「大和物語」の版間の差分

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*説(1):大和しまね(日本国)・・・『伊勢物語知顕抄』、北村季吟『大和物語別勘』、井上文雄『冠注大和物語』、井上覚蔵・栗島山之助『大和物語詳解』、藤岡作太郎『国文学全史:平安朝篇』、池田亀鑑「国語と国文学」(第十巻第十号)
*説(2):大和ことば(和語)・・・[[藤原清輔]]『袋草紙』
*説(3):大和歌(和歌)による古事・・・北村季吟『大和物語抄』
*説(4):大和心・・・南波浩校注「大和物語」(朝日日本古典全書)
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*説(8):都・・・賀茂真淵『大和物語直解』
*説(9):大和の国ぶり・・・[[折口信夫]]『日本文学史ノートⅡ』
 
 
== 前半と後半の分け方 ==
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*143段説…[[藤岡作太郎]](『国文学全史:平安朝編』)
*147段説…[[雨海博洋]](『歌語りと歌物語』)、[[南波浩]](『日本古典全書:大和物語』)、阿部俊子・今井源衛(『日本古典文学大系:大和物語』)、森本茂(『大和物語全釈』)、[[片桐洋一]](『鑑賞日本古典文学:大和物語』)、[[妹尾好信]](『広島大学文学部紀要』第44巻)
 
== 附載説話 ==
*附載説話第一類・・・『大和物語抄』、『大和物語秋成本』等に付記されている3章段の歌物語群を言う。『[[平中物語]]』の1段の前半、37段および34段、36段と、それぞれ一致している。
*附載説話第二類・・・御巫本と鈴鹿本にあり、172段と173段の間に入っている9章段で、これらの9章段は『[[平中物語]]』の19段から27段までの段序と一致している。ただし、主人公は[[右京大夫|右京の大夫]][[源宗于]]になっている。
 
== 主な登場人物 ==
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*兵部卿の宮([[元良親王]]、作中では故人)
 
== 附載説話伝本 ==
*現在『大和物語』本は、[[藤原定家]]・[[藤原為家]]・[[藤原為氏]]らによって書写・校合されてきた二条家本系統と、[[藤原清輔]]・[[顕昭]]らがその著述の中に引用した六条家本系統に大別される。現行で一般に読まれている本文は二条家本系統のものである。
*附載説話第一類・・・『大和物語抄』、『大和物語秋成本』等に付記されている3章段の歌物語群を言う。『[[平中物語]]』の1段の前半、37段および34段、36段と、それぞれ一致している。
*附載説話第二類・・・御巫本と鈴鹿本にあり、172段と173段の間に入っている9章段で、これらの9章段は『[[平中物語]]』の19段から27段までの段序と一致している。ただし、主人公は[[右京大夫|右京の大夫]][[源宗于]]になっている。
 
== 伝本 ==
*現在の諸本は、[[藤原定家]]・[[藤原為家]]・[[藤原為氏]]らによって書写・校合されてきた二条家本系統と、[[藤原清輔]]・[[顕昭]]らがその著述の中に引用した六条家本系統に大別される。
*第一類:二条家本系統
**(一)為家本・・・[[尊経閣文庫|尊経閣(前田家)]]蔵。[[京都大学]]国文学研究室本、京都大学図書館蔵本、[[武田祐吉]]本、木活字本、[[宮内庁書陵部]]蔵美濃判白茶色表紙袋綴本など。
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**H系統(桂宮本系統)・・・[[宮内庁書陵部]]所蔵[[桂宮本]]、[[京都大学]]附属図書館所蔵中川家旧蔵本<ref>近衛恵雲院関白稙家公外題、九条東光院関白頼通公」という
貼紙がある。</ref>、[[中院通勝]]筆[[細川家]][[永青文庫]]本<ref>[[1596年|文禄五年]]幽斎奥書あり</ref>など。第173段の次に、寛喜本と同じく「花山院の御つくり物かたりとある本にあり」としるし、次いで、「これは又こと本に書きたり」とあり、附載説話第一類があり、最末に寛喜本と同じく宇多法皇の経歴を載せる。
*第二類(P系統)・・・[[姉小路基綱]]写[[天理大学]]附属図書館所蔵[[御巫清勇]]氏旧蔵本(御巫本〈みかなぎぼん〉)、[[愛媛大学]]附属図書館所蔵[[鈴鹿三七]]氏旧蔵本(鈴鹿本)の2本。第172段の後に附載説話第二類9章段が入り、第173段へ続く。第173段のあと、「此物語は[[花山天皇|花山院]]御作なりと本にあり」とあり、次に第169段が移されている。これらは本文の特徴から、[[藤原清輔]][[顕昭]]などの[[六条家]]の人々のあいだで使われていた系統の伝本ではなかったかといわれる。御巫本と鈴鹿本は系統は極めて近いが、本文にはかなり多くの異同がある。
*第三類(Q系統)・・・[[吉良義則]]氏旧蔵[[久曾神昇]]所蔵勝命本(しょうみょうぼん)<ref>久曾神昇『勝命本大和物語とその研究』)で発表。</ref>(光阿弥陀仏本ともいう)と、その祖父本たる[[田村専一郎]]氏[[支子文庫|支子(くちなし)文庫]]旧蔵[[九州大学]]附属中央図書館所蔵本(支子文庫本または田村本)<ref>支子文庫本は第134段以降の零本</ref><ref>今井源衛[編]「(支子文庫)大和物語(影印):釈文と解題」『在九州国文資料影印叢書:第2期-1』在九州国文資料影印叢書刊行会、[[1981年]]刊、後に今井源衛『王朝の物語と漢詩文』笠間書院、[[1990年]]刊に再録</ref>の2本。第142段と第143段との間に他本にはない一段を有し、第173段を欠く。勝命本には「美濃権守入道勝命之以進上之本、・・・・、[[1200年|正治二年]]八月十九日 光阿弥陀仏 [[素光法師]]是也」とあり、その後に[[1240年|延応二年]]三月廿九日の奥書と[[1538年|天文七年]]六月五日、守梁の書写の旨の奥書がある。
 
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ファイル:Yamato monogatari - Ogata Gekko serie 3.jpg|朝廷に[[陸奥国]]の磐手(いわで)の郡より鷹が献上され、帝はこの鷹を大変気に入り可愛がっていた。あるとき近臣の大納言にその鷹を預けたところ、鷹は逃げて行方知れずとなった。八方手を尽くして探したがどうしても見つからない。致し方なく大納言はこのことを奏上すると、帝はただひとこと、「いはでおもふぞいふにまされる」というのみであった('''152段''')。
ファイル:Yamato monogatari - Ogata Gekko serie 8.jpg|[[信濃国]][[更級郡|更科]]に住む男は年老いたおばとともに暮らしていたが、男の妻はこのおばのことを憎み、深い山におばを捨ててこいと男に迫った。ついに男はおばをだまして月夜に連れ出し、山に置き去りにする。だが家に帰った男は、「わがこころ なぐさめかねつ さらしなの をばすてやまに てるつきをみて」と自分のしたことを悔い、おばを迎えに行ったという('''156段''')。
ファイル:Yamato monogatari - Ogata Gekko serie 4.jpg|[[下野国]]に住む男がそれまで暮らしていた妻を捨て、新しい女のもとで暮らすことになった。元の妻の家にある家財道具は新しい女の所へ持っていかれ、残ったのは馬ぶね(飼葉桶)ひとつだけ。それも取りにやらすため、男の従者で「まかぢ」という少年が使いに出された。妻はまかぢに、「ふねもいぬ まかぢもみえじ けふよりは うきよのなかを いかでわたらむ」と男に言づてしてくれと頼む。これを聞いた男は家財道具とともに元の妻のころ帰った('''157段''')。
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