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[[ファイル:Minuteman3launch.jpg|thumb|[[ヴァンデンバーグ空軍基地]]からテスト発射されたミニットマンIII型ICBM]]
'''大陸間弾道ミサイル'''(たいりくかんだんどうミサイル、{{lang-en-short|intercontinental ballistic missile}}、略称:'''ICBM''')、または'''大陸間弾道弾'''(たいりくかんだんどうだん)は、[[有効射程]]が超長距離で[[北アメリカ大陸]]と[[ユーラシア大陸]]間など、大洋に隔てられた大陸間を飛翔できる[[弾道ミサイル]]。[[アメリカ合衆国]]・[[ソビエト連邦]]間では、[[戦略兵器制限条約]](SALT)により、有効射程が「[[アメリカ合衆国本土]]の北東国境と、ソ連本土の北西国境を結ぶ最短距離」である5,500km以上の弾道ミサイルと定義された。
 
== 原理・方式 ==
陸上基地もしくは海中の[[潜水艦]]などから発射され、[[ロケット]]噴射の加速により数百kmの高度まで上昇し、その間に速度、飛行の角度などを調整して目標地点へのコースが決められる。燃焼を終えた[[ロケットエンジン]]は随時切り離され、[[弾頭]]だけが[[慣性]]により無誘導のまま飛行する。即ち、[[大砲]][[砲弾]]を撃つ場合に、目標を狙うために発射時の砲の仰角や発射薬量を調整して、砲弾そのものは自力で進路や速度を変えることがないのと基本的には同じで、ICBMもロケット式の超巨大な大砲と考えることもでき、「大陸間弾道弾」の名称も多く用いられる。中距離・準中距離など、他の弾道ミサイル(弾道弾)も同様である。
 
ICBMなどは、目標への誘導は発射から燃焼終了までの、ロケットの制御が可能な短時間になされなければならない。当初の[[弾道ミサイル]]は無線誘導を行なっていたため、液体燃料の使用とあいまって(後述)即時多数発射が不可能であった。[[1960年代]]に入って[[アメリカ合衆国|アメリカ]]の[[ミニットマン (ミサイル)|ミニットマン]]は[[慣性航法装置|慣性誘導方式]]を用いるようになったため、短時間に同時発射ができるようになった。
 
ICBMの[[軌道 (力学)|軌道]]は、他の弾道ミサイル(弾道弾)と同じく、全体的に見ると地球中心を[[焦点 (幾何学)|焦点]]の一つとする楕円軌道を描いており、{{要出典範囲|超長距離を飛行するため弾道の頂点高度は1,000kmから000-1,500kmにもなる。|date=2009年5月}}通常、その射程距離は8,000kmから000-10,000kmに達するので、命中精度の関係から全て[[核弾頭]]を搭載している。初期のICBMは単弾頭であったが、弾頭の[[MIRV]]化により、一基のミサイルに複数弾頭を搭載し、個別目標を攻撃できるようになった。
 
核弾頭は、当初のICBMの命中精度が劣り、[[平均誤差半径]]が大きかった(3km前後)ため、メガトン級の大威力のものが採用された。大威力の核弾頭は重く、搭載するロケットも大型にしなければならないなど問題が多かった。その後、アメリカを先頭に急速に改良が進み、平均誤差半径0.1km程度にさえ改良され、核弾頭も小型軽量化されている。MIRVの実現も、一つにはそうした小型軽量化の成果であると言える。大威力単弾頭より小型複数弾頭を用いた方が、破壊効率がよいため、弾頭核出力もキロトン程度に抑えられてきている。
 
ロケットエンジンの推進剤には[[液体燃料]]と[[固体燃料]]の2種類がある。弾道ミサイルの先駆けとなった[[ドイツ]]の[[V2ロケット]]が液体燃料を使用していたこともあり、初期のICBMも液体燃料であった。これは、出力の調整ができる上に大きな力が出せる長所があるため、現在でも宇宙ロケットはほとんどこの方式である。一方で、構造が複雑で機体も大型になりやすい。特に液体酸素や液体水素を酸化剤・燃料に用いる方式は、燃料をミサイルに充填したまま保管ができず、発射直前に充填する必要があるため、即時性が低かった。1960年代にアメリカでは固体燃料方式のICBMが実用化された。出力の調整ができず大きな力が出せない欠点はあるが、構造が簡単で小型かつ安価であり、安全性も高く、即時発射が可能であるので、アメリカではこれが主流を占めた。一方、[[ビエト邦|ソ連]]では液体燃料方式を改良し、ミサイル内に燃料を入れたままサイロ内で保持できる貯蔵式液体燃料のICBMを多数配備した。
 
== 歴史 ==
世界初の実用化された長距離弾道ミサイルは、[[ドイツ]]の[[V2ロケット]]であり、[[第二次世界大戦]]中の[[1944年]]に実用化されている。V2を発展させ、[[ヨーロッパ]]より[[アメリカ合衆国本土]]を直接攻撃できる[[弾道ミサイル]]として[[アグリガット (ロケット)|A10]]の開発が行われていたが、開発中に戦争が終結している。
 
V2の技術は大戦後に米ソ両国に受け継がれ、特に[[爆撃機|長距離爆撃機]]戦力で劣っていた[[ビエト邦|ソ連]]が開発に熱心であった。世界最初のICBMは初の[[人工衛星]][[スプートニク1号]]の打ち上げに使用されたソ連の[[R-7 (ロケット)|R-7]]である(1957([[1957]])。[[アメリカ合衆国]]で実用化されるようになったのは、[[アトラス (ミサイル)|アトラス]]であった。アトラスは[[1959年]]に実戦配備が開始された。[[1962年]]には[[タイタンI (ミサイル)|タイタン I]]が実戦配備に付けられたが、R-7やアトラス・タイタンは、[[液体酸素]]をロケット燃料の酸化剤に用いているため、即時発射態勢で待機ができず、発射準備にも時間を要する欠点があった。しかし60[[1960年代]]に入って貯蔵式液体燃料方式が普及し、ソ連の大陸間弾道弾やアメリカのタイタン IIはこの方式を採用するなど、即時発射の問題は解決した。アメリカでは1962年からミニットマンの配備を始めたが、これは固体燃料を用いたために即時発射が可能であっただけでなく、小型で安価であったため量産され、1,000基に達した。
 
それまでの[[中距離弾道ミサイル]](IRBM)(IRBM)が、ソ連攻撃のために[[ヨーロッパ]]に配備する必要があったのに対し、ICBMはアメリカ本土配備でもソ連攻撃が可能となった事は、政治的に有利であった。
 
また、初期のICBMは大規模地上施設から発射されたが、後には抗堪性の高い地下施設であるミサイルサイロ内に収められ、そこから発射されるようになった。ほかにも秘匿性の高い[[潜水艦]]に搭載したり、鉄道や大型TEL車両に搭載するタイプもある。
 
[[1993年]]の[[第二次戦略兵器削減条約]](START2)(START2)では米ロが使用するICBMでの[[MIRV]]の使用を禁止したが、結局[[ロシア]]側が[[批准]]せず、その後米ロ間で結ばれた[[モスクワ条約_ (2002年)|モスクワ条約]]ではMIRVを禁止しなかったため、MIRVの搭載も可能となった。
 
現在ICBMを配備している国は、[[アメリカ合衆国]]、[[ロシア]]、[[中華人民共和国]]の3国で、この3国に並ぶ核大国である[[イギリス]]はICBMを配備せず、核戦略を[[潜水艦発射弾道ミサイル]](SLBM)(SLBM)に頼っている。また[[フランス]]は冷戦期間中にIRBMを固定配備していたが、[[冷戦]]終了後に廃棄し、また、[[1970年代]]には大陸間弾道ミサイルの開発構想も持ったが断念し、現在はイギリスと同様にSLBMのみとなっている。
 
== 大陸間弾道ミサイルの一覧 ==
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{{USA}}
項目名(制式番号、名称)
* [[アトラス (ミサイル)|アトラス]] (MGM(MGM-16 AtlasD/E/F)F)
* [[タイタン (ロケット)|タイタン]] ([[タイタンI (ミサイル)|MGM-25A TitanI]]、[[タイタンII (ミサイル)|LGM-25C Titan II]])
* [[ミニットマン (ミサイル)|ミニットマン]] (LGM(LGM-30A/B Minuteman I、LGM-30F Minuteman II、LGM-30G Minuteman III)III)
* [[BGM-75 (ミサイル)|BGM-75 AICBM]] - 開発中止
* [[ミゼットマン (ミサイル)|ミゼットマン]] (XMGM(XMGM-134 Midgetman)Midgetman) - 開発中止
* [[ピースキーパー (ミサイル)|ピースキーパー]] (LGM(LGM-118A Peacekeeper)Peacekeeper)
 
{{SSR}}/{{RUS}}
項目名(ロシア制式番号、DOD識別番号、[[NATOコードネーム]])
* [[R-9_9 (ミサイル)|R-9]] (SS(SS-8、Sasin)Sasin)
* [[R-36_36 (ミサイル)|R-36M/MUTTKh/M2 ヴォエヴォーダ]] (SS(SS-18、Satan)Satan)
* [[R-7_7 (ロケット)|R-7]] (SS(SS-6、Sapwood)Sapwood)
* [[R-16 (ミサイル)|R-16]] (SS(SS-7、Saddler)Saddler)
* [[RT-2_2 (ミサイル)|RT-2]] (SS(SS-13、Savage)Savage)
* [[RT-21(ミサイル)|RT-21]] (SS(SS-16、Sinner)Sinner)
* [[R-36_36 (ミサイル)|R-36]] (SS(SS-9、Scarp)Scarp)
<!--*[[スクラッグ (ミサイル)|スクラッグ]] (、SS-X-10、Scrag) 未配備につき -->
<!--*[[スクルージ (ミサイル)|スクルージ]] (、SS-X-15、Scrooge) 未配備につき -->
* [[UR-100N]] (SS(SS-19、Stiletto)Stiletto)
* [[MR_URMR UR-100_100 (ミサイル)|MR UR100]] (SS(SS-17、Spanker)Spanker)
* [[RT-23_23 (ミサイル)|RT-23 モロデーツ]] (SS(SS-24、Scalpel)Scalpel)
* [[RT-2PM_2PM (ミサイル)|RT-2PM トーポリ]] (SS(SS-25、Sickle)Sickle)
* [[RT-2PM2_2PM2 (ミサイル)|RT-2PM2 トーポリM]] (SS(SS-27、Sickle)Sickle)
 
{{CHN}}
項目名(制式番号、DOD番号)
<!--*[[東風-2]] 射程からIRBMに分類されるはず-->
* [[DF-5 (ミサイル)| 東風-5]] (DF(DF-5、CSS-4)4)
* [[DF-31 (ミサイル)| 東風-31]] (DF(DF-31、CSS-10)10)
* [[DF-41 (ミサイル)| 東風-41]] (DF(DF-41、CSS-X-10)10)
 
{{PRK}}
* [[テポドン2号]]
* [[KN-08]] - 開発中
 
== 関連項目 ==