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[[File:Yamato monogatari - Ogata Gekko serie 1.jpg|thumb|芦刈([[尾形月耕]]『大和物語』)]]
[[File:Yamato monogatari - Ogata Gekko serie 2.jpg|thumb|藤原忠文(尾形月耕『大和物語』)]]
[[File:Yamato monogatari - Ogata Gekko serie 3.jpg|thumb|岩手の御鷹(尾形月耕『大和物語』)]]
[[File:Yamato monogatari - Ogata Gekko serie 4.jpg|thumb|馬ぶね(尾形月耕『大和物語』)]]
[[File:Yamato monogatari - Ogata Gekko serie 5.jpg|thumb|猿沢の池(尾形月耕『大和物語』)]]
[[File:Yamato monogatari - Ogata Gekko serie 8.jpg|thumb|姥捨山(尾形月耕『大和物語』)]]
 
『'''大和物語'''』(やまとものがたり)とは、[[平安時代]]に成立した中古[[日本]]の物語。
 
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『[[伊勢物語]]』の影響のもとに成立した作品とされており、「[[大和国|大和]]」の名は「[[伊勢国|伊勢]]」に対する命名であるといわれている。しかし、大和という名の女房の手になる物語だから「大和物語」だとする説もあり、書名の由来については不明である。
 
『大和物語』の作者について、古くは[[在原滋春]]や[[花山天皇|花山院]]が擬せられたが、現在に至るまで未詳である。内容が[[宇多天皇]]や周辺の人物話題になることが多く、その成立には宇多天皇の身辺に侍っていた女房が関わっているといわれる。以下作者ではないかとされる人物を列挙する。
 
*説(1):[[在原滋春]](『伊勢物語』では[[在原業平]]が関係している点で)
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*説(5):[[敦慶親王]]侍女大和
*説(6):[[源順]]
*(7):[[清原元輔]]
 
== 内容・構成 ==
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**G系統(首書本系統)…首書本、抄、虚静抄(拾穂抄本)の3本。純粋度は極めて低下。
**H系統(桂宮本系統)…[[宮内庁]]書陵部所蔵[[桂宮本]]、[[京都大学]]附属図書館所蔵中川家旧蔵本、[[永青文庫]]本など。
*第二類(P系統)…[[天理大学]]附属図書館所蔵[[御巫清勇]]旧蔵本(御巫本(みかなぎぼん))、[[愛媛大学]]附属図書館所蔵[[鈴鹿三七]]旧蔵本(鈴鹿本)の2本。第172段の後に附載説話第二類9章段が入り、第173段へ続く。第173段のあと、「此物語は[[花山天皇|花山院]]御作なりと本にあり」とあり、次に第169段が移されている。これらは本文の特徴から、[[藤原清輔]]や[[顕昭]]などの[[六条家]]の人々のあいだで使われていた系統の伝本ではなかったかといわれる。
*第三類(Q系統)…[[久曾神昇]]所蔵勝命本(しょうみょうぼん)、[[中村専一]]氏旧蔵[[九州大学]]附属図書館所蔵[[支子文庫|支子(くちなし)文庫]]旧蔵本の2本。第142段と第143段との間に他本にはない一段を有し、第173段を欠く。
 
== 大和物語(尾形月耕画) ==
以下は[[尾形月耕]]による『大和物語』の[[木版画]]である。同じ歌物語の『伊勢物語』の絵画化は古くからあるが、『大和物語』については絵画化の例はほぼ皆無であり、月耕の作は珍しい作例といえる。章段番号は『[[日本古典文学大系]]』9に拠った。
 
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ファイル:Yamato monogatari - Ogata Gekko serie 2.jpg|[[藤原忠文]]の息子藤原滋望が父とともに東国へ下ることになったとき、滋望と交際していた監の命婦が[[ヤマモモ|やまもも]]を贈ると、滋望は命婦に「みちのくの あだちのやまも もろともに こえばわかれの かなしからじを」と詠んだ('''70段''')。
ファイル:Yamato monogatari - Ogata Gekko serie 6.jpg|藤原庶正(藤原兼輔の子)が[[賀茂神社]]の[[臨時祭]]の舞人に選ばれて勤めた。このとき或る女から「むかしきて なれしをすれる ころもでを あなめづらしと よそにみるかな」と詠みかけられる('''113段''')。
ファイル:Yamato monogatari - Ogata Gekko serie 7.jpg|大和掾という男は妻のほかに[[筑紫]]出身の女を妾にしていたが、男は心変りして妾とは別れることになり、妾は故郷の筑紫へ帰ることになった。男と本妻は[[山崎宿|山崎]]の渡しまで出て筑紫の女を見送ると、女は男と本妻に「ふたりこし みちともみえぬ なみのうへを おもひかけても かへすめるかな」という歌を残し舟で去ってゆく('''141段''')。
ファイル:Yamato monogatari - Ogata Gekko serie 1.jpg|[[攝津国]][[難波]]に住む夫婦は貧しさから、妻が夫を残し都に出て宮仕えをした。妻は都で別の男の妻となるも、なお故郷に残した夫のことが忘れられず摂津に戻る。だが住んでいた家は跡形もなく夫の行方もわからない。そこへ芦を背負ったみすぼらしい男が通りかかるが、その男は「きみなくて あしかりけりと おもふにも いとどなにはの うらぞうみうき」という歌を女に差し出す。これこそ別れたもとの夫であった('''148段''')。
ファイル:Yamato monogatari - Ogata Gekko serie 5.jpg|「ならのみかど」に仕える[[采女]]は帝のことを思うあまり[[猿沢の池]]に身を投げてしまった。それを聞いた帝がその死を痛み猿沢の池を訪れたとき、供をしていた[[柿本人麿]]が「わぎもこが ねたくれがみを さるさはの いけのみなもに なすぞかなしき」と帝の心に擬えて歌を詠んだ('''150段''')。
ファイル:Yamato monogatari - Ogata Gekko serie 3.jpg|朝廷に[[陸奥国]]の磐手(いわで)の郡より鷹が献上され、帝はこの鷹を大変気に入り可愛がっていた。あるとき近臣の大納言にその鷹を預けたところ、鷹は逃げて行方知れずとなった。八方手を尽くして探したがどうしても見つからない。致し方なく大納言はこのことを奏上すると、帝はただひとこと、「いはでおもふぞいふにまされる」というのみであった('''152段''')。
ファイル:Yamato monogatari - Ogata Gekko serie 8.jpg|[[信濃国]][[更級郡|更科]]に住む男は年老いたおばとともに暮らしていたが、男の妻はこのおばのことを憎み、深い山におばを捨ててこいと男に迫った。ついに男はおばをだまして月夜に連れ出し、山に置き去りにする。だが家に帰った男は、「わがこころ なぐさめかねつ さらしなの をばすてやまに てるつきをみて」と自分のしたことを悔い、おばを迎えに行ったという('''156段''')。
ファイル:Yamato monogatari - Ogata Gekko serie 4.jpg|[[下野国]]に住む男がそれまで暮らしていた妻を捨て、新しい女のもとで暮らすことになった。元の妻の家にある家財道具は新しい女の所へ持っていかれ、残ったのは馬ぶね(飼葉桶)ひとつだけ。それも取りにやらすため、男の従者で「まかぢ」という少年が使いに出された。妻はまかぢに、「ふねもいぬ まかぢもみえじ けふよりは うきよのなかを いかでわたらむ」と男に言づてしてくれと頼む。これを聞いた男は家財道具とともに元の妻のもとへと帰った('''157段''')。
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== 注釈書 ==
*『大和物語鈔』
*[[北村季吟]]([[1653年]]) 『大和物語抄』
*北村季吟([[1655年]]) 『大和物語追考』
*[[賀茂真淵]]([[1760年]]) 『大和物語直解』
*[[木崎雅興]]([[1776年]]) 『大和物語虚静抄』
*[[前田夏蔭]]([[1819年]]) 『大和物語錦繡抄』
*[[高橋残夢]]([[文政]]年間) 『大和物語管窺抄』
*[[井上覚蔵]]・[[栗島山之助]]([[1901年]]) 『大和物語詳解』 [[誠之堂書店]]
*[[浅井峯治]]([[1931年]]) 『大和物語新訳』 [[大同館書店]]
*[[武田祐吉]]・[[水野駒雄]]・([[1936年]]) 『大和物語詳解』 [[湯川弘文社]]
*[[吉田義則]]監修・[[西義一]]([[1952年]]) 『大和物語新講』 [[崇文館]]
*[[阿部俊子 (文学博士)|阿部俊子]]([[1972年]]) 『大和物語』(校本古典叢書 [[明治書院]]
*[[柿本獎]]([[1981年]]) 『大和物語の注釈と研究』 [[武蔵野書院]]
*[[糸井通浩]](1981年) 『影印叢刊28:鈴鹿本 大和物語 - 愛媛大学附属図書館蔵』 [[和泉書院]]
*[[雨海博洋]]([[1983年]]) 『大和物語諸注集成』 [[桜楓堂]](古注など
*雨海博洋([[1988年]]) 『大和物語』(有精堂校注叢書 [[有精堂]]
*[[柳田忠則]](1988年) 『大和物語』 新典社校注叢書5) [[新典社]]
*[[今井源衛]]([[1999年]]) 『大和物語評釈・上巻』 [[笠間書院]]
*今井源衛([[2000年]]) 『大和物語評釈・下巻』 笠間書院
 
== 研究書 ==
*[[阿部俊子]]([[1954年]]/[[1970年]]) 『校本大和物語とその研究』 [[三省堂]]
*[[久曽神昇]]・[[山本寿恵子]]([[1957年]]) 『勝命本大和物語と研究』 [[未刊国文資料刊行会]]
*[[高橋正治]]([[1962年]]) 『大和物語』(塙選書 [[塙書房]]
*[[雨海博洋]]([[1976年]]) 『歌語りと歌物語』 [[桜楓堂]]
*[[岡山美樹]]([[1994年]]) 『大和物語の研究』 桜楓堂
*[[柳田忠則]]([[1994年]]) 『大和物語の研究』 [[翰林書房]]
*[[古典研究会]](1994年) 『久曾神昇氏蔵:大和物語 勝命本』 [[汲古書院]]
 
 
== 近年の文献 ==
*雨海博洋・岡山美樹全訳注 『大和物語』 [[講談社学術文庫]]上下、2006年
*尾崎左永子 『大和物語の世界』 書肆フローラ、2009年
*柳田忠則 『大和物語の研究』[[翰林書房]]、[[1994年]]
*柳田忠則 『大和物語研究史』翰林書房、[[2006年]]
*柳田忠則 『大和物語文献集成』[[新典社]]、[[2011年]]
 
== 外部リンク ==
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*[http://guides.lib.kyushu-u.ac.jp/content.php?pid=472404&sid=3879455 九州大学 貴重資料画像 九州大学図書館蔵支子文庫本『大和物語』について]
 
{{DEFAULTSORT:やまとものたり}}
[[Category:平安時代の文学]]
[[Category:物語 (日本文学)]]
[[Category:10世紀の書籍]]
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