「地名学」の版間の差分

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日本の地名学、地名研究は、いわゆる[[在野]]の人々によって支えられてきたため、非科学的という指摘などもあって、一部の学者は地名学に「学」としての位置を認めていない。日本の大学で現在「地名学」の講座を持つところはない(と思われる)。また日本全国の地名を対象に研究している人は、決して多くない。
 
近代に入って、[[柳田國男]]、[[鏡味完二]][[鏡味明克]][[楠原佑介]]などの人たちによって日本の地名研究は推進されてきたが、近年は特に歴史地理学者や中世史を中心とした歴史学者の中にも地名を重視する研究が生まれている。
 
確かにこれまで、日本の地名研究とよばれるものには、文字にとらわれた[[俗語源]]や[[民間語源]]に拘泥したものや、狭い地域での知識しか持たず、[[地名語彙]]や言葉としての地名に対する認識が不足しているケースも少なくない。[[郷土史|地方史]]、旅行案内書、テレビ、雑誌などにおける地名解説には、このような俗語源を事実のように解説するものが依然として多く、歴史学者や地名学者などの中にも、地名を「学」として学ばず、非科学的な内容でありながら、文字資料の重視という姿勢から、過去の文献での記載内容(特に近世の地誌類などによる地名解説)の俗語源から脱することができない人が多い。そのため「地名学」(=地名を総合的、科学的に研究しようという方向)と「地名解説」(=民間語源と多くの歴史学者、郷土史家による特定地域の地域の情報しか活用しない地名解説)との乖離を生じている。[[櫻井澄夫]]などはこのような俗語源、民間語源中心の地名研究を「バスガイド地名学」と呼んで批判している(このようなバスガイド地名学は、決して日本だけのものではない。例えば中国の雲南省の昆明近くにある「狗街」という交通の要所で、現地のバスガイドは、「ここで昔、犬(=狗)が売られていました」と解説しているが、この地方の犬食とは関係なく、実際は十二支の狗の日に市場が開かれたことに由来するいわゆる市場地名である。このような十二支による市場地名はこの地方に多く、特徴的な地名である(陳正祥などの研究がある))。日本でも市日に因む市場地名は多い(月刊「しにか」における櫻井澄夫の連載による)。
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このような俗語源、民間語源説は、ストーリー性があるため、面白い話となり、それが一般受けするため、マスコミ、テレビ局などに「採用」され、有名人の言説であれば、書評家、他分野の学者にまで持ち上げられることさえある。一方、意味が分からないとアイヌ語、朝鮮語などを持ち出して解決しようとするのは相変わらずであり、関東地方の字名までアイヌ語で説明しようというような動きは民間の研究者などにまだ多い。
 
そういった「民間語源」中心の非科学的「バスガイド地名学」がはびこっている反面、最近は歴史的な文献や古文書、小記録と、現地の小字や通称(地名)の収集、それらの地図化により、語義を考え、古文書、古記録等と照合して、歴史を解明しようとする革新的な動きが[[九州大学]]の[[服部英雄]]教授らの努力により活発化しており、大きな成果をあげてきている。この動きに影響を受け、各地での検地帳、水帳などに記録された地名と近代以降の字名との比較による、中世、近世の歴史研究も各地で起きている。
 
また国語学からは[[笹原宏之]]のように、国字を含めた漢字の地名での実際の使用例からの研究など新たな角度からの研究も進んでいる。日本の現在の地名研究を見ていくと、優れた研究があるのにそれを参照していないという問題がある。