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ドクターとマスターの問題は、中世の大学の歴史に由来する。もともと大学は[[ギルド]]の意味で、徒弟制度の下で親方に個人的に認定される免状をとった者をマスターと呼んでいた<ref>『[http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/gijiroku/__icsFiles/afieldfile/2009/02/23/1216919_1.pdf 第4期教育中央審議会大学分科会委員懇談会議事要旨]』2008年12月16日、3頁</ref>。もともとマスター(主にパリ大学での呼び方)とドクター(主にボローニャ大学での呼び方)は同じ意味であった<ref>ハスキンズ、2009年、30頁</ref>が、やがてマスターはドクター以下のものとなっていき、近代に繋がる、バチェラー/マスター/ドクターの三位階制に発展した<ref>ハスキンズ、2009年、52頁</ref>。
 
ただし、[[法務博士]] (J.D.) などの職業系の学位は必ずしもこの枠組に当てはまらない。例えばアメリカのM.D. (Doctor of Medicine) や法務博士などの[[専門職学位]]博士はPh.D.とは別の課程であり、学術的には修士相当、あるいは学士相当と見なされている。アメリカの多くの[[メディカル・スクール]]では在籍中に、別に学術系の大学院の課程に在籍して博士号 (Ph.D.) を取得してからM.D.の学位を取得する場合が多い([[アメリカの医学教育]]を参照)。また、イギリスでは外科医(産科、泌尿器科などを含む)に対する正しい敬称はマスターではなくミスターである。これはかつて、外科医は徒弟制度の下で訓練されていたという歴史的経緯の名残である<ref>"[http://www.rcseng.ac.uk/patient_information/faqs/surgeons.html "Questions about surgeons]", The Royal College of Surgeons of England, 2011年5月12日閲覧</ref>。ドイツではドクターの敬称を付されるのは博士号を保持する医師だけである。
 
[[イギリス]]では、Ph.D. の上位の博士 (D.Sc./Sc.D., Doctor of Science、直訳では「科学博士」) もあり、主に名誉博士号に対する用語として用いられている<ref>文部科学省大学振興課 [http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/004/gijiroku/04091501/008/006.pdf 諸外国における学位制度について(上級学位:大学院レベル)]、2004年</ref>。日本でもかつては[[大博士]]の制度があったが、一度も授与されることなく廃止された。
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アメリカ合衆国では、Ph.D.の授与を受けるためには最低でも3年の在学期間が必要とされているが、[[理科系]]の場合、Ph.D.の取得には平均して7.5年かかるといわれる。なお、日本とは異なり、アメリカ合衆国では、[[心理学]]、[[文学]]、[[教育学]]などの[[文科系]]のPh.D.の方が、理科系のPh.D.よりも多い。
 
アメリカ合衆国では、かつての日本における「[[博士 (理学)|理学博士]]」(現在では「[[博士(理学)]]」)や「[[博士 (工学)|工学博士]]」(現在では「[[博士(工学)]]」)と同じく、専攻分野ごとに異なっている(たとえば教育学分野における博士は、一般的に [[:en:Ed.D.|Ed.D.]]〔[[博士 (教育学)|教育学博士]]〕と呼ばれる)が、[[アメリカ合衆国教育省]] ([[:en:United States Department of Education|U.S. Department of Education]]) および[[全米科学財団]] ([[:en:National Science Foundation|National Science Foundation]]) は、これらの学位を特別に区別せずPh.D.と等価のものとみなしている。
 
=== 日本 ===
Ph.D.が「Doctor of Philosophy」の略称であることから、「博士(哲学)」もしくは「哲学博士」と翻訳されることがあるが、海外での広く学術一般を対象とする用法に倣って、専攻分野にかかわらずこの呼称が用いられている。日本の博士学位の英文表記は「Ph.D. in 専門分野の英語名称」という表記になるのが一般的である。Ph.D.を哲学博士と訳すことは、現在の日本では[[哲学]]が[[人文科学]]の一分野として体系に組み込まれているということを考慮すると誤解を招く表現である。1975年の学位規則改正によって、学際的な分野を扱う大学院の博士課程を修了した者に対して「[[博士 (学術)|学術博士]]」(現在の「[[博士(学術)]]」)の学位の授与も行われるようになった。「博士(学術)」や「学術博士」は、アメリカ合衆国での専攻分野が特記されていない「Ph.D.」に相当するものと考えられる{{要出典|date=2012年4月}}。現在も、英語での「博士(学術)」の学位の表記は「Doctor of Philosophy」とされている。
 
日本では、課程博士(大学院博士課程〔標準で3年以上〕で必要単位を取得後博士論文審査に合格したものに授与される)と、論文博士(博士課程に進学せずに大学院に論文提出し、博士審査に合格したものに授与される)がある。3年以上博士課程に在学し必要単位は取得しているものの博士論文を提出せずに退学する者(いわゆる満期退学又は単位取得後退学などと呼称<ref name="cs">[http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/004/gijiroku/05051101/004/008.htm 新時代の大学院教育の展開に向けて(中間報告案)](中央教育審議会大学分科会大学院部会第31回配付資料5)</ref>)の割合は{{要出典範囲|卒業者全体の30-40%程度である|date=2012年3月}}。かつては、文系学位の取得は極めて困難であり、{{要出典範囲|例えば[[博士(文学)]]については全単位取得者の70-80%程度が単位取得退学者となる|date=2012年3月}}。近年では、課程在学中に博士論文執筆と提出および合否判定を行うように大学院の指導が変わってきており、欧米等の水準と同じような学位の授与が行われるようになってきている。
 
== 脚注 ==