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[[ファイル:Bike_engine_01.jpg|thumb|right|240px|二輪車のキャブレター(矢印)]]
[[ファイル:Carburetor_01.jpg|thumb|right|140px|キャブレターのフロート(矢印)]]
[[File:Getto del minimo.jpg|thumb|右|オートバイ用キャブレターのメインジェットの一例]]
[[File:Getto del minimo.jpg|thumb|右|オートバイ用キャブレターのメインジェットの一例]]自動車では「ツインキャブ」や「6連キャブ」などといった用語を用いて、その車種の訴求力を高めたりする場合があるが、これらは搭載されるキャブレターの数を示している。たとえば、直列4気筒エンジンにシングルステージ2バレルキャブレターを2個搭載して「ツインキャブ」と呼んだり、6気筒エンジンにシングルバレルキャブレターを6個搭載して「6連キャブ」とされる。[[オートバイ]]では各気筒に1つずつのキャブレターを搭載する車種が一般的で、訴求力のある用語としては用いられない。
ガソリンエンジンを搭載した自動車やオートバイでは古くからキャブレターが利用されてきたが、排出ガスの規制や性能への要求が高まるにつれて[[燃料噴射装置]](フューエルインジェクション)が採用されるようになった。オートバイでは4輪自動車にやや遅れてフューエルインジェクションの採用が広がった。
 
[[File:Getto del minimo.jpg|thumb|右|オートバイ用キャブレターのメインジェットの一例]]自動車では「ツインキャブ」や「6連キャブ」などといった用語を用いて、その車種の訴求力を高めたりする場合があるが、これらは搭載されるキャブレターの数を示している。たとえば、直列4気筒エンジンにシングルステージ2バレルキャブレターを2個搭載して「ツインキャブ」と呼んだり、6気筒エンジンにシングルバレルキャブレターを6個搭載して「6連キャブ」とされる。[[オートバイ]]では各気筒に1つずつのキャブレターを搭載する車種が一般的で、訴求力のある用語としては用いられない。
最近の四輪車は主に[[燃料噴射装置]](フューエルインジェクション)を採用しているが、[[オートバイ|二輪車]]では現在でも多く見ることができる。上記の自動車用キャブレターの作動原理を基本として、オートバイ用キャブレターは以下の系統により構成される。
 
=== メカニズム ===
自動車やオートバイに用いられるキャブレターは広い範囲のエンジン回転速度、あるいは広い範囲の負荷に対応するため、複雑な機能が求められる。スロットル開度に応じて適正な量の混合気を生成するだけでなく、エンジンの負荷や状態に応じて空気と燃料の混合比(空燃比)を適切に調整する機構が組み込まれる。また、[[排気ガス規制]]が適用されるようになると、排ガス中の有害成分の濃度を抑えるように補正する機能も付け加えられるようになった。
 
キャブレターの基本構造の1つである「ジェット」は、機能に応じて異なる位置や径のものが備えられていて、「アイドリング系統」や「スロットル系統」などと呼び分けられている。一部の機構はスロットル開度に応じて動作するように、リンク機構や吸入負圧を用いたダイヤフラムアクチュエータで作動するほか、電子制御キャブレターでは[[サーボ]]機構により作動する。
 
==== メイン系統 ====
メイン系統はスロットル系統とも呼ばれ、中速回転(部分負荷域)から高速回転(高負荷域)で燃料を送り出す経路で、メインジェット、ニードルジェットホルダ(メインエアブリードと一体)、ジェットニードル、ニードルジェットおよびメインエアジェットで構成される。ジェットニードルは細い円錐状の部品で、円筒形のニードルジェットホルダに差し込まれている。スロットルバルブの開閉に応じて、ジェットニードルが上下してニードルジェットホルダとの隙間が変化し、送り出される燃料の量が変わる。
 
同時にベンチュリを通過する空気の流速も速まり、このときにベンチュリの中央付近に設けられたメインジェットから燃料が供給される。キャブレターによっては、1個以上の小径な'''ブースターベンチュリ(追加ベンチュリ)'''が、メインベンチュリの内部に設置され、スロットルバルブ微動時におけるメインベンチュリ流速変化の鈍さを補っている。スロットルバルブが次第に閉じられていき、バレル内部の流速が弱まり、吸入負圧が増大してアイドリング系統が再び燃料供給を開始するまで、上記の動作は継続して行われ続ける。
 
==== アイドリング系統 ====
スロー系統とも呼ばれ、アイドル時やリングなどの低速回転時燃料の計量など司る。送り出す経路で、スロージェット(またはアイドリングジェット、パイロットジェット)、スロージェットホルダ、バイパスポート、アイドルポート、スローエアジェットで構成される。スロットルバルブが完全に閉じている位置からわずかに開かれるとき、スロットルバルブの後ろでは下流に高速な気流が発生する。この時、最も気流の気圧が低圧になる部分に設けられ'''アイドリングジェット(アイドルジェット)'''、またはパイロットジェット、スロージェットなどと呼ばれる追加はこ燃料供給穴か位置に設けアイドリングに必要な量の燃料が供給される。
 
 
スロージェットの流路面積は変化しないが、スロットルバルブが開かれるとスロージェット付近の流速が低下して、燃料が吸い出される作用が小さくなる。すなわち、中高速回転ではアイドリング系統は働かなくなる。
アイドリングジェットに対して、通常のスロットル操作によりベンチュリへの燃料供給を行うジェットを'''メインジェット'''と呼ぶ。アイドリングジェットはスロットルバルブがアイドリング開度の状態のときのみ動作し、通常の開度では燃料供給は行わない。
 
スロットルバルブをアイドリングに適した開度に固定するための機構として、'''アイドリングアジャストスクリュー'''と呼ばれるネジが備え付けられている。このネジを締め込むことでスロットルバルブはより開き(アイドリング回転数が上がる)、緩めることでスロットルバルブはより閉じる(アイドリング回転数が下がる)。
 
==== スロパワージェットル系統(メイン系統) ====
パワージェット(パワーバルブ)は、高回転高負荷時にメインジェットからの燃料供給を補助する機構である。スロットルバルブ全開付近の領域で空燃比を濃くして出力を高くする。同時に、空燃比を高くすると混合気の比熱比が小さくなるうえ、燃料の気化熱が増えるので[[燃焼室]]の過熱を防ぐ(燃料冷却という)。これにより、[[プレイグニッション]]や[[デトネーション]]を防ぐ働きがある。パワージェットは、吸気管内の圧力とスプリングで開閉制御される[[バルブ]]で、吸気管内の負圧が強い時は閉じており、スロットルバルブが開いて負圧が弱くなると開くようになっている。
メイン系統は中速回転(パーシャル=部分負荷域)から高速回転(フル=高負荷域)における燃料の計量などを司る。メインジェット、メインジェットホルダ(メインエアブリードと一体)、ジェットニードル、ニードルジェット、メインエアジェットで構成される。スロットルバルブが次第に開けられるとき、バレル内の流速が速まっていくのに従って、ベルヌーイの定理により[[インテークマニホールド]]の吸入負圧は次第に小さくなり、バレル内部の気圧も次第に上がっていく。このとき、負圧によって作動していたアイドリング系統は動作を停止する。
 
パワージェットはそのエンジンの特性に応じて補正する燃料量が厳密に設定されるため、オートバイ用キャブレターなどの場合にはあらかじめ設定が固定されており、一部の市販レーサー車両を除いて<ref>[http://www.honda.co.jp/HRC/technical/setting/rs125_250_s05/index.html HRCによる RS125R/RS250Rのパワージェット設定法の説明]</ref>を除いて調整が不可能な場合が多い。
同時にベンチュリを通過する空気の流速も速まり、このときにベンチュリの中央付近に設けられたメインジェットから燃料が供給される。キャブレターによっては、1個以上の小径な'''ブースターベンチュリ(追加ベンチュリ)'''が、メインベンチュリの内部に設置され、スロットルバルブ微動時におけるメインベンチュリ流速変化の鈍さを補っている。スロットルバルブが次第に閉じられていき、バレル内部の流速が弱まり、吸入負圧が増大してアイドリング系統が再び燃料供給を開始するまで、上記の動作は継続して行われ続ける。
 
初期の2ストロークエンジンに用いられたパワージェットの中には、[[4ストローク機関|4ストロークエンジン]]のパワージェットとは逆に、バレル吸気管内がい負圧状態のときに開き、正圧に近い状態に弱くなると閉じる設定のものが用いられているキャブレターが存在した。これは、全開領域で混合比がやや薄めになることで、より高回転まで回転が伸びていく2ストロークエンジンの特性を活かしたものである。このような動作をするキャブレターの場合には、常用回転域では常にパワージェットから燃料が供給されるため、メインジェットはパワージェットがない同サイズのキャブレターよりもやや薄めの番手が選択される。しかし、エンジン高回転域で過度にパワージェットからの燃料供給を減らすとエンジン焼き付きのリスクが大きくなる。近年の2ストロークエンジンのパワージェットはもっとシンプルな構成であり、バルブはなく、フロート室から上流側の天井部分にバイパスが設けられているだけである。これにより、吸入負圧が大きくなったときのみ、燃料が吸い出される。
==== パワージェット(パワーバルブ) ====
'''パワージェット(パワーバルブ)'''とは、高回転高負荷時にメインジェットからの燃料供給を補助する機構のこと。スロットルバルブ全開やそれに近い領域でメインジェットのみでは燃料が不足がちになる場合に、燃料を追加供給することで[[燃焼室]]をより低い温度に保ち(燃料冷却という)、[[プレイグニッション]]や[[デトネーション]]を防ぐ働きがある。
 
いくつかの固定ベンチュリー型キャブレターではパワージェットの代わりとなる高回転高負荷時の増量機構として、可変ベンチュリー型のジェットニードルと同じ'''メータリングロッド'''や'''ステップアップロッド'''と呼ばれる機構を用いるものもある。メータリングロッドとは全体がテーパー状に加工されている棒であり、メインジェットにある燃料通路孔にし込まれるようセットされている。メインジェットにある燃料通の流孔の直径面積は不変であるため、そこに刺し込まれたテパー状の棒タリングロッドを出入りさせると燃料通路の断面積を変化させることができる。この棒メータリングロッドは吸入負圧により上下するバキュームピストン([[ダイアフラム]])もしくはスロットルリンケージに取り付けられており、スロットルバルブかれてバレル内の吸入負圧が減少する中、スロットルバルブの開動作連動しメインジェットから強制的に引き抜かれることで、メインジェットの燃料流量を次第に増量していく。{{要出典範囲|date=2014年3月|このようなロッド機構は[[1950年代]]に米国Carter社の2ベンチュリー式4バレルキャブレターで初めて採用され、その後[[1980年代]]にCarter社が自動車用キャブレターの製造を終えるまでには1バレルから4バレルまで全てのキャブレターに搭載されるようになった。2ステージキャブレターの場合には通常、プライマリーバレルにのみメータリングロッドが使用されるが、 Rochester Quadrajet のようにセカンダリーバレルにもこのロッドを搭載する物も存在する。}}
パワージェットは、バレル内負圧とスプリングで開閉制御される[[バルブ]]である。バレル内負圧が大きい時は閉じており、バレル内圧力が大気圧に向けて高まるに従い開くようになっている。スロットルバルブが開いていくに従って吸入負圧は減少し、パワージェットのバルブスプリングはパワージェットを少しずつ開いていく。スロットルバルブが全開状態ではバレル内は大気圧に近くなり、パワージェットも全開となる。
 
パワージェットはそのエンジンの特性に応じて補正する燃料量が厳密に設定されるため、オートバイ用キャブレターなどの場合にはあらかじめ設定が固定されており、一部の市販レーサー車両を除いて<ref>[http://www.honda.co.jp/HRC/technical/setting/rs125_250_s05/index.html HRCによる RS125R/RS250Rのパワージェット設定法の説明]</ref>調整が不可能な場合が多い。
 
初期の2ストロークエンジンに用いられたパワージェットの中には、[[4ストローク機関|4ストロークエンジン]]のパワージェットとは逆に、バレル内が高い負圧状態のときに開き、正圧に近い状態になると閉じる設定のものが用いられているキャブレターが存在した。これは、全開領域で混合比がやや薄めになることで、より高回転まで回転が伸びていく2ストロークエンジンの特性を活かしたものである。このような動作をするキャブレターの場合には、常用回転域では常にパワージェットから燃料が供給されるため、メインジェットはパワージェットがない同サイズのキャブレターよりもやや薄めの番手が選択される。しかし、エンジン高回転域で過度にパワージェットからの燃料供給を減らすとエンジン焼き付きのリスクが大きくなる。近年の2ストロークエンジンのパワージェットはもっとシンプルな構成であり、バルブはなく、フロート室から上流側の天井部分にバイパスが設けられているだけである。これにより、吸入負圧が大きくなったときのみ、燃料が吸い出される。
 
いくつかの固定ベンチュリー型キャブレターではパワージェットの代わりとなる高回転高負荷時の増量機構として、可変ベンチュリー型のジェットニードルと同じ'''メータリングロッド'''や'''ステップアップロッド'''と呼ばれる機構を用いるものもある。メータリングロッドとは全体がテーパー状に加工されている棒であり、メインジェットにある燃料通路孔に刺し込まれるようセットされている。メインジェットにある燃料通路孔の直径は不変であるため、そこに刺し込まれたテーパー状の棒を出入りさせると燃料通路の断面積を変化させることができる。この棒は吸入負圧により上下するバキュームピストン([[ダイアフラム]])もしくはスロットルリンケージに取り付けられており、スロットルバルブが開かれてバレル内の吸入負圧が減少する中、スロットルバルブの開動作と連動しメインジェットから強制的に引き抜かれることで、メインジェットの燃料流量を次第に増量していく。このようなロッド機構は[[1950年代]]に米国Carter社の2ベンチュリー式4バレルキャブレターで初めて採用され、その後[[1980年代]]にCarter社が自動車用キャブレターの製造を終えるまでには1バレルから4バレルまで全てのキャブレターに搭載されるようになった。2ステージキャブレターの場合には通常、プライマリーバレルにのみメータリングロッドが使用されるが、 Rochester Quadrajet のようにセカンダリーバレルにもこのロッドを搭載する物も存在する。
 
==== 加速ポンプ ====
{{main|加速ポンプ}}
パワージェットが高回転域での全般的な燃料増量補正を行うのに対して、加速ポンプは車両急加速などを目的とした急激なスロットルバルブが急速に操作をかれた際にう噴射ポンプであ正す。緩慢なスロットルバルブ開操作では作動しない
 
==== チョーク系統 ====
{{main|チョーク弁|ティクラー}}
スターター系統とも呼ばれ、エンジン始動時に空料の計量などつかさど濃くす。[[チョーク弁]]機構もこの系統である。[[チョーク弁]]が実用化される以前旧式キャブレターは代わりに[[ティクラー]]用いられる場合もある。
 
==== その他の系統 ====
[[Image:EFE heater bottom.JPG|thumb|EFEヒーターを裏面からみたところ。1985年式[[オールズモビル]]・Cutlass Supreme Broughamの2バレルダウンドラフトキャブレターに用いられていたもの。]]
一部の車両は冷間始動時の始動性向上を目的に[[:en:Early fuel evaporator|初期燃料気化促進装置(EFE)]]と呼ばれる機構を持つものがある。これはインテークマニホールドとキャブレターの間に挟み込まれる格子状の電熱ヒーターであり、燃料の気化をより促進する効果のほか、{{独自研究範囲|date=2014年3月|格子によりインテークマニホールドや燃焼室内に乱流を引き起こして燃焼効率を向上させる効果もある}}
 
これらの各系統は相互作用を行う為に機械的なリンケージもしくは吸入負圧を用いたダイヤフラム制御、もしくは気圧・気温センサーなどを用いた電子制御機器による[[サーボ]]機構により複雑にリンクして動作を行っている。エンジンレスポンスの向上、あるいは[[排ガス規制]]適合のためにこのような制御が行われている。
 
一部の車両は冷間始動時の始動性向上を目的に[[:en:Early fuel evaporator|初期燃料気化促進装置(EFE)]]と呼ばれる機構を持つものがある。これはインテークマニホールドとキャブレターの間に挟み込まれる格子状の電熱ヒーターであり、燃料の気化をより促進する効果のほか、格子によりインテークマニホールドや燃焼室内に乱流を引き起こして燃焼効率を向上させる効果もある。
 
このEFEの乱流効果に似た理論として、2ストロークエンジンの[[リードバルブ]]に多孔プレートを取り付けクランクケースおよび燃焼室内に乱流を引き起こす機構が、[[YSP藤沢]]の山本俊彦により考案され特許が取得されている。<ref>[http://kiyofactory.web.fc2.com/motor/reports/ronbun/4setu.htm YSP藤沢代表取締役 山本俊彦氏の研究、特許]</ref>
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=== オートバイ用キャブレター ===