「自由貿易」の版間の差分

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経済学者の[[野口旭]]は「比較優位とは、比較劣位と常に裏腹の関係にある。一国にとって『あらゆる産業が比較優位になる』ということは考えられない。構造調整が済むまで一時的な現象ではあっても、失業を増加させる。比較劣位化した産業の当事者にとっては耐え難いことであるが、貿易を行う限り、受け入れざるを得ない。貿易を閉ざした経済とは、発展の無い経済にほぼ等しいということも事実である<ref>野口旭 『ゼロからわかる経済の基礎』 講談社〈講談社現代新書〉、2002年、202-204頁。</ref>」「一時的な失業の発生を恐れ貿易を閉ざすことは、労働の有効利用の機会そのものを放棄することになる。さまざまな産業構造の変化の要因を無視して、輸入の影響だけを問題視しても意味がない。失業には貿易制限などより[[財政政策]]・[[金融政策]]による[[マクロ経済]]政策のほうがはるかに適切である<ref>野口旭 『グローバル経済を学ぶ』 筑摩書房〈ちくま新書〉、2007年、104-105頁。</ref>」と指摘している。
 
若田部昌澄は「もちろん自由貿易にはデメリットもあり、比較劣位にある職業・産業をあきらめなければならない。全体としてはプラスサムになるとしても、トレードの過程で勝者と敗者が出るのは避けられない。そこは、[[再配分]]・[[セーフティーネット]]で解決するしかない」と指摘している<ref>若田部昌澄・栗原裕一郎 『本当の経済の話をしよう』 筑摩書房〈ちくま新書〉、2012年、150-151頁。</ref>。
 
ジョセフ・E・スティグリッツは「自由貿易によって雇用が喪失しても、金融・財政政策がうまく機能すれば、雇用創出が実現可能であるが、大抵の場合実現されない。稚拙な貿易自由化によって失業率が上昇してしまうと、自由化による恩恵は無くなってしまう」と指摘している<ref>ジョセフ・E・スティグリッツ 『世界に格差をバラ撒いたグローバリズムを正す』 徳間書店、2006年、122-123頁。</ref>。スティグリッツは「貿易の自由化を実行する際、万全の支援体制をとる必要がある。産業の構造転換がなされるとき、一度だけ支援すれば済むということではない」と指摘している<ref>ジョセフ・E・スティグリッツ 『世界に格差をバラ撒いたグローバリズムを正す』 徳間書店、2006年、125頁。</ref>。