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'''研究'''(けんきゅう)とは、ある特定の[[物事]]について、[[人間]]の[[知識]]を集めて考察し、[[実験]]、[[観察]]、[[調査]]などを通して調べて、その物事についての[[事実]]を深く追求する一連の[[過程]]のことである。[[語義]]としては「'''研ぎ澄まし究めること'''」の意。
 
== 目的 ==
研究の[[目的]]は突き詰めれば、新しい[[事実]]や[[解釈]]の[[発見]]である。それゆえ、研究の遂行者は、得られた研究成果が「新しい事実や解釈の発見」であることを証明するために、それが[[先行研究]]によってまだ解明されていないことも示す必要がある。また、自身の研究成果が新しい発見であることを他の[[研究者]]によって認めてもらうためには、[[学会]]や[[査読]]付き[[論文]]などにおいて研究成果を公表しなければならない。もしどんなに優れた研究成果が得られても、それが他の研究者によってすでに明らかにされていたとすれば、'''精度のよしあし、方法/条件、解釈等に差異がない場合には'''原則としてその研究は無価値に等しいとされる可能性がある。逆に言えば、これらに違いがあれば素人目には同じに見えるかもしれない研究成果いずれもが新規な成果として評価される場合もある。例えば原子分解能での物質の測定は、[[電子顕微鏡]]でも、[[走査型トンネル顕微鏡]]でも、[[原子間力顕微鏡]]でも達成されているが、いずれの研究も極めて高い評価を得ている。また、誰にも知られず埋没していた研究と同じ成果が、誰かに「再発見」されることによって、その分野の研究に大きく貢献したり、評価されたりすることはある。代表例として[[メンデルの法則]]や[[ガロア理論]]などがある。また、ほぼ同時に同じ研究成果を挙げたり、あるいは異なる分野で独立に研究されていたものが、後に同じ研究成果であると判明した場合など、「独立して」研究がなされたと見なされる場合も同様である。逆に、たとえ先行研究であっても、たとえば[[研究会]]のみで発表して論文として発表していなかった場合、あるいは発表が遅れた場合などは、その研究が先行した研究と認知されない場合もある(代表例として[[内山龍雄]]の[[ゲージ理論]]などがある)。
 
== 基礎研究と応用研究 ==
厳密に区分することはできないが、研究には「基礎研究」と「応用研究」の2つがある。
{| class="wikitable"
 
|-
; ![[基礎研究]]
: |純粋研究とも呼ばれ、新たな法則、定理などの「発見」を目的にして行われる研究。応用研究の核となる。
; 応用研究
|-
: いわゆる「発明」。基礎研究の成果を応用し、科学技術の創出を目指す。
; !応用研究
: |いわゆる「発明」。基礎研究の成果を応用し、科学技術の創出を目指す。
|}
 
== 過程 ==
研究を、作業工程という観点から考えた場合、基礎研究、応用研究の別によらず大雑把に言えば「研究とは[[仮説]]の構築とその検証、再評価の延々たる繰り返し」である。
 
「一つの研究」に着目して考えると「一つの研究」の各段階は、概ね「計画、実行、評価」の流れで見ることが出来、より詳しくは以下の要素からなっていると考えることが出来る。このように研究の過程が構造化されていることは、研究結果の公表物であるところの[[論文]]が[[IMRAD]]のように構造化されているのとよく似ている。しかしながら、「論文におけるIMRADのような略称」は今のところない。
 
#予備調査、予備実験、先行研究の[[評論|レビュー]]:
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#:実際に行う実験を「いつ、どこで、何をつかってどのように何を行う」といったルーチンワークレベルの作業手順におとす。必要な機材がなければ購入計画を立てるあるいは設計するあるいは自分で製作する。また、解析するための方法を検討する。解析方法、実験回数の選択などは[[統計学]]特に[[実験計画法]]に従って検討する。
#実験、調査([[データ]]の収集、データの[[解析]]):
#:"(4)"で立案した計画に沿って実際の実験、調査、解析などを行い、結果を[[統計図表|グラフ]]や[[図面|図]]や[[統計図表|表]]にまとめる。適宜統計処理を行う。実験、解析などの段階においては以下の"(9)"の「偶然的な発見」が得られることがあり、また、[[誤謬]]が紛れ込む可能性も高い。その意味でこの段階は、まさに研究における[[クリティカルフェーズ]]である。この過程では、特に[[実験ノート]]が威力を発揮する。
#考察:
#:仮説、研究目的の妥当性の評価、得られたデータから予想あるいは主張できる内容の抽出、仮説の真偽判定及び修正、及びそれらに基づいた研究計画の修正などを行う。また、得られたデータや先行研究によって得られた事実にどのような文脈の中におくのかを検討する。
#研究成果発表の公表:
#:[[学会発表]][[専門誌]]への公刊、研究室内、学内での研究報告会、[[審査会]]等。ここでもらった意見の一部は研究に[[フィードバック]]される。
#突然のひらめき:
#:有名な学者の多くが、行き詰まった環境下でふと、あることに気づき、[[ブレークスルー]]に繋がったというエピソードを語る。
#偶然的な発見([[セレンディピティ]]):
#:有名な学者の多くが偶然という言い方をするが、実際のところは、広く[[アンテナ]]を張り巡らし、適切な記録をとり、わずかな兆候を見逃さず、いろいろな解析処理を試せるだけの技能とチャレンジ精神を持ち、適宜研究計画に[[フィードバック]]を加えるといったことが出来るぐらいに訓練された人間以外にはなかなかこのような幸運は訪れない。
#偶然(学会、ディスカッション)などで情報にめぐり合う:
#:あるうわさ[[噂]]を聞いてあわてて帰って研究室に引きこもって何かに取り付かれたように研究に取り組んだという[[逸話]]が残る先生が何人かいる。
#研究経費の獲得([[科研費]]、[[COE]]等):
#:地獄の沙汰も金次第。
 
[[高等学校]]向けの理科の[[検定教科書]]の[[課題研究]]の項や、各大学の[[学生実験]]の指導書等、研究の初心者あるいはそれ未満のレベルの人を対象とした人向けの[[教育課程]]では研究の過程として「『(1)→(2)→(3)→(4)→(5)→(6)→(1)』のループを何度か繰り返したあと、(7)に至る」などといった極めてオーソドックスな流れを解説している。ただし、理科の検定教科書間でも記述に若干の違いがあり、執筆者の個性が伺われる。ただし、どの教科書においても概ね「要素」としてあげているものは上の(1)~(7)で尽きている。問題は、一部の要素が結合されていたり、省略されていたり、より細分化されていたり、ループさせる/させないの違いだけである。特に、「得られた結果と実際の予想とが大きく食い違うこと」は、[[課題研究]]や学生実験では起こりにくく、また、そのような“変則的”(実際には“変則”でないほうがおかしいのだが)な事態に対処できるレベルは意外に高いという考えから、「研究結果をフィードバックさせる」というトレーニングをするか否かに大きな違いが現れる。また、(8)-(10)は、学生実験や高等学校の課題研究レベルでは問題になることが殆ど全くなく、検定教科書には解説されていない。
 
これらの要素をどのようにつなげるのか、どのように偶然的な要素や目標の現実とのズレを実際の研究計画にフィードバックするのかは、研究者の腕や個性、場合によっては価値観や感性にかかわってくる問題である。その意味では、必ずしも実際の研究の現場では必ずしも各要素を直線的に実行する(「『(1)→(2)→(3)→(4)→(5)→(6)→(1)』のループを何度か繰り返したあと、(7)に至る」といった具合に)わけではなく、そうあるべきとも限らない。
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実験系において、実際の卒業研究の現場では、(1)から(4)の段階は指導教官が用意してくれ、場合によっては、(5)はほとんど[[テクニシャン]]のおかげ、(6)についてですらほとんど先輩や指導教官の指導のなせるがままというケースもあるといわれる{{要出典|date=2007年12月}}。また、多くの学生、場合によっては未熟な研究者にあっては、「事前によい狙いをさだめること」や「狙いからのズレを適宜フィードバックしてよりよい狙いを定めていくということ」が出来ず、「焦点の定まらない実験データの羅列」に近い”論文”を量産するだけのケースもある{{要出典|date=2007年12月}}。
 
一方で、人文系の文献研究や、[[数学]][[素粒子]]理論などでは、研究目的の決定や、調査方法の立案を行えるレベルに到達するまでに一定数の文献を読む等の基礎学習が求められ、上記の(1)~(11)以前に(0)として「基礎基本の勉強」という要素が入るのが通常である。数学、素粒子理論の場合、大学院前期課程ですら、殆どの時間を基礎基本の勉強に割いていて、修了までに新たな知見を得られないどころか、基本的な研究の過程の体験すらできない可能性が低くない。また、後期博士課程の3年次を過ぎても、研究の過程の体験という段階に入れないケースもある。これらのケースにおいては、博士後期を除き、上記の工程を体験せずとも、「在学中に勉強したことのまとめ」という形で、[[卒業論文|学士論文]]や[[修士論文]]が受理されることがある。
 
== 種類 ==