規制基準値の強化が行われている。
 
カリフォルニア州の規制は[[:en:California Air Resources Board{{仮リンク|カリフォルニア州大気資源局]]|en|California Air Resources Board}}('''CARB''')により定められており、州知事命令(Executive Order、'''EO''')により、具体的な適用車種や[[モデルイヤー]]の範囲、規制値などが決定される。カリフォルニア州はその地形や交通事情などの事由から、全米50州でも特に大気汚染が深刻であったとされ、CARBが創立された1967年以降、米国のみならず世界的にも非常に先進的な規制政策が実施された。その為、自動車メーカーはカリフォルニア州で販売される車種には新型の排ガス対策機器の搭載や触媒の連装化、エンジン自体の特殊な改修を盛り込んだ'''カリフォルニア州仕様'''を設定しなければならない程であった。現在でも米国内の排ガス対策機器の補修部品(特に触媒)においては、カリフォルニア州向けの専用品がラインナップされており、同州州知事命令のどの世代(EO Number)に適合しているかを示す表記が行われる事が多い。前述の1994年全米規制値のモデルともなった1993年時点のCARB規制値では、日本の53年規制に匹敵する基準が課され、1990年以降段階的に制定されている各種の低公害車('''LEV''')仕様においては、日欧の規制値を上回る厳しい値が制定される事も珍しくなくなっている。
 
カリフォルニア州以外では、[[テキサス州]]の[[:en:Railroad Commission of Texas{{仮リンク|テキサス鉄道委員会]]|en|Railroad Commission of Texas}}(RRC)が[[LPG自動車|LPGエンジン]]のみを対象に独自の規制値を定めている。これは同州の[[ガス田]]や[[パイプライン]]開発などのエネルギー産業に対する規制と密接に絡むものである。
 
なお、米連邦内では[[石油危機]]を契機に1978年から'''企業別燃費基準'''([[CAFE]])が世界に先駆けて制定された。1975年前後の各社の排ガス対策はキャブレターの予熱等の霧化効率向上(CO、HC抑制)、[[希薄燃焼]]や[[バルブオーバーラップ]]の増大等で[[燃焼室]]温度を下げる'''エンジンの改良'''(NOx抑制)、EGRやサーマルリアクターなどの後処理装置の追加などが主流で、高価で信頼性がまだ不十分<ref group="注釈">[[1970年代]]当時は、触媒は耐久性の課題から''定期交換を要するもの''との認識や法整備がされており、交換コストを下げる為に排気管形状に合わせて成型固化された[[モノリス]]式ではなく、粒状の触媒を排気管に詰め込み、触媒のみの定期交換を容易とした[[ペレット]]式を採用する事が多かった。しかし、[[ウール]]や[[ヘチマ]]状の多孔質とする、或いは[[ハニカム]]・[[レンコン]]様の孔を開ける等の手法が採れたモノリス式と異なり、ペレット式は浄化効率や排気抵抗の面で難があり、排気圧力の過大等の要因で排気管内のペレットの保持構造が破損した場合、排気口から車外にペレットが飛散する恐れがあった。</ref>であった[[還元]]・[[酸化]]などの'''二元触媒'''や三元触媒は、採用に二の足を踏むメーカーも存在した。しかし触媒以前の従来型の排ガス対策、特にエンジンの改良は排ガス性能向上と燃費が[[トレードオフ]]の関係になりやすかった為、CAFEの制定以降は従来型の排ガス対策では浄化性能と燃費基準の両立が次第に難しくなり、各メーカーは構造面や方向性における転換を迫られる事となった。その後、三元触媒の製造技術の向上により排気効率や耐久性が確保され、必ずしも定期交換を要さなくなった事から、80年代初頭より三元触媒にO2センサーを組み合わせ、[[空燃比]]測定による燃調の[[フィードバック]]制御を電気的に行う事で、浄化性能と出力性能、高燃費の全ての要素を満足する三元触媒方式が今日まで続く世界的な[[デファクトスタンダード]]となった<ref name="subaru">[http://www.jsae.or.jp/~dat1/interview/interview48.pdf 排出ガス対策を中心にしたスバルエンジンの開発 山岸曦一] - [[社団法人]][[自動車技術会]]</ref>。
 
==== 欧州 ====
旧西ドイツ時代の1985年から[[:de:Abgasuntersuchung|独自の規制値]]({{仮リンク|西独排出ガス規制|de|Abgasuntersuchung}})を定めていた[[ドイツ]]のような事例もあるが、今日のヨーロッパ諸国は原則としては[[ヨーロッパ連合]](EU)が定める[[:en:European_emission_standard{{仮リンク|EU圏内統一排出ガス規制値]]|en|European_emission_standard}}に依り、それぞれの国内法にて規制値を制定している。
 
EUの規制値はその世代により「'''ユーロx'''(数字)」の表記で区分が行われ、日本に於いては'''[[2ストローク機関]]搭載の[[オートバイ]]も規制対象'''となった'''ユーロ3'''でにわかに注目が集まった。現在はEU圏内では'''ユーロ6'''が適用されており、[[中国]]を始めとする[[新興国]]や[[発展途上国]]の多くも、ユーロ2やユーロ3等の世代の古い規格を準用している場合が多い。
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* [[CVCC]] - [[本田技研工業]]が開発した、世界で初めてマスキー法をクリアした副燃焼室式希薄燃焼エンジンの方式。
* [[ロータリーエンジン]] - エアポンプを用いた二次空気導入装置(サーマルリアクター)でマスキー法をクリア。Anti Pollutionの[[頭字語]]である'''AP'''のグレード名が用いられた。
* [[二次空気導入装置]](エアインジェクション/サーマルリアクター/スモッグポンプ/[[リードバルブ]]
* [[インテークマニホールド]] - [[ボルボ]]は1968[[モデルイヤー]]より[[エキゾーストマニホールド]]の熱でアイドリングから低負荷時のみ混合気を予熱する機構(このような機構は後に[[ターンフロー#.E5.88.A9.E7.82.B9|ヒートライザー]]とも呼ばれた)を採用。[[キャブレター]]とは別にインテークマニホールド側にもスロットルバルブが設けられ、エンジン負荷が高くなると自動的にマニホールド側のバルブが開いて混合気が予熱機構をバイパスする仕組みである。[[1968年]]当時の[[カリフォルニア州]]スモッグ監視委員会の調査では、同時期の各社の排ガス対策機器の中ではボルボの機構が最も簡素で合理的なものであったと評されている<ref>「[[ヤナセ]]ニュース - ボルボの排ガス浄化装置は一石何鳥?」『月刊自家用車 1969年(昭和44年)6月号』、[[内外出版社]]、110頁</ref>。
 
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=== それ以降の規制関連 ===
* [[三元触媒]]/酸化触媒/還元触媒 - 三元触媒として機能するためには、[[空燃比]]測定によるフィードバック制御が必須である。酸化触媒を経て登場した三元触媒は、後にほぼ全てのメーカーに採用された。
** スズキ・TC-53 - ハニカム構造の酸化触媒を二重に配置する事('''T'''win '''C'''atalyst)し、エアポンプで二次空気も供給する事で、2ストローク機関に置ける排ガス浄化を強化。これによりスズキは軽乗用車向けのT4A型とT5A型で昭和53年規制を突破<ref name="ozeki">小関和夫『スズキストーリー : 小さなクルマの大きな野望』三樹書房、2007年、[[ISBN]] 978-4-89522-503-8</ref>。
* [[排気再循環]] (EGR)
** [[NAPS]] - 日産の排ガス対策技術の総称。当初は酸化触媒を採用。
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* [[エンジンコントロールユニット]](ECU) - [[エアフロメーター]]とO2センサーによる空燃比制御も排ガス規制に貢献した。
** [[OBD]] - ECUの[[自動車の自己診断機能|自己診断機能]]の統一規格。各社まちまちであった通信規格の統合により、当局による排ガス基準値チェック体制の強化に貢献した。
* [[燃料噴射装置#電子制御式|電子制御燃料噴射装置]](EFI/EGI) - 単一のスロットルへ集中噴射するシングルポイント(SPI)[[キャブレタ各吸気ポ#電子制御式キャブレター|電子制御式キャブレター]]トに独立噴射を行うマルチポイント(MPI)に大別される。
* [[キャブレター#電子制御式キャブレター|電子制御式キャブレター]](ECC) - EFIに比較して安価であり、万一ECUが故障してもフィードバック制御が無くなるのみで走行自体は一応可能である点が、初期のEFIと比較して長所とされた<ref name="subaru"/>。
** いすゞ・I-CAS - '''I'''zusu '''C'''lean '''A'''ir '''S'''ystem。[[ゼネラルモーターズ|GM]]より供与された酸化触媒技術が主体。1975年式[[いすゞ・117クーペ|117クーペ]]では、70年に登場した日本初のEGIであるECGIに酸化触媒、EGR、二次空気導入装置を組み合わせたシステムを採用した。
* [[希薄燃焼]]