「リンク式サスペンション」の版間の差分

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ここでは、[[固定車軸]]のものについてのみ説明する。[[リンク機構|リンク]]を用いた[[独立懸架]]については、[[マルチリンク式サスペンション]]を参照のこと。
 
また、[[1990年代]]の[[日産自動車|日産]]の一部の[[二輪駆動#FF(フロントエンジン・フロントドライブ方式)|FF]]車に見られた、サスペンション部品のサプライヤーである「[[ヨロズ]]」の提案による「リア[[マルチリンクビームサスペンション|マルチリンクビーム]]」式は、[[トーションビーム式サスペンション|トーションビーム式]]の横方向の規制を「スコットラッセルリンク」([[:en:Scott Russell linkage|Scott Russell linkage]]) という2つの特殊なリンクで行うもので、これも除外する。
 
== 概要 ==
[[車軸]]と[[シャシ (自動車)|車台]]を数本の[[棒]]によって結び、車軸の位置決めをする方法。この棒は、前後左右に働く力のみを受け持ち、[[鉛直]]方向の荷重は[[ばね]]で支えられ、車軸は上下方向の動きを許されている。この棒は両端に軸受けや[[ゴム]]ブッシュを持ち、ある程度自由に動きながら[[牽引力]]や[[制動力]]を車台に伝える働きをするため、「リンク」と呼ばれる。
 
丸[[鋼管|パイプ]]の直管を使った単純なのものが一般的であるが、中にはコストの掛かった[[造]]や[[造]]による成型品もある。
 
サスペンション全体を指すときは「リンク式」と呼ばれるが、部品単位では、丸パイプのものは「トルクロッド」、または単に「ロッド」、鋼板[[プレス加工|プレス]]や鋳造・鍛造等の複雑な形をした専用成型品は「アーム」と呼ばれることが多い。
 
前後方向の位置決めのトレーリングアームに、横方向の位置決めの、ラテラルロッド([[:en:Panhard|パナール]]ロッド)、ワッツリンク、A字形(または2本のロッドが離れたハの字形)もしくはV字形(または2本のロッドが離れた逆ハの字形)に組まれたロッドのいずれかが組み合わされる。A形(ハの字形)やV形(逆ハ字形)のロッド(アームは、アクスルに対し、車体縦方向に置かれ、前後方向の位置決めにも兼用される。
 
== 種類 ==
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車軸の前後方向の位置決を行う主リンクをトレーリングアーム(トレーリングリンク)またはラジアスロッドと呼び、平面視で車台中心線に平行に、左右に一本ずつ置かれる。 これだけでは横方向(車台の左右方向)の力に対し、車軸の位置を保持できないため、[[ラテラルロッド]](「ラテラルリンク」、[[パナールロッド]]とも)と呼ばれる、「3本目のリンク」を横方向、つまり、平面視では車軸と平行で、車台中心線と直角に配置し、横からの力を車台に伝え、車軸を支える方式。
 
ラテラルロッドは、その支点を中心として[[振り子]]運動をするため、車軸(車台)の上下動の際に、車軸の横動により[[タイヤ]]が地面を横方向に「こする」力が発生する。この現象は、その名のとおり「対地スカッフィング」と呼ばれ、安定性や乗り心地が悪化する原因となる。ラテラルロッドが短い場合は、上下動に対する角度変化が大きくなり、車軸の[[変位]](移動距離)も大きくなるため、それを軽減するため、ラテラルロッドはできるだけ長くされ、乗員や貨物の荷重のかかった、実際の使用状況で水平に近くなるように設計される。
 
このスカッフィングの発生を嫌い、横方向の変位のない、[[ワッツリンク]]や、左右対称となるA(ハ字形)・V形(逆ハの字形)のロッド(アームを位置決めに用いる車種もある。
 
=== 4リンク式サスペンション ===
[[1980年代]]中盤から[[マルチリンク式サスペンション]]が[[高級乗用車]]や[[スポーツカー]]に用いられるようになり、[[アウディ]]や[[メルセデス・ベンツ]]では4リンク式などと表現しているが、ここで説明するのはこれらの[[独立懸架]]式では無く、[[固定車軸]]式である。
 
前後方向の2本の主リンク(ラジアスロッド)のほかに、2本の補助リンクを平面視で「ハの字」に配置し、横力に対応する方法。
 
駆動力や制動力によるアクスルハウジング(ホーシング)の前後回転を防ぐため、通常主リンクは側面視で低い位置に、補助リンクはそれよりも高い位置に配置される。
 
=== 5リンク式サスペンション ===
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3リンク式の上側に前後方向の補助リンクを追加し、ラテラルロッドを含んだ5本で構成する方法。
 
補助リンクは、平面視で車台中心線に平行な場合と、4リンク式に準じ、やや「ハの字」の場合とがある。
 
国営時代に設計された[[アルファ・ロメオ]]の[[アルファロメオ・アルファスッド|アルファスッド]]は、後輪用アッパーアームを後方に配置したワッツリンク構成となっており、横方向のの位置決めを含め、贅沢にも、3組のワッツリンクが用いられている。
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[[ファイル:Trunnion 001.JPG|thumb|200px|上からテーパーリーフスプリング、トラニオンシャフト、トルクロッド。]]
[[ファイル:Trunnion 004.JPG|thumb|200px|傾斜状態。<br />ロッドが変位している。<br />この状況でも、リーフスプリングがイコライザーとして働き、2軸の荷重はほぼ同等となる。]]
[[トラニオン]] (Trunnion) とは、もともとは[[大砲]]の砲耳(ほうじ)を指すことばで、トラニオン式サスペンションは、大型車などで、後車軸が二軸の場合に使われる懸架方式のひとつ。ばねには長さの異なる板ばねを重ねたリーフスプリングか、板間摩擦の少ない等長テーパーリーフスプリングが使われる。
 
[[車台]]([[フレーム形式_(自動車)|フレーム]])にトラニオン軸を設け、それと、後車軸のアクスルハウジング(ホーシング)とをアッパー、ロワーのトルクロッドで結んだもの。車両の[[鉛直]]方向の荷重はスプリングのみが受け持つ。
 
二軸のためトルクロッドは8本となり、後・前軸に対してはリーディング、後・後軸に対してはトレーリング配置となる。リーフスプリングはトラニオン軸を支点に[[シーソー]]運動を許され、二軸にまたがる形で接しているだけで、シャックルなどのばね吊りリンクは不要となるほか、ばねを[[イコライザー]]として兼用できること、ばねの数も二軸で2組のみで済むことなど、簡素で軽量にまとまる利点がある。