「賢者の石」の版間の差分
削除された内容 追加された内容
211.120.28.80に消された部分の差し戻しと非表示の削除 |
|||
1行目:
[[ファイル:JosephWright-Alchemist.jpg|thumb|『賢者の石を求める[[錬金術|錬金術師]]』[[ジョセフ・ライト (画家)|ライト・オブ・ダービー]]作(1771年)]]
'''賢者の石'''(けんじゃのいし、{{lang-en-short|philosophers’ stone}}、{{lang-la|lapis philosophorum}}、{{lang|la|lapis philosophicus}})とは、中世ヨーロッパの[[錬金術|錬金術師]]が、[[鉛]]などの[[卑金属]]を[[金]]に変える際の[[触媒]]となると考えた[[霊薬]]である。人間に[[不老不死]]の永遠の生命を与える[[エリクサー]]であるとの解釈もあるが、賢者の石が文献上に記述されるのはエリクサーよりかなり後である。
== 概要 ==
一般によく知られた賢者の石は卑金属を金などの貴金属に変えたり、人間を不老不死にすることができるという。霊薬としてのエリクサーと同様のものとして考えられることもある。
[[12世紀]]に[[イスラム科学]]からの錬金術が輸入されると、[[ヨーロッパ]]では賢者の石の探求熱が高まった。[[神秘主義]]的な[[ヘルメス思想]]とともに、様々な伝説と風聞が広まり、[[小説]]の題材としても使われる。[[黒魔術]]と関係付けて語られることもある。
== 賢者の石とは ==
[[File:Cinnabar.jpg|thumb|120px|辰砂]]
中世ヨーロッパ錬金術に多大な影響を与えた[[ジャービル・イブン=ハイヤーン]]の説に、[[水銀]]と[[硫黄]]の2要素説がある。その2要素の比率により[[卑金属]]や[[貴金属]]が生じるとした。後に[[塩]]が加わって3要素説が生まれるが、いずれにせよ錬金術師たちは常に水銀に関心を寄せていた。水銀を原料になんらかの反応を繰り返すことで賢者の石ができると考えていたようである。
水銀と硫黄の化合物である[[硫化水銀]]には色の異なるものがあるが、代表的なものは赤色を呈する。天然でも産出され[[辰砂]]という(写真)。中国で不老長寿の[[霊薬]]仙丹・金丹の原材料とされた(→[[錬丹術]])。漢字「丹」は辰砂のことで赤色も意味する。
金を創出できなくとも、金メッキ([[めっき|鍍金]])は可能である。金を水銀に融かすと金[[アマルガム]]となる。[[銅]]の表面を磨き上げてから金アマルガムを塗り加熱すると、水銀のみが蒸発して表面に金が残る。
ジャービルは、金を融かすことのできる[[王水]]を発明していた。金を王水で融かし、乾燥させると黄色の粉末、[[塩化金酸]]ができる。塩化金酸の水溶液も金メッキの材料となる。銅に塗布すれば表面が[[塩化銅]]となり、代わりに金が析出する。
賢者の石とは黄血塩([[フェロシアン化カリウム]])ではないかとの説もある。黄血塩は家畜の血や皮から[[膠]](にかわ)をとるところで作られる。この黄血塩と[[硫酸]]を混合した液体に金を入れて加熱すると、この液体に金が溶け込む。猛毒であるため近年は避けられているが、シアン化金化合物は電気メッキあるいは無電解メッキ材料のひとつとして現在も使われている。
金を融かし込んだ溶液に卑金属を漬け、銅線で微弱な[[電気]]を送ると卑金属表面に金が固着する。[[電気鍍金]]である。最古の[[電池]]として[[バグダッド電池]]が古代中近東メソポタミアのごく一部で使われていたとの見解もある。
== 中国の錬丹術 ==
15 ⟶ 27行目:
== フィクションにおける賢者の石 ==
[[ファンタジー]]をはじめ、様々な作品に賢者の石という名前の道具が登場する。本来の錬金術における伝承を再現しているものもあれば、作品独自の定義がなされているものもある。
* [[J・K・ローリング]]の小説『[[ハリー・ポッター]]』シリーズ第1巻のタイトルは『[[ハリー・ポッターと賢者の石]]』(原題: {{lang|en|''Harry Potter and the Philosopher's Stone''}})で、賢者の石が重要なものとして登場する。ただし、[[アメリカ合衆国|US]]版では、「賢者の石」({{lang|en|Philosopher's Stone}})という言葉に馴染みがないとのことで、「[[魔法使い]]の石」({{lang|en|Sorcerer's Stone}})と変えられている。▼
▲* [[J・K・ローリング]]の小説『[[ハリー・ポッター]]』シリーズ第1巻のタイトルは『[[ハリー・ポッターと賢者の石]]』(原題: {{lang|en|''Harry Potter and the Philosopher's Stone''}})で、賢者の石が重要なものとして登場する。ただし、[[アメリカ合衆国|US]]版では、「賢者の石」({{lang|en|Philosopher's Stone}})という言葉に馴染みがないとのことで、「[[魔法使い]]の石」({{lang|en|Sorcerer's Stone}})と変えられている。
== 参考文献 ==
53 ⟶ 41行目:
* [[エリクサー]]
* [[ロゼッタ・ストーン]]
{{DEFAULTSORT:けんしやのいし}}
|