「フザリウム」の版間の差分

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'''フザリウム''' ({{snamei|Fusarium}}) は、[[菌類]]([[カビ]])の一属である。フザリウムは不完全世代の名称であり、完全世代は種によって異なる。完全世代としては、{{snamei|Nectoria}}, {{snamei|Gibberella}}, {{snamei|Calonectria}}, {{snamei|Hypomyces}}などが知られる。
 
これまで、世界で100種以上が報告されている。さらに、分子遺伝学に基づいた種の再検討が行われており、最終的には500種以上になると考えられている。土壌中や人間の住環境中など広範囲に生息している上、[[植物]]に病気を引き起こす種や[[マイコトキシン]]を作る種もあるなど、人間にとっても重要なカビである。
[[菌糸]]はよく発達した一定の太さのもので、規則的に隔壁を形成する。[[寒天培地]]上では、寒天に潜るか、表面を這って成長し、次第に気中にも伸び出す。はじめはほとんど透明か真っ白の[[コロニー]]を作るが、徐々に様々な桃色、紫、薄黄色、赤などの色素を産生する種もある。
 
[[分生子形成型]]はフィアロ型、出芽型である。分生子には古くから、大小二つの型が識別され、'''大型分生子''' (Macroconidium。macroconidium)(大分生子、大型分生胞子ともよばれる。以下同様。)と'''小型分生子''' (Microconidiummicroconidium) と呼ばれている。大型分生子、小型分生子はフィアロ型に形成される。
 
大型分生子は形成細胞の先端から押し出されて形成され(フィアロ型)、細長く、多くは両端に向かって曲がった三日月型〜鎌型で、数個の隔壁があって多細胞、典型的には、基部に'''柄足細胞'''(Foot (foot cell) と呼ばれる足(つま先と踵)状の突起を持つ。小型分生子も同じように形成されるが、倒棍棒状〜倒卵形〜紡錘形〜洋ナシ形〜レモン型〜球形と多様で、多くは単細胞で、大型分生子よりも小さく、基部は丸い。また、近年、''F. avenaceum''など種によっては'''中型分生子''' (Mesoconidiummesoconidium) と呼ばれる中間の大きさで出芽型に形成され、基部が裁断状となる分生子も作ることが知られてきた。多くの種が複数の型の分生子を形成する。
<!-- 日本菌学会「菌学用語集」に基づき、「大型分生子」等の名称を優先-->
 
野外の植物上では植物組織中に菌糸体を発達させ、分生子は表面に作られる。その際、分生子柄が集合し、まとまって'''分生子座''' (Sporodochiumsporodochium) を作ることが知られる。寒天培地上でも類似の構造を作ることがあり、こちらも分生子座と呼ばれることがある。また、寒天の中にも分生子を作ることがよく観察される。
 
'''大型分生子'''、'''中型分生子'''、'''小型分生子'''の用語法に変え、分生子が形成される部位に対応させて、'''分生子座性分生子'''(Sporodochial(sporodochial conidium。寒天の表面、内部等に形成。)、'''気生(中)分生子'''(Aerial(aerial conidium。空気中に形成。)を用いるべきことを提唱する研究グループも存在する。
 
== 完全世代 ==
フザリウムの完全世代は[[子嚢菌]]門[[核菌綱]]ボタンタケ科アカツブタケ属 ({{snamei|Nectria}})、ジベレラ ({{snamei|Gibberella}})、{{snamei|Calonectria}}、{{snamei|Hypomyces}}が報告されている。アカツブタケは小さな球形の[[子実体]]を多数、枯れ木の樹皮上に形成する菌である<!--「アカツブタケ」と「アカツブタケ属」とを混同しそう-->。ジベレラは紫色の子実体を形成するのが特徴である<!--Gibberellaの子実体=子のう殻ならば黒いと思う。要確認 -->。
 
なお、アカツブタケ属の菌のアナモルフ(不完全世代)はフザリウムだけではなく、{{snamei|Cephalosporium}}、{{snamei|Cylindrocarpon}}、{{snamei|Verticillium}}の形を取るものもあることが知られている。形は違うがいずれもフィアロ型の分生子形成型のものである。
1809年Linkが記載
1822年 Friesが’’Gibberella’’を記載
1935年Wollenweber & Reinking:16亜属、64種、57変種、22型
Lumber
1945 Snyder & Hansen
1971 Booth
Matuo
1968年  - Tousson & Nelson
1983年  - Nelson, Toussoun & Marasas(ランパー学派のスプリッターへの転換。分類の方向性の統一)
O’Donnell
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フザリウム属のいくつかの種は[[カビ毒]]のマイコトキシンを産生する。おもなものには、[[トリコテセン]]系マイコトキシン(デオキシニバレノール、ニバレノール、[[T-2トキシン]])、 ゼアラレノン、フモニシン、ブテノライドなどがある。
 
トリコテセン系マイコトキシンは、汚染された穀物を摂取することにより、食中毒性無白血球症 (ATA) と言われる中毒症状(悪心、嘔吐、腹痛、下痢、造血機能障害、免疫不全など)を起こす。ゼアラレノンは女性ホルモン様作用を持ち([[環境ホルモン]])、家畜に不妊、流産、外陰部肥大を引き起こす。
 
=== ヒトの病原菌 ===
[[樹木]]の傷から染み出る[[樹液]]には糖分などが含まれ、これを生育場所とする菌は数多く、まとめて[[樹液菌]]などと呼ばれる。特に[[酵母]]やそれに近縁なものが多く生息し、樹液が発酵しているのはよく知られていることであるが、時期が立つと次第に[[糸状菌]]も生育する。フザリウムもその中で多いものの一つであり、この菌がよく繁殖すると、その部分が赤や紅色に染まってしまう。この菌は古くから{{snamei|F. roseum}}であるとされてきた<ref>椿、1995、p.144</ref>。しかし、現在では、これは{{snamei|F. aquaeductuum}}とされている<ref>細矢・出川・勝本、2010、p.90</ref>。
 
これを外から見れば、樹皮の傷口やその周辺に樹液が染み出し、そこに菌類が繁殖して何やらブヨブヨの固まりとなり、これが赤く染まってしまうのである。特に[[ミズキ]]などでは樹液の分泌が多いのか、傷口から下側に数十cmにもわたって赤いブヨブヨが広がる状態も見られる。古くは「木の切り傷から血が流れていた」などという記録があるのもこれであるらしい。この状態が長く続くことはなく、樹液の分泌が止まれば栄養の供給が断たれるから、次第に干からび、それに連れて菌の種類も変わり、最後は黒っぽくなって終わると言う。また、この状態でフザリウムの完全世代が見られることもあるとのこと<ref>椿、1995、p.144</ref>
この状態が長く続くことはなく、樹液の分泌が止まれば栄養の供給が断たれるから、次第に干からび、それに連れて菌の種類も変わり、最後は黒っぽくなって終わると言う。また、この状態でフザリウムの完全世代が見られることもあるとのこと<ref>椿、1995、p.144</ref>。
 
なお、湿ったところに赤い色で繁殖するのはこのカビだけではない。[[不完全酵母]]のロドトルラ ({{snamei|Rhodotorula}}) などの場合も多いので、外見だけでの判断はできない。
 
== 脚注 ==
* [[椿啓介]] 『カビの不思議』 筑摩書房、1995年
* 杉山純多編/岩槻邦男・馬渡峻輔監修 『菌類・細菌・ウイルスの多様性と系統』 裳華房、2005年
* {{Citation |author=Anne E. Desjardins “Fusarium |title=Fusarium Mycotoxins: Chemistry, Genetics, and Biology“ Biology |publisher=APS Press, |year=2006}}
* Nelson・Toussoun・Marasas “FUSARIUM{{Citation SPECIES|author1=Paul E. Nelson |author2=T. A. Toussoun |author3=W. F. O. Marasas |title=FUSARIUM SPECIES: An Illustrated Manual for Identification“ Identification |publisher=The Pennsylvania State University Press, |year=1983}}
* 細矢剛・出川洋介・勝本謙著/伊沢正名写真 『カビ図鑑』 全国農村教育協会、2010年
 
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