「行動主義心理学」の版間の差分

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スキナーの“フリーオペラント”を使った実証的研究は、ソーンダイクやガスリーなどが行った試行錯誤学習の概念を、ソーンダイクのように刺激-反応“連合”を用いずに、明確化し、拡張した。
 
代表的なフリーオペラントの実験では、レバーがあり餌が出る装置がついた箱(スキナーボックス)の中にラット入れる。ラットがレバーに近づくと餌を出すのを繰り返すことで、ラットがレバーに近づく頻度が増加する。次に、レバーに触れると餌を出すことを繰り返すと、レバーに触れる行動が増加する。最終的に、レバーを押したところで餌を出すことを繰り返すことで、レバーを押す頻度が増加する。この実験では、実験者は餌を出す装置(環境)を操作しているが、ラットの行動直接制御手を出していない。ラットは箱の中を「自由」に動き回ることができていたため、フリーオペラントと呼ばれる。レバーに特別近づくことがなかったところから、レバーを押すまでに行動を形成する技法はシェーピングと呼ばれる。そして、レバー押しの頻度が増えたことは、行動(レバーを押した)とその行動の結果(餌が出た)の関数関係で説明され(関数(function)は「機能」とも翻訳される)で説明され、この説明法は関数分析(機能分析)と呼ばれる。
 
スキナーはフリーオペラントを使った実験で、強化スケジュール(先の例では、実験者が餌を出すタイミング)の差異による、オペラント反応率の変化の違いを、実証的に研究した。そして、行動レベルの視点で、動物に様々な種類・頻度で反応を自発させることに成功したスキナーは、その実証的研究を根拠に厳密な理論的分析を行った。例えば、論文『学習理論は必要か?(Are theories of learning necessary?)』(Skinner, 1950)の中で、一般的な心理学が抱えている理論的弱点を批判している。
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=== 言語(的)行動 ===
スキナーは、行動の科学の哲学的基盤を考察する過程で、人間の[[言語]]に関心を持つようになった。そして、著書『[[言語行動|言語(的)行動]]』(Skinner, 1957)の中で、言語(的)行動を関数分析(機能分析するための概念と理論を発表した。この本は、言語学者の[[ノーム・チョムスキー]]のレビュー(Chomsky, 1959)によって厳しく酷評されたが、スキナー自身は「チョムスキーは、私が何について話しているのかを分かっておらず、どういう訳か、彼はそれを理解することができない」というコメント(Skinner, 1972)を残している程度で、このレビューに目立った反応をしていない。
 
スキナーは、言語(的)行動を「他者の仲介を通して強化された行動」と定義し、言語を他のオペラント行動と同様の方法(関数分析)で研究可能だと考えた。スキナーは、[[言語獲得]]よりも、言語と顕在的行動の相互作用への興味が強かった。彼は、著書『強化随伴性』(Skinner, 1969)の中で、ヒトは言語(的)刺激を構成し、言語(的)刺激は外的刺激と同様の方法で行動を制御出来る事を指摘している。この行動への言語(的)刺激という“教示性制御”の存在の可能性により、強化随伴性は他の動物の行動に影響するのと同様の現象を、ヒトの行動に必ずしももたらす訳でない事が指摘された。