「自殺系サイト」の版間の差分

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==概要==
インターネットを介して見ず知らずの人が集まることから、しばしば[[出会い系サイト]]と比較されるが、利用者の多くは明確な自殺の意志を持たず、ただ漠然とした将来に対する不安から、自殺する傾向が指摘されている。ネットで知り合っただけの男女が、これらのサイトを介して、初対面でいきなり一緒に自殺するという事件が、日本の各地でみられ、[[社会問題]]となっている。
 
===サイトの傾向===
これらの事件で中心的な役割を果たしているサイトは元来、自殺的願望のある個人が起こしたサイトが利用されたり、自殺防止を呼び掛ける筈の管理者が不在がちな掲示板が付いているサイトで、救いを求めてきたはずの閲覧者同士が掲示板上で意気投合するケースが指摘されている。
 
またこの他にも、死に対してある種のロマンチックな幻想を抱いている人が文芸活動的に興したサイトが、作者の興味が余所よそへ移った後でも残り続け、次第に自殺願望の人を集める場合もあるようだ。
 
中には、作者の個人的な趣味嗜好から自殺方法を延々と書き綴ったサイトも少なからず存在しており、作者の思惑はかくとして、自殺願望のある者を呼び寄せていることもある。
 
===現状===
いずれにしても現在、ネット上には様々さまざまな情報に埋没して、管理者不在の、言い換えれば利用者間で事態が暴走してしまいやすい潜在的自殺サイトは、膨大な数に上ると見られる。これらでは、日常から隔離されている死に関してオープンに話し合う場が形成されており、[[自殺系サイト#自殺系サイトの別の視点|以下]]に詳しく述べるが、心理的に抑圧された葛藤を[[匿名]]で話し合う・適度にガス抜きする場となっている様子もうかがえる。
 
日本では社会問題化した結果、大きくクローズアップされる傾向にあり、[[警察庁]]では2003年より統計を取るようになっている(2003年は発生12件・死亡数34人)が、2003年と2005年を比較した場合に発生総数比で約3倍の34件・死亡91人となっている<ref>[http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2006/02/10/10844.html INTERNETWatch記事] - 2013年6月閲覧</ref>。(警察庁まとめ・2006年2月9日)
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その一方で自殺をほのめかすインターネット上の[[電子掲示板|掲示板]]への書き込みに対する通報も増加しており、従来では「'''悪質ないたずら'''」として無視される・管理者側が削除する傾向もあったが、近年では[[特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律|プロバイダ責任制限法]]にも絡み、自殺への傾倒が疑われるような書き込みも通報されるに至っている模様だ。
 
2005年10月より始まった[[自殺予告]]者の情報を[[インターネットサービスプロバイダ|プロバイダ]]やサーバー運営側が警察に開示することを求めるガイドライン(→[http://www.soumu.go.jp/s-news/2005/050825_4.html 総務省資料])を運用し始めてからは減少傾向も見られ、2005年10月~12月の3ヶ月間は前年度・同時期比で半分以下となるなど、社会制度による抑止策も一定の効果が上がっている模様である。
 
現状に於いてはまだ突発的な自殺に対応しきれない部分も多いが、曖昧模糊とした自殺願望を無闇に助長させかねないケースでは、個々の志願者をケアすることで抑止される傾向が見られる。
 
==自殺サイトの吸引力に付いて==
自殺情報系サイトの多くでは、自殺する自分を[[空想]]し、ある種の[[カタルシス]]効果を得ようとする人たちが集まる可能性が考えられる。しかし一度実現的な自殺の機会が巡ってくると、漠然とした不安が次第に増長し、自殺傾向が強まる可能性も挙げられている。
 
特に閲覧者同士の対話が可能なサイトでは、誰かが[[集団自殺]]を提案してきた場合に、孤独感からつい誘いに乗ってしまい、実際に集まると死ぬ願望だけが意識を占め、'''一人だけの時よりも遥かに自殺しやすい'''環境にはまる危険性が高いと考えられる。
 
特に1990年代後半から続く経済的閉塞感から、将来を悲観したり何ら展望を見出せない青少年層の焦燥感は根強く、逆に死は非常に安楽な結末であるかのような、現代社会では隠蔽され、幻想化されたイメージにより、より安易に選択できるかのような対象になっていることも、そのようなサイトに人が集まる理由の一因に挙げること出来できる。
 
==未然に防がれた例と対応==
家族が無関心であることは非常に致命的である。中には家族の名前が出た報道を見て、初めて家族の深刻な状況に気付く場合もあるようだが、そうなっては手遅れである事だけは間違い無い。過去には、子供が突然姿を消したので、パソコンに残された閲覧履歴を見た親が捜索願を出し、間一髪で発見・自殺を思い留まらせることに成功した事例も報道されている。
 
特に[[プライバシー]]の尊重を求めながらも危うい均衡状態を保っている未成年者の場合は、家族の働き掛けが大きな防止要因になることも多い。独立した別個の人格であることを尊重しながらも、些細なサインも見逃さないケアが求められており、近年の多忙を極める社会状況にあって、なお難しい問題が突きつけられているのかも知れない。特に「親の手に負えない」事態に発展している場合は、「家族の恥」などと悠長に迷わず、的確に公的機関の援助を求めること、大いに必要と思われる。
 
国会でも自殺系サイトの情報開示などについて議論が行われ、今後の法規制として自殺系サイトで自殺をほのめかす書き込みに関しては上で述べたとおり、プロバイダが書き込んだ人物を特定し警察へ通報するようにさせる、もしくはプロバイダ側から自殺系サイトを閲覧出来できないようにする[[フィルタリングソフト|フィルタリング]]を行わせるといった動きがあり、今後は自殺系サイトが消える可能性が出てきてはいる。だが現在はこれらの対策が行われていないために、法規制の早急化が求められている。
 
==自殺系サイトの別の視点==
上記では自殺系サイトの傾向危険性などを挙げたが、逆に自殺系サイトに救われた人もおり、例えば自殺系サイトにおいて、自殺志望者だった人が心中を吐露することにより心理的ストレスが軽減され、結果として自殺を思いとどまった、という側面があることも無視は出来できない。実際に、いわゆる精神疾患に悩み、さらにそこから思いが自殺の方向へ向かう可能性のある人々にとっては、そういった気兼ねなく心中を吐露できる場がくなる可能性のある法規制に対しては根強い反対意見がある。
 
またそういった人々は「自殺系サイトが出来できたからといっても、統計的に自殺者総数が激増しているわけではないし、ネットで集って集団自殺をするのはあくまでも一手段であり、そもそもの根本となる原因が解消されない限り、別の方法で自殺する人数は変わらない」と反論する。事実、政府が作成した統計グラフを見る限りは前年、前々年と大きく差は出ていない。
 
これは日本にいて年間自殺者数が3万人前後であるのに対し、[[報道|メディア]]でセンセーショナルに取り上げられる自殺系サイト関連の自殺者が、その実態に於いて年間数十名程度に過ぎないためである。これらは過去の[[集団自殺]]事例とは別の、従来では個別の自殺志願者に過ぎない[[個人]]が、ネットを利用して知り合い、連れ添って自殺した結果に過ぎないとも見なす人も存在する。
 
==日本のネット心中問題の海外への影響==
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ただし、[[安楽死]]議論などに関するものは処罰の対象外となるという。
 
韓国では江原道で練炭を使った集団自殺が相次いで発生した事件で5件のうち4件は特定のインターネット自殺サイトが関与していたことが明らかにされ、自殺サイトの運営者が逮捕されている。
 
==関連する事件==
このような、非常に危うい現代を象徴するかのような自殺系サイトではあるが、その一方で他の事件に巻き込まれるという発端になったケースも存在する。なお自殺系サイト絡みと見られる自殺事例では、その報道件数を遥かに上回る未遂事件も[[暗数]]として存在していると見られる。
*[[1998年]]に、死に対して何等かの憧れを持っていた個人が、請われて他人の運営する自殺に関する情報を掲載していたウェブサイト上で[[電子掲示板]]の管理者をし、これを通じて知り合った人や[[口コミ]]で紹介された人に所有していた毒物を販売していた。買った人たちの内で女性が自殺、事件を知った販売者側も自殺を図るという事件も発生している。今日では服毒による自殺系サイト絡みの事件はほとんどいが、おそらく同事件が自殺系サイトの最も初期の形と言えるだろう(→[[ドクターキリコ事件]])。
:同件では、購入者らの一部は、自殺するための直接的な手段としてではなく、購入した毒物を「お守り」として常に携帯していて、一種の「自分の死を客観的に捉えるためのアイテム」として見なしていた模様だ。この部分は、自殺系サイトのカタルシス効果にもつながると考えられる。
*[[2005年]]に発覚した「[[自殺サイト殺人事件]]」では、自殺系サイトで[[快楽殺人]]嗜好者が「[[いじめ]]などを苦に死にたがっている人を物色し、集団自殺を主催すると偽って呼び出し、[[リンチ]]など自身の嗜好に沿う形で殺害する」という犯行に及んでいた。
:このケースでは、[[自殺関与・同意殺人罪|自殺幇助罪や自殺関与・同意殺人罪]]でも犯罪行為ではあるが、それ以上に目的を偽って呼び出し、自身の欲望を満たすために方法を急遽変更して殺害、捜査攪乱のためにその誘拐自体を身代金目的であるように偽装することもあったこの事件は、計画的かつ悪質な凶行であると考えられる。第4回公判で犯人男性自身も同じ自殺志願者仲間であると表明、死刑になることを希望し、被害者遺族も同様に死刑を望むということで死刑判決が下り控訴を取り下げ確定した。ただ犯人の行為は、殺害方法を途中で変更するという「結果の重大性を左右しかねるもの」である以上、「同じ自殺志願者仲間に対する行為」とは呼べず、この非対称性が「厳罰に値するか」という点で同裁判でも論点となった。
*[[2007年]]には千葉県の電気工事技師が「自殺サイト」を設置、[[闇金融]]から数百万円に及ぶ借金を抱え生活費欲しさにビジネスとして運営、川崎市在住の女性から自殺幇助の依頼を受け自殺に見せかけて窒息死させて殺害したとして嘱託殺人容疑で逮捕された。この男は睡眠導入剤など販売しており、同男性から睡眠導入剤入りドリンク剤を買った4名のうち1名がそれを使って自殺していたことも判明した。2007年10月現在は事件の詳細は警察が捜査中。<!--速報記事に堕さないように-->
:この事件では同工員が設置したサイトを「自殺サイト」とメディア筋が報じた中、[[オーマイニュース]]筋が同サイトを確認して「自殺サイトではなく(非合法な仕事も請け負う)何でも屋サイトではないか」として、上に述べた自殺系サイトとは違う[[闇サイト]](復讐・殺人なども請け負うとした違法サイト)の一種だとしている。2006年頃から闇サイトも社会問題化しており、同事件の発覚直後からインターネット上の違法コンテンツ規制論も活性化している。