「有向点族」の版間の差分

削除された内容 追加された内容
LUE=42 (会話 | 投稿記録)
編集の要約なし
タグ: モバイル編集
LUE=42 (会話 | 投稿記録)
編集の要約なし
タグ: モバイル編集
7行目:
== 概要 ==
 
点列概念の一般化である有向点族の概念が導入された背景を説明するため、まず以下の基本的な問いを考える:位相空間Xの位相構造を点列の極限によって特長づける事はできるか?」という基本的な問いを考える。
 
結論から言えばXが[[第一可算公理]]を満たせばこれは可能であり、この場合例えばX上の閉集合は以下のように特長づける事ができる。Xの部分集合Aが閉集合となる必要十分条件は、A内の点列が極限を持つ場合にはその極限が必ずAに属する事である。X上の開集合や閉包の概念も同様に点列の収束で特長づけられる。
 
しかし第一可算公理を満たさない空間の場合、点列から定義される極限概念では位相の概念構造を特徴づけるには不十分である事が知られている。これは点列という概念がそもそも可算個の点の列として定義されている事と関係しており、可算個の点の列で位相構造をとらえきる事ができる事を保証できられるよう、空間の方にも第一可算公理という可算性に関する条件を課す必要があるのである。
 
点列の極限で位相構造を特徴づけられない例としては、非可算順序数ω<sub>1</sub>以下の順序数からなる整列順序集合[0,ω<sub>1</sub>]に順序から定まる位相を入れた空間がある。ここで ω<sub>1</sub>は非可算順序数である。実際この集合においてω<sub>1</sub>は明らかに[0,ω<sub>1</sub>)の閉包に属しているにも関わらず、[0,ω<sub>1</sub>)内のいかなる点列もω<sub>1</sub>に収束しない。なぜなら ω<sub>1</sub>非可算である事により、 [0,ω<sub>1</sub>)内の任意の点列に対し、点列に属する可算個の点のいずれよりも大きい順序数ω<ω<sub>1</sub>が存在するので、 ω<sub>1</sub>の開近傍(ω,ω<sub>1</sub>]には点列の点が存在せず、したがって点列はω<sub>1</sub>に収束していない事になるからである。
 
有向点族はこうした可算性に関する制約を取り除く為に導入された概念である。点列<math>(x_n)_{n\in \mathbb{N}}</math>が可算な全順序集合<math>\mathbb{N}</math>を添え字集合としてもつものとして定義されるのに対し、有向点族(x<sub>λ</sub>)<sub>λ∈Λ</sub> は添え字集合Λとして(可算もしくは非可算の)[[有向集合]]を持つものとして定義される。点列概念から可算性の制約を取り除いた事により、先ほどの問題は解消され、任意の位相空間に対してその位相構造は有向点族の極限で特徴づける事ができるようになる。また後述するように、添え字集合を有向集合にした事は、位相空間上の各点の近傍系が自然に有向集合であるみなせる事と相性がよく、これも点列概念の不十分さを解消する上で一役を買っている。
 
このように有向点族の概念は点列概念に関わる定理や証明から可算性に関わる制約を取り除くのに役立ち、点列概念であれば何らかの可算性を仮定したり証明したりしなければならない箇所が有向点族であればその必要がなくなる事がある。また有向点族の概念は複数の収束概念を統一的に扱うためにも役立ち、点列の収束のみならず例えば実数値関数の収束も有向点族の収束概念の特殊ケースとみなせる。