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==二重らせんの主要な特徴==
[[Image:DNA Overview.png|thumb|220px150px|DNAの二重らせん構造。主溝 (major groove) と副溝 (minor groove) が示されている。]]
二重らせんはDNAに関する多くの研究の中からワトソンとクリックのたどり着いた最も理想的なモデルだがでは以下構造には7つの重要な特徴が強調されていなお、DNAの構造は3種類あるが、次以下の特徴はB-DNAB型DNAのものである)
#二重らせんは'''2本の[[ヌクレオチド|ポリヌクレオチド]]'''からされる。
#二重らせんの2本のポリヌクレオチドはそれぞれ方向が逆である('''逆平行である''')。
#[[プリン (化学)|プリン]]および[[ピリミジン]]環は'''二重らせんの内部に配向'''している。
#二重らせんは[[右巻き、左巻き|右巻き(右手)]]である(右方向へまわりながら下る螺旋階段をイメージ)
#相補的な関係にある塩基は[[水素結合]]によって結ばれている。
#[[塩基]]は二重らせんの内部に、リン酸基をもつバックボーンは外側に配向している。
#らせん1回転あたり10.4塩基対存在する。
#一対の塩基は相補的な関係にある塩基はり、[[水素結合]]によって結ばれている。
#二重らせんの2本のポリヌクレオチドはそれぞれ方向が逆である('''逆平行である''')。
#二重らせん主溝と副溝の2種類の溝があ約10塩基対で一回転する。
#二重らせんには、主溝(major groove)と副溝(minor groove)がある。
#二重らせんは[[右巻き、左巻き|右巻き(右手)]]である(右方向へまわりながら下る螺旋階段をイメージ)。
以上が7つの特徴だが、1. の特徴が中でも証明に困難を要した部分と言われている。[[光学異性体]]の研究で有名な[[ライナス・ポーリング]]もDNAの立体構造について研究し、ワトソンとクリックの論文の数ヶ月前に三重らせんモデルを提案している。後にDNA密度測定により二重らせんが正しいことが証明された。
 
以上が7つの特徴だが、1. の特徴が中でも証明すること最も困難を要しがあっ部分と言われている。[[光学異性体]]の研究で有名な[[ライナス・ポーリング]]もDNAの立体構造について研究し、ワトソンとクリックの論文の数ヶ月前に三重らせんモデルを提案している。後にDNA密度測定により二重らせんが正しいことが証明された。
2. の特徴はプリン、ピリミジン環が内部であると同時に[[糖]]-[[リン酸]]に関しては外部に配向していることを説明している。なおプリン、ピリミジン環はらせん軸に対してほぼ直角に傾いている。
 
2. の特徴は反平行の二本鎖DNAのみが二重らせんを構築できることを説明している。[[デオキシリボース]]の5'側の配列を上流、3'側の配列を下流とする。
3.の特徴は[[エルヴィン・シャルガフ]]によって提案された塩基存在比の法則([[#二重らせんに貢献した研究|後述]])の証明となった。後に[[アデニン]] (A) と[[チミン]] (T) の間に2本の、[[グアニン]] (G) と[[シトシン]] (C) の間に3本の水素結合が存在することが示された。(詳しくは[[相補的塩基対]])
 
3. の特徴には、左巻きのZ型DNAという例外が知られている。
4. の特徴はDNAの二重らせんの数字的な部分も説明しており、例えばらせん一回転あたり螺旋軸の長さは34[[オングストローム]] (Å)(この長さを'''ピッチ''') 、したがって螺旋軸に沿った塩基対間の距離は3.4Å(この長さを'''ライズ''')、らせんの直径は20Åである。
 
54. の特徴は逆平行の二本鎖DNAのみプリン、ピリミジン環二重らせんを構築内部あると同時に[[糖]]-[[リン酸]]に関しては外部に配向していることを説明している。[[デオキシなおプボース]]の5'側の配列を上流3'側の配列を下流とすピリミジン環はらせん軸に対してほぼ直角に傾いている。
 
35. の特徴は[[エルヴィン・シャルガフ]]によって提案された塩基存在比の法則([[#二重らせんに貢献した研究|後述]])の証をうまく説するこなっができた。後に[[アデニン]] (A) と[[チミン]] (T) の間に2本の、[[グアニン]] (G) と[[シトシン]] (C) の間に3本の水素結合が存在することが示された。(詳しくは[[相補的塩基対]])
6. の特徴は二重らせんは完全に規則正しいらせんを描いているわけではないことをあらわしている。塩基の積み重なりと糖ーリン酸骨格のねじれの関係上、完全に規則正しい二重螺旋から鎖がずれ、螺旋に長さの違う2種類の溝が存在する。大きなほうを主溝、小さなほうを副溝という。主溝と副溝の存在は[[DNA複製|DNAの複製]]や[[遺伝子発現]]時に重要な立体構造であると考えられている。
 
46. の特徴はDNAの二重らせんの数字的な部分も説明しており、例えばらせん一回転あたり螺旋のらせん軸の長さは34[[オングストローム]] (Å)(この長さを'''ピッチ''') 、したがって螺旋らせん軸に沿った塩基対間の距離は3.4Å(この長さを'''ライズ''')、らせんの直径は20Åである。
7. の特徴は例外的であり、後述するがZ型DNAでは逆の[[右巻き、左巻き|左巻き(左手)]]のらせんを示す。Z型は従来は人工的なものと考えられてきたが、実は'''生体内でもこのような構造を取りうる'''ことが最近の研究でわかってきている。しかし、生物の有する大半のDNAは右回りであることは間違いない。
 
67. の特徴は二重らせんは完全に規則正しいらせんを描いているわけではないことをあらわしている。塩基の積み重なりと糖ーリン酸骨格のねじれの関係上、完全に規則正しい二重螺旋らせんから鎖がずれ、螺旋らせん長さの違うは幅が異なる2種類の溝が存在する。大きなほうを主溝、小さなほうを副溝という。主溝と副溝多く存在は[[DNA複製|DNAの複製タンパク質]]や[[遺伝子発現]]時に重要な立体構造であは、主溝からアクセスす考えられによっ特異的な塩基配列を認識する。
==様々な二重らせん==
 
DNAは主に水分の含有率によってサイズの異なる二重らせんを示すことがある。DNAの周囲に存在する水分子を減らすことによってプリン、ピリミジン塩基の位置が多少変化することにより立体構造が変わってくると考えられている。なお、'''上記の7つの特徴を有するDNAはB-DNAである'''。
==様々な二重らせん構造==
[[File:A-DNA, B-DNA and Z-DNA.png|thumb|right|300px|左から、A-DNA、B-DNA、Z-DNAの構造]]
DNAは主に水分の含有率によってサイズの異なる形状の二重らせん構造示すとることが知られている。例えば、DNAの周囲に存在する水分子を減らすことによって[[プリン]][[ピリミジン]]塩基の位置が多少変化することにより立体構造が変わってくると考えられている。なお、'''上記の7つの特徴を有するDNAはB-DNAである'''
現在、A-、B-、C-、D-、E-、Z-の6つが見つかっていが、中でも重要なものはA-DNA、B-DNA、Z-DNAである。
*'''A-DNA''':[[右巻き、左巻き|右巻き]]、1回転あたり塩基数11、塩基対間距離2.6Å、らせんの直径23Å、'''[[湿度]]75%'''時にとる立体構造
*'''B-DNA''':[[右巻き、左巻き|右巻き]]、1回転あたり塩基数10、塩基対間距離3.4Å、らせんの直径20Å、'''湿度92%'''時にとる立体構造生体内では最も一般的な構造は、このB-DNA である<ref>{{cite journal |author=Leslie AG, Arnott S, Chandrasekaran R, Ratliff RL |title=Polymorphism of DNA double helices |journal=J. Mol. Biol. |volume=143 |issue=1 |pages=49–72 |year=1980 |pmid=7441761 |doi=10.1016/0022-2836(80)90124-2}}</ref>
*'''Z-DNA''':[[右巻き、左巻き|左巻き]]、1回転あたり塩基数12、塩基対間距離3.7Å、らせんの直径18Å、'''[[グアニン]][[シトシン]]の繰り返し配列の時にとる立体構造'''
 
現在、A-、B-、C-、D-、E-、Z-の6つが見つかっているが、水分の量を調節すればこの先更に見つかると考えられる。中でも重要なのが生体内で取るべき形状であり、それらは'''A-、B-、Z-'''である。主な特徴を以下にあげる。
*'''A-''':[[右巻き、左巻き|右巻き]]、1回転あたり塩基数11、塩基対間距離2.6Å、らせんの直径23Å、'''[[湿度]]75%'''時にとる立体構造
*'''B-''':右巻き、1回転あたり塩基数10、塩基対間距離3.4Å、らせんの直径20Å、'''湿度92%'''時にとる立体構造、生体内では最も一般的な構造<ref>{{cite journal |author=Leslie AG, Arnott S, Chandrasekaran R, Ratliff RL |title=Polymorphism of DNA double helices |journal=J. Mol. Biol. |volume=143 |issue=1 |pages=49–72 |year=1980 |pmid=7441761 |doi=10.1016/0022-2836(80)90124-2}}</ref>
*'''Z-''':[[右巻き、左巻き|左巻き]]、1回転あたり塩基数12、塩基対間距離3.7Å、らせんの直径18Å、'''グアニンとシトシンの繰り返し配列の時にとる立体構造'''
一般的な二重らせんはB型であるが、A型は二本鎖RNAでとることがある。Z型は'''Z-DNA領域'''と呼ばれる配列が[[染色体]]内で見つかり、生体内でこのような構造を取っている可能性が示唆されている。
 
==二重らせんモデルの歴史的背景==
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*[[分子遺伝学]]
*[[DNA]]
*[[DNA超らせん]]
*[[コンフォメーション]]
*[[構造生物学]]