「パーソナリティ障害」の版間の差分

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正常なパーソナリティ
多軸評定
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{{パーソナリティ障害}}
 
'''パーソナリティ障害''' (パーソナリティしょうがい、{{lang-en-short|Personality disorder}}, '''PD''')とは、文化的な平均から著しく偏った行動の様式であり{{sfn|世界保健機関|2005|p=210}}{{sfn|アメリカ精神医学会|2004|p=パーソナリティ障害・診断的特徴}}、特徴的な生活の様式や他者との関わり方{{sfn|世界保健機関|2005|p=210}}、または内面的な様式を持ち{{sfn|アメリカ精神医学会|2004|p=パーソナリティ障害・診断的特徴}}、そのことが個人的あるいは社会的にかなりの崩壊{{sfn|世界保健機関|2005|p=211}}や著しい苦痛や機能の障害をもたらしているものである{{sfn|アメリカ精神医学会|2004|p=パーソナリティ障害・診断的特徴}}。青年期や成人早期に遡って始まっている必要がある{{sfn|世界保健機関|2005|p=210}}{{sfn|アメリカ精神医学会|2004|p=パーソナリティ障害・診断的特徴}}。[[精神疾患#重症度|症状が著しい苦痛や機能障害をもたらしていない]]ものは、正常な[[人格|パーソナリティ]]である{{sfn|アレン・フランセス|2014|p=167}}。
 
従来の[[境界例]]や[[精神病質]]の受け皿にあたる概念である。以前は、'''人格障害'''(じんかくしょうがい)の訳語が当てられていたが、烙印<ref name="早見表2003"/>あるいは偏見的なニュアンスが強いことから現在の名称に変更された{{sfn|世界保健機関|2005|pp=5-6(監訳者の序)}}。なお以前は同様の意図から'''性格障害'''と言われることもあった。
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パーソナリティ障害は広義において[[神経症]]に入る概念である。今日の精神科における神経症圏の病名は、そのほとんどが患者自身の苦しみ・つらさの中心となっている問題に「障害」をつける形での命名となっている。[[強迫性障害]]のように。しかし苦しみやつらさが一つに限局できず、より深い問題を抱える例がある。このような患者は慢性的、かつ複数の症状をかかえており、抑うつや不安感、[[悲観主義|厭世観]]や希死念慮などの、人生を幸せに生きることができないという広範囲に及ぶ問題を持ち、「自分が自分であることそのもの」「生きることそのもの」、つまり[[人格|パーソナリティ]]が苦しみやつらさの中心であるとしか表現できないような状態をパーソナリティ障害と位置付けている{{sfn|小羽俊士|2009}}。パーソナリティ障害という病名を付けることは、障害の対象を明確にすることにより、治療とそのためのコミュニケーションに利用するという、ポジティブな意味でなされている{{sfn|小羽俊士|2009}}。
 
同様に、パーソナリティ障害は一種の「性格」であるとも言えることから病気ではないと思われている点も多いが、これは短絡的な考えである。医学においては生物学的な存在概念である「疾患」と違い、医学においては「[[病気|疾病(病気)]]」は正常な状態である「[[健康]]」に対置する価値概念であり、平均からかけ離れた状態になり、[[生存]]する上で不利になることを意味する。またそれら病気の概念は、人間が生活していく上で不都合な状態であるとする社会的な側面も包含している。よって、パーソナリティ障害は広義の意味で疾病であると言えるだろう<ref>{{Cite book|和書 |author=大熊照雄 |title=現代臨床精神医学 改訂第11版 |date=2008-01 |publisher=金原出版 |ref=大熊照雄2008}}</ref>。
 
という意見も存在するが、世界保健機関は、本質的で重大な問題があるため疾患や病気といった言葉を避け、障害という用語を用いている{{sfn|世界保健機関|2005|p=5}}。
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==分類 ==
診断分類には、[[世界保健機関]]による[[ICD-10 第5章:精神と行動の障害|ICD-10精神と行動の障害]]と、[[アメリカ精神医学会]]による『[[精神疾患の診断・統計マニュアル]]』(DSM)が存在する。
 
===DSMによる分類 ===
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F60-62をひと塊で説明しており{{sfn|世界保健機関|2005|p=210}}、他は「F61.混合性および他のパーソナリティ障害」、「F62.持続的パーソナリティ変化、脳損傷および脳疾患によらないもの」である{{sfn|世界保健機関|2005|p=207}}。
 
==多軸評定におけるパーソナリティ障害==
『[[精神疾患の診断・統計マニュアル]]』(DSM)には、1点だけに関心が絞られてしまえば見過ごすようなことを系統的に評価するために、[[精神疾患の診断・統計マニュアル#多軸評定|多軸評定]]を持っている{{sfn|アメリカ精神医学会|2004|pp=39-51}}。I軸の精神疾患、II軸のパーソナリティ障害と[[精神遅滞]]、III軸の一般身体疾患による精神障害、IV軸の心理社会的また環境的な問題、V軸の機能の全体的な評定と総合的に見るということである{{sfn|アメリカ精神医学会|2004|pp=39-51}}。そこではパーソナリティ障害は、精神遅滞と共にII軸であり該当すべき状態がない場合には、II軸にはV71.09という診断コードが割り当てられる{{sfn|アメリカ精神医学会|2004|pp=39-51}}。コードは用いず障害に達しないような人格的特徴や、[[防衛機制]]のために用いることもできる{{sfn|アメリカ精神医学会|2004|pp=39-51}}。
 
==診断 ==
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===世界保健機関===
F60特定のパーソナリティ障害は、パーソナリティの領域を含む性格と行動における重度の障害であり、崩壊した個人や社会機能を伴っていることがほとんどである{{sfn|世界保健機関|2005|p=211}}。小児期後期以降から現れる傾向にあるが、16~17歳において適切に診断されるということは疑わしく、成人期に入り明らかとなってから持続する{{sfn|世界保健機関|2005|pp=211-212}}。
診断基準dが、小児期から青年期に発症したものが持続していることを要求している{{sfn|世界保健機関|2005|p=212}}。診断基準eが、相当な苦痛について言及している{{sfn|世界保健機関|2005|p=212}}。診断基準fが、職業上あるいは社会的推敲遂行機能の重大な障害を要求している{{sfn|世界保健機関|2005|p=212}}。これらの全般的診断ガイドラインは、すべてのパーソナリティ障害に適用されるものであり、その補助的なものは個々において示されている{{sfn|世界保健機関|2005|p=212}}。
 
その評価には、生活史を含めた多くの情報源に基づくべきである{{sfn|世界保健機関|2005|p=211}}。また多軸的に評価することで、他の障害によって引き起こされているパーソナリティ障害の記録は容易になる{{sfn|世界保健機関|2005|p=211}}。
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==参考文献 ==
'''統計のための診断マニュアル'''
*{{Cite book|和書|author=世界保健機関|authorlink=世界保健機関|coauthorcoauthors=(翻訳)融道男、小見山実、大久保善朗、中根允文、岡崎祐士|title=ICD‐10精神および行動の障害:臨床記述と診断ガイドライン|edition=新訂版 |publisher=医学書院|date=2005|isbn=978-4-260-00133-5|pages=|ref=harv}}、{{Cite book|author=世界保健機関|title=The ICD-10 Classification of Mental and Behavioural Disorders : Clinical descriptions and diagnostic guidelines (blue book)|publisher=World Health Organization|date=1992|url=http://www.who.int/classifications/icd/en/bluebook.pdf|format=pdf|isbn=|pages=|ref=harv}}
*{{Cite book|和書|author=アメリカ精神医学会|authorlink=アメリカ精神医学会|coauthorcoauthors=(翻訳)高橋三郎・[[大野裕]]・染矢俊幸|title=DSM-IV-TR 精神疾患の診断・統計マニュアル|edition=新訂版|publisher=[[医学書院]]|date=2004|isbn=978-0890420256|ref=harv}}
*{{Cite book|和書 |author=アメリカ精神医学会|authorlink=アメリカ精神医学会|coauthorcoauthors=(翻訳)高橋三郎・[[大野裕]]・染矢俊幸|title=DSM-IV-TR精神疾患の分類と診断の手引|edition=新訂版 |date=2003-08 |publisher=医学書院 |ref=DSM診断基準早見表新訂版2003}}
 
'''医学書'''
*{{Cite book|和書|author=アレン・フランセス|authorlink=アレン・フランセス|coauthorcoauthors=大野裕(翻訳)、中川敦夫(翻訳)、柳沢圭子(翻訳)|title=精神疾患診断のエッセンス―DSM-5の上手な使い方|publisher=金剛出版|date=2014-03|isbn=978-4772413527|ref=harv}}、''Essentials of Psychiatric Diagnosis, Revised Edition: Responding to the Challenge of DSM-5®'', The Guilford Press, 2013.
*{{Cite book|和書 |author=小羽俊士 |title=境界性パーソナリティ障害―疾患の全体像と精神療法の基礎知識 |date=2009-01 |publisher=みすず書房 |isbn=978-4622074458 |ref=harv}}
*{{Cite journal |和書|author=高見元博 |date=2006-10|title=最近の「人格障害者」報道が狙うもの|url=|journal=精神医療|volume=|issue=44|pages=108-112|naid=40015152561|ref=高見元博2006}}