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[[数学]]における'''ヒルベルト空間'''(ヒルベルトくうかん、{{lang-en-short|''Hilbert space''}})は、[[ダフィット・ヒルベルト]]にその名を因む、[[ユークリッド空間]]の概念を一般化したものである。これにより、二次元の[[平面|ユークリッド平面]]や三次元のユークリッド空間における[[線型代数学]]や[[微分積分学]]の方法論を、任意の有限または無限次元の空間へ拡張して持ち込むことができる。ヒルベルト空間は、[[内積]]の構造を備えた[[ベクトル空間|抽象ベクトル空間]]([[内積空間]])になっており、そこでは角度や長さを測るということが可能である。ヒルベルト空間は、さらに[[完備距離空間]]の構造を備えている(極限が十分に存在することが保証されている)ので、その中で微分積分学がきちんと展開できる。
ヒルベルト空間は、典型的には無限次元の[[函数空間]]として、[[数学]]、[[物理学]]、[[工学]]などの各所に自然に現れる。そういった意味でのヒルベルト空間の研究は、20世紀冒頭10年の間に[[ダフィット・ヒルベルト|ヒルベルト]]、[[エルハルト・シュミット|シュミット]]、[[リース・フリジェシュ|リース]]らによって始められた。ヒルベルト空間の概念は、[[偏微分方程式]]論、[[量子力学の数学的基礎|量子力学]]、[[フーリエ解析]]([[信号処理]]や熱伝導などへの応用も含む)、[[熱力学]]の研究の数学的基礎を成す[[エルゴード理論]]などの理論において欠くべからざる道具になっている。これら種々の応用の多くの根底にある抽象概念を「ヒルベルト空間」と名付けたのは、[[ジョン・フォン・ノイマン|フォン・ノイマン]]である。ヒルベルト空間を用いる方法の成功は、[[函数解析学]]の実りある時代のさきがけとなった。古典的なユークリッド空間はさておき、ヒルベルト空間の例としては、[[自乗可積分函数]]の空間、[[数列空間|自乗総和可能数列の空間]]、[[超
ヒルベルト空間論の多くの場面で、幾何学的直観は重要である。例えば、[[ピタゴラスの定理|三平方の定理]]や[[中線定理]](の厳密な類似対応物)は、ヒルベルト空間においても成り立つ。より深いところでは、部分空間への直交射影(例えば、三角形に対してその「高さを潰す」操作の類似対応物)は、ヒルベルト空間論における最適化問題やその周辺で重要である。ヒルベルト空間の各元は、平面上の点がそのデカルト座標(直交座標)によって特定できるのと同様に、[[座標軸]]の集合([[正規直交基底]])に関する座標によって一意的に特定することができる。このことは、座標軸の集合が[[可算無限]]であるときには、ヒルベルト空間を[[ルベーグ空間|自乗総和可能]]な[[無限列]]の集合と看做すことも有用であることを意味する。ヒルベルト空間上の[[線型作用素]]は、ほぼ具体的な対象として扱うことができる。条件がよければ、空間を互いに直交するいくつかの異なる要素に分解してやると、線型作用素はそれぞれの要素の上では単に拡大縮小するだけの変換になる(これはまさに線型作用素の[[スペクトル論|スペクトル]]を調べるということである)。
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=== 偏微分方程式論 ===
ヒルベルト空間は[[偏微分方程式]]を調べる基本的な道具である<ref name="BeJoSc81">{{harvnb|Bers|John|Schechter|1981}}.</ref>。即ち、[[楕円型偏微分方程式|楕円型線型方程式]]のような偏微分方程式の多くのクラスでは、考える函数のクラスを拡張して[[弱解]]と呼ばれる超
典型的な例が、'''R'''<sup>2</sup> の有界領域 Ω における[[ポワソン方程式]] −Δ''u'' = ''g'' の[[ディリクレ境界条件|ディリクレ境界問題]]である。弱定式化は、境界上で消えている Ω 上連続的微分可能な任意の函数 ''v'' に対して
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