「伊藤大輔 (映画監督)」の版間の差分

▲[[1920年]]（大正9年）、22歳。[[宮地嘉六]]主宰の演劇グループに参加したため、[[労働組合]]との関係を疑われて退社<ref>[[佐藤忠男]] 『日本の映画人―日本映画の創始者たち―』 [[日外アソシエーツ]]、2007年、61頁</ref>。やむなく文通していた[[小山内薫]]を頼って上京。伊丹万作と同居し、2月に創立された[[松竹キネマ]]付属の俳優学校（小山内が主宰）に入る<ref>佐藤忠男 『溝口健二の世界』平凡社ライブラリー、2006年、422頁</ref>。

▲[[1924年]]（大正13年）、26歳。[[国木田独歩]]原作の『酒中日記』で監督デビュー。同年、『剣は裁く』が時代劇第1作となる。

▲[[1925年]]（大正14年）、27歳。独立して「伊藤映画研究所」（伊藤大輔プロダクション）を設立、[[稲垣浩]]、[[岡田時彦]]らが研究生所属<ref>『日本映画の若き日々』（[[稲垣浩]]、毎日新聞社刊）</ref>。

▲同年、[[日活撮影所|日活太秦撮影所]]に移り、まだ新人だった[[大河内傳次郎]]とコンビを組み、『長恨』、『流転』などの時代劇作品を監督、激しい乱闘シーンやアメリカ・ドイツ・ソ連など外国映画の影響を受けた大胆なカメラワークで注目を浴びる。

▲この日活撮影所時代に「監督：伊藤大輔」、「主演：大河内傳次郎」、「撮影：[[唐沢弘光]]」の「ゴールデントリオ」が生まれ、サイレント末期の日本映画界をリードする旗手となった。

▲[[1928年]]（昭和3年）、30歳。『[[新版大岡政談 (1928年の日活の映画)|新版大岡政談]]』では、大河内に隻腕隻眼の怪剣士「[[丹下左膳]]」を演じさせ、スピード感溢れる展開が大人気となり「'''大河内傳次郎の丹下左膳'''」の人気を不動のものとする。

▲この時期、元々極めて奔放な性格で映画会社とトラブルが多かったことに重ねて、伊藤の社会的思想は当局によって弾圧の対象となり、検閲、言論統制が強まっていく時代の流れのなか、[[トーキー]]時代以降は映画作りの意欲が衰えて不振を極め、[[小津安二郎]]、[[溝口健二]]、[[山中貞雄]]らに押されて、目立つ作品を残していない。

▲同年、[[村田実]]、[[田坂具隆]]、[[内田吐夢]]らとともに日活から独立し、「新映画社」を設立する。

▲[[1935年]]（昭和10年）、37歳。『[[雪之丞変化]]』（[[衣笠貞之助]]監督）の脚本を執筆。監督作が不振ななか、シナリオ作家として数々の名作を残す。

▲[[1936年]]（昭和11年）、38歳。[[伊丹万作]]、[[稲垣浩]]、[[池田義信]]、[[井上金太郎]]、[[小津安二郎]]、[[渡辺邦男]]、[[田坂具隆]]、[[成瀬巳喜男]]、[[村田実]]、[[牛原虚彦]]、[[内田吐夢]]、[[山本嘉次郎]]、[[山中貞雄]]、[[阿部豊]]、[[五所平之助]]、[[衣笠貞之助]]、[[木村荘十二]]、[[溝口健二]]、[[島津保次郎]]、[[清水宏]]、[[鈴木重吉]]、[[野村浩将]]と連名で「[[日本映画監督協会]]」を設立。

▲[[1942年]]（昭和17年）、44歳。[[大映京都撮影所|大映京都]]が[[嵐寛寿郎]]を迎え制作した『[[鞍馬天狗横浜に現る]]』を監督。「鞍馬天狗」はアラカンの代表作であるが、大映京都ではこの一本に終わっている。

▲[[1951年]]（昭和26年）、53歳。松竹30周年記念映画『大江戸五人男』を阪東妻三郎、[[市川右太衛門]]ら、オールスターを迎えて製作し、人気を博した。

▲[[1970年]]（昭和45年）、72歳。[[中村プロダクション]]で撮った『幕末』が最後の監督作品になった。[[司馬遼太郎]]の小説『[[竜馬がゆく]]』をベースにし、[[萬屋錦之介|中村錦之介]]、[[三船敏郎]]らの共演で撮った大作だった。

▲その後、晩年は[[萬屋錦之介]]の舞台の脚本や演出を手がけた。