「VSS (狙撃銃)」の版間の差分

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|配備先 =
|戦争 = [[南オセチア紛争 (2008年)]]
|種別 = セミオートマティックライフル
|口径 = 9mm
|銃身長 = 200mm
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|製造数 =
}}
'''VSS'''({{lang-ru-short|Винтовка Снайперская Специальная}} {{lang-en-short|Vintovka Snayperskaya Spetsialnaya}} [[日本語]]訳:特殊用途狙撃銃)は、[[1987年]]に開発された半自動[[サプレッサー|消音]][[狙撃銃]]。[[7.62x39mm弾]]をベースに作られた'''9x39mm SP-5, SP-6'''という専用の亜音速弾を使用する。愛称は'''ヴィントレス'''(Vintorez {{lang-ru-short|Винторез}}, {{lang-en-short|thread cutter}}(糸鋸)。
 
== 概要 ==
[[1980年代]]、当時の[[ソビエト連邦|ソ連]]は[[冷戦]]の真っ只中であり、[[アフガニスタン]]や[[チェチェン]]など、多数の戦場を抱えており、[[特殊部隊]]([[スペツナズ]])の隠密潜入作戦や[[ゲリラ|ゲリラ作戦]]用消音銃の開発は急務であった。当初は[[AK-47#AKM|AKM]]や[[AK-74]]、[[AK-74#AKS-74U|AKS-74U]]に[[サプレッサー]]を取り付けて使用したが、初速が音速を超えることで衝撃波を発生させる[[口径|小口径]]高初速の[[5.45x39mm弾]]ではサプレッサーの効果は薄く、無理に装薬を減らせば射撃精度が著しく不安定になってしまうことがわかった。
 
そこで[[ソビエト連邦軍|ソ連軍]]は、銃そのものを消音化するだけでなく、専用の弾薬も含めた[[狙撃]]システムの開発に着手した。ソ連は当時の[[西側諸国]]のように、既存のライフルの精度を高めつつ消音加工を施すことに限界を感じ、まったく異なるアプローチを開始したのである。開発には[[ヴォログダ州]]キリロフ地区の特殊研究所デジニトクマッシ(TsNIITochMash:{{lang-ru-short|Центральный научно-исследовательский институт точного машиностроения}} {{lang-en-short|Central Scientific Institute for Precision Machine Building}} 中央科学精密機械建造研究所)の[[ペテロ・セルジェコフ]]と[[バルディミール・クラスコフ]]が設計を担当し、[[AS Val]]とほぼ同時期の[[1987年]]に完成、テューラ工場が製造している。
 
== 特徴 ==
作動機構はガス圧利用式でボルトを回転させ、[[|銃身]]とロックするターン・ロッキングが組み込まれている。ボルト本体の仕組みや構造は[[AK-74]]と共通点が多いなど、構造的にはAK-74を踏襲している。先端左右にはロッキング・ラグを持つ。
 
AK-74でいう[[弾倉|マガジン]]の直前まで全長を切り詰めている。後述するバリエーションを見ればわかる通り、レシーバーはもちろんバレルも非常に短く、全長のほとんどは大型の[[サプレッサー]]と木製の[[銃床|ストック]]で構成されている。通常10連ショートマガジンを使うが、弾数の多い20連マガジンも使用出来できる。ハンドガードやマガジンは[[合成樹脂|プラスチック]]製にして軽量化しており、バレルを覆うような大型のサプレッサーはバレルそのものよりも長いほどである。固定式の[[照準器|照準装置]]や大きく肉抜きされた木製ストック、スコープの取り付け方法など、[[ドラグノフ狙撃銃|SVD]]を参考にしたと思われる部分が多く見られる。スコープは[[PSO-1]]の[[9x39mm弾]]仕様でレティクルなどが異なるPSO-1-1が使用される。サプレッサーとストックをレシーバーから取り外せば、[[アタッシュケース]]などに収可能である<ref>床井雅美『軍用銃事典 改訂版』並木書房 233頁 ISBN 9784890632138 </ref>。
 
開発時に提示された性能が「400m以内から敵の防弾チョッキを貫通する完全消音狙撃銃」であったため、長距離での精密[[狙撃]]ではなく、中距離から短距離の狙撃、並びに近距離での銃撃戦を前提に設計されている<ref>笹川英夫『最新・最強GUNカタログ』[[竹書房]] [[2010年]] ISBN 978-4-8124-4305-7</ref>。そのため、銃身長は比較的短く、20連マガジンを使ってのフルオート射撃も可能である。
 
== 9×39mm SP-5, SP-6 ==
VSSの最大の特徴は、使用する[[弾薬]]にある。VSSで使用される[[9x39mm弾]]は、[[小銃|ライフル]]弾でありながら銃口初速が[[音速]]を超えず、[[衝撃波]]が発生しないため、[[ソニックブーム]]による断続的な[[音波]]が生じない。この弾薬と[[サプレッサー|消音器]]を組み合わせることによって驚異的な消音効果が発揮され、排莢口の真横に立っていない限り、ボルトが動作して弾薬を排莢する際の金属音しか聞こえなくなる。
 
銃声というものは、通常二種類の音で構成される。火薬の燃焼による炸裂音と、[[弾丸]]が[[音速]]を超える際のソニックブームである。多くの軍用ライフル弾は、弾丸を音速まで加速させることで貫通力、破壊力を生み出している。しかし、たとえ小さな弾丸といえども、物体が大気中で音速の壁を突破すれば強烈なソニックブームが発生する。このような弾丸では、サプレッサーを使用しても消えるのは火薬の炸裂音であって、ソニックブームによる音を完全に消すことは出来ない。
 
これまでは、最初から初速が音速を超えない[[.45ACP弾|.45ACP]]や.22LRといった[[拳銃]]弾か、音速を超える弾薬から装薬量を減らすなどして亜音速に変えたものを使うしかなかった。そこで[[ソビエト連邦|ソ連]]は、一定の威力を維持した亜音速弾を作るため、[[口径|大口径]]の弾丸を従来型のライフルカートリッジで撃ち出すという方法を考え付いた。
 
9x39mm弾は、[[5.45x39mm弾]]をベースとしてボトルネックではない(実際にはボトルネックはほんの僅かに残されている)ケースに、全長はそのままに口径が9mmまで大型化、重量は二倍に増した[[弾頭]]を装着している。装薬量(とそこから生じる発砲時の[[運動エネルギー]])はライフル弾に匹敵するが、弾頭重量が大幅に増加しており、銃口初速が音速を超えないように調節されている。
 
カタログ上の有効射程は400mとなっているものの、通常のライフル弾を使った[[狙撃]]以上にその[[弾道]]は遠方に行くほど落ち込む(弾道低落量の大きい)軌道を描くことになる。同時にその[[運動エネルギー]]が一定値まで維持出来できる間に限り、風などの影響を受けにくくなっている。また、弾頭が重い上に口径も大きいため、標的に命中すれば通常のライフル弾以上のダメージを与えられる。
 
こうして、「初速は遅いが射程内なら一定以上の威力を維持出来できる亜音速弾薬」が完成した。具体的な数値でいうと、銃口初速が290[[m/s]]、エネルギー値は516[[フィート重量ポンド|ft·lbf]]となる。参考までに、5.45x39mm弾は初速が940m/sでエネルギー値は971ft·lbf、[[9x19mmパラベラム弾|9x19mm弾]]は初速が350m/sでエネルギー値は394ft·lbfである。
 
また、弾頭や用途に応じて幾つかのバリエーションが存在している。
* SP-5 - 通常のボール弾(被覆鋼弾)。弾頭前部が[[スチール]]、後部がレッド([[鉛]])で、これを銅のジャケットが完全に覆うフルメタルジャケット弾。
* SP-6 - [[徹甲弾]](アーマーピアシング)。ホローポイントのように貫通したレッドの弾頭の中心にスチール削り出しの弾芯を差し込み、レッドの側だけを銅のジャケットで覆っている。レッドで弾頭重量を稼ぎ、頑丈なスチールが対象を貫通する。500mで6mmのスチール板を、200mなら2.8mmのチタニウムか三十層のケブラーを貫通することができるとされる。
* PAB-9 - SP-6の廉価版。削り出しだったスチールをプレス製に変え、生産性を増したことで単位辺りのコストを低下させている。しかし、[[プレス加工]]の精度が低かったため、射撃時の精度にもバラつきが生じ、バレルの磨耗も早くなるなどの事態が発生したため、既に生産は中止されている。
 
現在はSP-5とSP-6を中心に、[[狙撃銃]]以外の[[カービン]]や[[短機関銃|サブマシンガン]]といった同型弾薬を使用する銃の種類を増やすことで需要を増やし、消費量と生産頻度を上げてコストを減らそうとしている。
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== バリエーション ==
VSS以外にも、同じ[[9x39mm弾]]を使用する銃器が多数存在する。
; [[AS Val]]
: VSSとほぼ同じ構造を持つ消音自動銃。むしろVSSの[[アサルトライフル]]版であり、開発時期や配備状況なども同一である。[[銃床|ストック]]が[[IMI ガリル]]のようなサイドスイング式になり、[[照準器|スコープ]]が省略された他に、VSSとの違いはない。
{{main|AS Val}}
; SR-3 Vikhr
: AS Valから[[サプレッサー]]を外し、ハンドガードを若干大型化、ストックをサイドスイングからアッパーレシーバーへ折り畳む方式に変更したもの。コンパクトアサルトライフルと呼ばれるが、実質[[短機関銃|サブマシンガン]]である。
; [[9A-91]]
: SR-3 Vikhrの構造を更に簡略化したコンパクトアサルトライフル。[[1991年]]に開発された。レシーバーとマズルガード、ハンドガード、グリップなどの形状が変更され、これまで曲がっていた[[弾倉|マガジン]]も直線に改められている。9A-91をベースにVSK-94が製造された他、その内部構造は後の[[KBP A-91]]に引き継がれた。
{{main|9A-91}}
; VSK-94
: 9A-91をベースとする[[狙撃銃]]。[[1994年]]に開発。VSSの廉価版と考えるとわかりやすい。9A-91からの変更点は、マズルにサプレッサーを捩じ込み、グリップをストックと一体化したものに交換、VSSと同じ標準的な[[PSO-1]]スコープを取り付けただけと、非常に手軽な改造で狙撃銃にされている。
; [[KBP A-91]]
: 9A-91と[[OTs-14]]をベースに開発されたアサルトライフル。使用[[弾薬]]は9x39mm弾ではないが、作動機構は9A-91が参考にされている。また、[[ブルパップ方式|ブルパップ]]構造は[[OTs-14]]から継承されたものである。
{{main|KBP A-91}}
 
== 参考・脚注 ==
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; ゲーム
* 『[[Alliance of Valiant Arms]]』
: ゲーム内兵科である「[[狙撃手|スナイパー]]」のメイン武器として登場。
* 『[[America's Army]]』
: [[テロリズム|テロリスト]]が使用する。
* 『[[ARMA 2]]』
: キャンペーン"EW"で主人公が使用する。
* 『[[OPERATION7]]』
: [[狙撃銃|スナイパーライフル]]として登場。
* 『[[S.T.A.L.K.E.R. SHADOW OF CHERNOBYL|S.T.A.L.K.E.R.]]』
: 「Vintar BC」という名称で登場。2作目"Clear Sky"では、主人公Scarの愛用武器に設定され、オープニングムービーなどで描かれる。
* 『[[バトルフィールド1942 (コンピューターゲーム)|バトルフィールドシリーズ]]』
:* 『[[バトルフィールド バッド カンパニー1942]]』
:: [[湾岸戦争]]を題材にしたMOD「Desert Combat」にて[[イラク治安部隊#イラク軍|イラク軍]][[武装]]キットとして登場する。
* 『[[バトルフィールド バッド カンパニー]]』
:* 『[[バトルフィールド バッド カンパニー]]』
:: 偵察兵([[狙撃手|狙撃兵]])のメインアームとして登場。
:* 『[[バトルフィールド バッド カンパニー2]]』
:: 偵察兵の装備として登場。
* 『[[ペーパーマン]]』
: スナイパーライフルとして登場。