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'''ジョルダン分解の証明:''' ジョルダン測度分解の存在、一意性および極小性に関する初等的な証明については、[http://arxiv.org/abs/1206.5449 Fischer (2012)] を参照されたい。
== ハーンの分解定理の証明 ==
'''準備:''' ''μ'' は −∞ の値を取らないものと仮定する(そのような値を取る場合は、−''μ'' について考えることとする)。上述のように、Σ 内のある集合 ''A'' が負集合であるとは、そのすべての Σ 内の部分集合 ''B'' に対して ''μ''(''B'') ≤ 0 が成立することを言う。
'''主張:''' Σ 内のある集合 ''D'' に対して ''μ''(''D'') ≤ 0 が成立すると仮定する。このとき、''μ''(''A'') ≤ ''μ''(''D'') を満たすようなある負集合 ''A'' ⊆ ''D'' が存在する。
'''主張の証明:''' ''A''<sub>0</sub> = ''D'' とする。[[数学的帰納法|帰納的]]に、自然数 ''n'' に対してある集合 ''A<sub>n</sub>'' ⊆ ''D'' が構成されているものとする。今、
:<math>t_n=\sup\{\mu(B): B\in\Sigma,\, B\subset A_n\}</math>
は、''A<sub>n</sub>'' 内のすべての可測部分集合 ''B'' についての ''μ''(''B'') の上限を表す。この上限は先天的に無限大であることもあり得る。''t<sub>n</sub>'' の定義において、空集合 ∅ も ''B'' であり得るため、''μ''(∅) = 0 であることから、''t<sub>n</sub>'' ≥ 0 が従う。''t<sub>n</sub>'' の定義より、次を満たすような ''B<sub>n</sub>'' ⊆ ''A<sub>n</sub>'' が Σ 内に存在する:
:<math>\mu(B_n)\ge \min\{1,t_n/2\}.</math>
今 ''A''<sub>''n''+1</sub> = ''A<sub>n</sub>'' \ ''B<sub>n</sub>'' とする。また
:<math>A=D\setminus\bigcup_{n=0}^\infty B_n </math>
を定める。集合 (''B<sub>n</sub>'')<sub>''n''≥0</sub> は互いに素な ''D'' の部分集合であるため、符号付測度 ''μ'' の[[シグマ加法性]]より
:<math>\mu(A)=\mu(D)-\sum_{n=0}^\infty\mu(B_n)\le\mu(D)-\sum_{n=0}^\infty\min\{1,t_n/2\} </math>
が従う。この不等式より ''μ''(''A'') ≤ ''μ''(''D'') が従う。今 ''A'' は負集合ではないと仮定する。すると Σ に属する ''A'' の部分集合 ''B'' で ''μ''(''B'') > 0 を満たすようなものが存在する。このとき、すべての ''n'' に対して ''t<sub>n</sub>'' ≥ ''μ''(''B'') が成立するため、右辺の[[級数]]は +∞ へと発散するが、これは ''μ''(''A'') = –∞ を意味し、はじめの ''μ'' の定め方に矛盾する。したがって、''A'' は負集合でなくてはならない。
'''分解の構成:''' ''N''<sub>0</sub> = ∅ とする。帰納的に ''N<sub>n</sub>'' が与えられたとし、次を定義する。
:<math>s_n:=\inf\{\mu(D):D\in\Sigma,\, D\subset X\setminus N_n\}.</math>
これは ''X'' \ ''N<sub>n</sub>'' 内のすべての可測な部分集合 ''D'' についての ''μ''(''D'') の下限である。この下限は先天的に –∞ となることもあり得る。''D'' は空集合であることもあり、''μ''(∅) = 0 であるため、''s<sub>n</sub>'' ≤ 0 となる。したがって Σ に属する ''D<sub>n</sub>'' で、''D<sub>n</sub>'' ⊆ ''X'' \ ''N<sub>n</sub>'' および
:<math>\mu(D_n)\le \max\{s_n/2, -1\}\le 0 </math>
を満たすようなものが存在する。上述の主張より、''μ''(''A<sub>n</sub>'') ≤ ''μ''(''D<sub>n</sub>'') を満たすようなある負集合 ''A<sub>n</sub>'' ⊆ ''D<sub>n</sub>'' が存在する。''N''<sub>''n''+1</sub> = ''N<sub>n</sub>'' ∪ ''A<sub>n</sub>'' を定める。また
:<math>N=\bigcup_{n=0}^\infty A_n </math>
とする。集合 (''A<sub>n</sub>'')<sub>''n''≥0</sub> は互いに素であるため、''μ'' のシグマ加法性より、Σ に属するすべての ''B'' ⊆ ''N'' に対して
:<math>\mu(B)=\sum_{n=0}^\infty\mu(B\cap A_n)</math>
が成立する。特にこのことは、''N'' が負集合であることを意味する。今 ''P'' = ''X'' \ ''N'' を定義する。もし ''P'' が正集合でないのなら、Σ に属するある ''D'' ⊆ ''P'' に対して ''μ''(''D'') < 0 が成立する。このとき、すべての ''n'' に対して ''s<sub>n</sub>'' ≤ ''μ''(''D'') が成立することから、
:<math>\mu(N)=\sum_{n=0}^\infty\mu(A_n)\le\sum_{n=0}^\infty\max\{s_n/2, -1\}=-\infty </math>
となるが、これは ''μ'' の定め方に矛盾する。したがって、''P'' は正集合である。
'''一意性の証明:'''
<math>(N',P')</math> を <math>X</math> の他のハーン分解とする。このとき <math>P\cap N'</math> は正集合でもあり、負集合でもある。したがって、この集合に含まれるすべての可測な部分集合の測度は 0 である。同様のことが <math>N\cap P'</math> に対しても成り立つ。今
:<math>P\,\triangle\,P'=N\,\triangle\,N'=(P\cap N')\cup(N\cap P') </math>
であることから、証明は完成される。[[Q.E.D.]]
== 参考文献 ==
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